山便り (17)

ミンミン蝉の老い

 8月21日、姫路の孫達も二日前に帰り、午後から久しぶりに山に出掛けた。日中の暑さは依然厳しいが、ここ2、3日前から朝晩は少し涼しくなったような気がする。小屋の周りの草取りをしたが、さほど暑さは感じない。去年生えていたアカジソの種で今年はかなり範囲が広がって芽が出ていたので一部抜いた。雑草はメヒシバ、オヒシバ、オオバコが多い。今年植えた鷺草の周りは念入りに取った。鷺草は去年失敗している。鷺草の適地は日当たりのよい湿地だと教わり、池の上のいつも滝の水がしみ出る岩場に植えた。だが冬場はツララができ、低温に耐えられずに絶えてしまった。今年は池から離し、山側の湿り気のありそうな場所に植えた。今年の冬を無事越えて来年ぜひ花を咲かせてほしいとの願いを込めて取った。ゆくゆくは他の雑草に混じって自然の中で咲くのを心待ちにしている。

 午後の陽も西に傾き始めた。一休みしようと椅子に座り、煙草に火をつけ、コーヒーを飲む。沢から吹く風が心地よい。物音は水の流れ落ちる音と蝉の鳴き声だけである。蝉の鳴き声は、ミンミンゼミとツクツクボウシ、時々遠くからアブラゼミの鳴き声が聞こえてくる。ミンミンゼミの鳴き声にしばらく聞き入っていると、あるパターンで鳴いていることに気づいた。鳴き始めはミ―ン、続いてミン、ミン、ミン、鳴き終わりは音を下げて↴ミーである。この中間のミンを何回入れるか数えたら2~6回で、蝉によって2~3回の蝉もいれば4~5回入れる蝉もいる。蝉の寿命は10~20日だという。雄は羽化してから3~4日してから鳴き始めるというから、鳴いているのは10日程度だ。アッという間に老化する。今、近くで鳴き始めた中間のミンを2~3回しか入れない蝉は、時たま、鳴き始めのミーンを飛ばしていきなり中間のミンミンに入ったりする。蝉にもボケがあるのか、しっかり鳴けよと心で声援を送った。そのうち、中間部のミンミンの四回目の挑戦に入った途端、息切れしてミンにならずトーンダウンしてミ、ジーで終わってしまった。かなり老いた蝉に違いない。少々切なくなったが、それでも、その後も、中間部のミンミン2~33回を入れて鳴き続け、そのうち去っていった。

 気の早いヒグラシが3時25分にカナカナカナと鳴き始めたが、一回で鳴き止んだ。まだ少し早すぎたことに気づいたのだろう。3時45分にはヒグラシの大合唱になった。この大合唱に追い立てられるように、かなりの老いを感じ始めている私も家路に着く支度に入った。

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