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山便り (2)

歓迎客と招かざる客

  山へ行くときは、弁当持ちである。握り飯二つの他に平成19年の冬は、信州から送られてきたりんごを連日持っていった。皮をむき、芯といっしょにその辺に捨てて置く。1月末頃、その皮と芯が翌日無くなっていることに気づいた。りんごの皮を食べる動物に興味が湧き、毎日観察しながら置くようになった。そんな日が一ヶ月も続いた頃、仕事をしていると5メートル先の山中に鹿を見た。りんごを食べていたのは鹿だったのである。牛に似た大きく澄んだ目でじっとこちらを見つめる姿は可愛さこの上ない。この歓迎すべき客をもてなすため、翌日から皮を厚く剥くようになり、芯だけでなく果肉1/4も置くようになった。鹿は茶色地に毛先が黒っぽかったと話すと、それはカモシカだと教えられる。カモシカの好物は何だろうとその生態を知るべく、水窪の山住神社の隣にある「カモシカと森の体験館」に出掛けた。


メスのカモシカ

 それからは、りんご以外に、せんべい、大根、キャベツ、みかん等をせっせと運んだ。せんべいはなくなるが、大根、キャベツ、みかんは全く手付かずだった。りんごが一番と、信州から送られてきたりんごがなくなっても、スーパーで買っては持っていった。そんな日が三ヶ月間位続いたある日の3時の休憩の時、昼時に食べて残りを置いておいたはずのりんごの皮、芯、果肉が無くなっていることに気づいた。あたりを見回したがカモシカの姿はなかった。こんな昼間に、全く気づかれずに食べにきたのかと半信半疑だった。それからは、山に行くとすぐ、何時もりんごを置く場所に、りんご半分を置いて、仕事をしながら時々そちらに目を配るようになった。それでも知らぬうちにりんごは無くなっていた。犯人を目撃するのに、一週間はかからなかった。招かざる客の一号はハクビシンだったのである。
 山には、この招かざる客が多い。バーベキューの時、採りたてのしいたけを焼いて食べるのも良いなと思い、しいたけのホダ木を置いていたが、せっかく出てきたしいたけも、招かざる客が来て全部食べてしまう。ホダ木は今、里に下ろしてある。

招かざる客2:野ウサギ
 材木運送業の社長夫妻が山小屋を見に来たことがある。この社長さんは竜川山野草同好会に入っていて、ここは山野草に良さそうな場所だと言われ、私はすっかりその気になってしまった。山野草の展示会即売会や園芸店、緑化木センター、ドライブ旅行先での道の駅、地域振興施設などに立ち寄っては、寒さに強くて山に植えても育ちそうなものを見つけ、買って植えてきた。この山野草をハサミで切られるという被害に会った。「わざわざこんな山奥まで来て、こんな悪戯をするのは、一体誰だ。」と思っていた。そんなことが2、3回続いたあと、犯人を目撃した。それは野ウサギだった。野ウサギにやられる植物は決まっている。最初の被害はヒューケラ、そしてボクシヤ、ヤグルマソウ、イワユキノシタがやられ、株分けしたばかりアケビがやっと芽を出したと喜んでいたら、その新芽も全部やられた。タラの芽も好物らしく、高いところの芽は届かないので、根元20cm位の所をかじり倒してから、芽を食べるという頭の良さには感心する。

招かざる客3:いのしし
 昼間、いつも通り仕事をしていると、対岸で、石の落ちてくる音がするので、その方を見ると、大きいイノシシが歩いている。距離にして5、6m。こちらがみているのを知ってか知らずか悠々と歩いている。写真を撮ろうとデジカメを取りにいっている間に見失った。このイノシシはミミズが好物のようで、土を掘り返し、石をひっくり返す。林道の路肩だろうが何だろうがお構いなしである。傾斜のきつい林道の路肩が崩れたら、修復にとてつもない手間と資材が掛かる。イノシシの被害は、山野草や植えつけたヒメシャラにも及ぶ。何が植えてあろうが、お構いなしに歩き回っているのである。
 せっかく作った池の水漏れを起こすモグラも招かざる客の一人である。


イノシシに掘り返された路肩

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