12月:四季果ツル月 wrote by @mt2_omochi
今年の目覚めは最悪だった。
「やい、化け物!
お前の命はオレたちが握った!
言うことを聞けぇ!」
「…………はあ?」
──冬を司る妖と
時ツ風学院に通うガキンチョ達が
師走の町を駆け巡る話。
■朔:冬を司る妖(冬の風「朔風」より)
冬を巡らせる任とは別に「四季納めの儀」を執り行う任を請け負っている。
□律:秋を司る妖(秋の風「律"リチ"の風」より)
■朋和(ともかず):時ツ風学院小学校に通う6年生。春がこないように画策する。朔の"命"を奪い、言うことを聞かせようとする。
□友輝(ゆうき):朋和の親友。この春で県外に転校することが決まっている。
□やまあらし:名前通りの見目をした妖。朔ら兄弟を敵視している。大昔の因縁があるとか。
□土地神:朔ら兄弟に力を与えた風都町の神様。猫の姿をしている。
●北区:遊山 祠の前
(言い争う声)
朔 △心の声
──なんだ、うるせえな。
△風が強く吹く音
朔
……おい、人様の祠の前で喧嘩してんじゃねえぞ。
律
ちょっと、兄様! 起きるの遅いですよ!
朔
はあ、なんだ律じゃねえか。
もう交代の時期か……?
律
時期は時期ですけど……、ちょっと不味いことになりましたよ。
朔
はあ、不味いこと?
朋和
やい! オレ達をおいて勝手に話し始めるな!
朔
……、なんだ、あのガキども俺たちのこと見えてんのか?
律
見えてるどころじゃないですよ!
あんた、あのガキに自分の命が握られているんですよ!?
朔
は、命……?
……、あ、てめえ、その鎌は……!!
朋和
ふーんだ! これがお前の命に繋がってるのはもう分かってるんだ!
返してほしけりゃ、言うことを聞けぇい!!
律
こんのクソガキが。 ▼心底低い声で
妖相手に勝てるとでも思っているんですか!!
朋和
うるさい!
動いたら、この鎌がどうなるか分からないぞ!
律
……ッ。
朔
……状況は分かった。
律
なあにが「状況は分かった(キリッ)」ですか!!
そもそも、毎年交代の度に適当になんでも放り出して寝付いちゃうから、あんなガキに大事なもの取られるんですよ!
朔
あーあーはいはい、聞こえませーん。
……で、そこのガキンチョは俺に何の用なわけ。
朋和
ガキンチョって言うな!
オレには朋和って立派な名前があるんだ!
朔
ほおん、朋和ねえ。
俺は冬を司る妖、朔ってんだ。
で、ところでお前、妖相手に名乗ってはいけないって知らねえのか?
朋和
な……!?
朔
あっはは、なんてな。冗談、冗談。
律
あんたねえ、子供だまくらかして遊んでる場合じゃないんですよ。
狐狗狸(こっくり)でもあるまいし。
本当に状況分かってるんです?
朔
やあやあ、愛すべきガキンチョじゃあねえか。
そうカッカしなくても大丈夫だろ。
なあ、りっちゃん。
律
……はあ、なんで貴方の為に僕が怒ってるんだか分からなくなってきました。
朔
なんだなんだ、今のデレか?
俺の代わりに怒ってくれたのか?
律
黙らっしゃい。
まったくもう……、大丈夫なんですね?
朔
おう、儀式には間に合わせる。
律
はあ……。
次寝る時はちゃんと身辺整理してから寝るんですよ!
朔
わーったわーった。
……ゆっくり休めよ。
律
……、また来年に。
兄様。
朔
……、おう、また来年だ、兄弟。
△風の音
友輝
……、弟を困らせるのは、どうかと思う。
朔
うるせえなあ、愛ゆえだよ。
てか散々黙りこくってて、初めて口にする言葉それなのか?
朋和
こらー!
いい加減、オレの話を聞けー!!
朔
おうおう、元気だなあガキンチョ
だが、こんなところで立ち話もなんだし、ちっと場所を移すか。
朋和
なんでお前が仕切って……、うわあ!?
朔
よーし、お前ら、しっかり掴まってろよお。
朋和
おい、離せ!
え? うわ、ちょ、浮いて……ぎゃーーー!!!! △エコー
友輝
うわーーー!!?? △エコー
△風の音
●西区:科戸時計台
△ぽーん、と時計の音
朋和
ひ、ひぃ……。
友輝
い、いきてる……。
朔
おうおう。ふたりとも、ちゃーんと生きてるぞお。
……そんで?
お前らは、か弱ーい俺をとっ捕まえて、どうしたいわけ?
友輝
か弱い……?
朋和
ふ、ふん!
隠しても無駄だ!
お前、冬を連れてくる化け物なんだろう!?
朔
化け物ってお前……。
まあ、冬に関する妖って意味では間違いねえけど。
それがなんだ?
朋和
ここに冬がきたら困るんだ。
お前が連れてこなければ、冬にならない!
そうなんだろう!?
朔
……、あー……。
成程、事情は知らんがこの町が冬になると困っちゃうと。
んで、冬の妖たる俺を捕まえて、冬を連れてくんなって命令したいと。
そういうことだな。
友輝
正確には、春だけど……。
朔
春? 俺は春に関しちゃ専門外だが?
友輝
春が来たら困るから、冬の内にどうにかしたい。
朔
ほおん。
じゃあ、なんで春がくると困るんだ?
友輝
それは……。
朋和
こいつ、春になったら県外に引っ越しちまうんだ。
引っ越したら、今みたいには会えなくなっちまう!
友輝
そんなの、寂しいじゃん……。
朔
はーん、仲良きことは美しきかな、ってか。
それに巻き込まれる俺は完全に迷惑してるけどな。
それに、わりぃが俺には協力してやりたくてもできねぇよ。
朋和
な、なんで!?
朔
俺が任されてるのは「季節を調停する」ことだ。
ガキンチョとはいえ、もう季節がどうやって巡ってんのかぐらいは習ってんだろ?
それはよっぽど力ある神でなきゃ止めらんねえんだ。
それこそ、日ノ本を産んだレベルのな。
俺ら兄弟なんかは、所詮はその辺をうろついてた妖だ。
訳あってここの土地神に役割を与えられたってだけの、ちっぽけな存在にそんな力はねえ。
もともと巡ってくる四季を、上手く受け止めて、次に流していく。
ちょっとした手伝い程度のことしかやってねんだ。
朋和
じゃあ、オレ達がしたことは、
朔
んー、無駄とは言わねえが、結果は変わらんな。
友輝
そんなあ……。
朔
ほら、分かったらさっさと俺の鎌返せ。
俺は優しいからな、今日のことはお咎めなしにしといてやる。
朋和
……まだ分かんないだろ!
朔
は?
朋和
お前が嘘をついているかもしれないだろ!
まだこれは、返せない!
朔
はあー!?
朋和
友輝、これはお前が持ってろ!
失くしちゃダメだぞ。
友輝
わ、わかった。
朔
わっかんねーよ!!
なんで俺がそんなことで嘘つかなきゃいけねーんだよ!
朋和
お前、なんか信用できない。
こういうの「胡散臭い」っていうんだろ。
友輝
弟に説教されてる奴はちょっと……。
朔
辛辣かよ。
弟の話は刺さるからやめろ。
朋和
とにかく、お前にも協力してもらうからな!
朔
……、へえへえ、仰せのままにご主人さまー。
砂の国の魔神も、こんな気分だったのかねえ、まったく。
●南区:時ツ風学院
△チャイムの音
朔
なーガキンチョー、いい加減お仕事したいんですけどー。
俺の鎌返してくれよー。
朋和
いやだね。
お前、アレがなくても仕事できるんだろ。
友輝が言ってたぞ。
朔
ありゃ、見られてた?
いやー、うっかりうっかり。
朋和
お前が仕事しちゃったら冬来ちゃうだろ!
やめろよな!
朔
いや、俺がなんもしなくても冬は来るんだけどな……。
朋和
うるさーい!
絶対冬を止めてやるからな!
朔
あっそ。がんばれー。
朋和
ムキー! こいつムカつく!
朔
ハッ。
……ところで、お前の親友くんはどうしたんだよ。
今日は一緒じゃないのか?
朋和
今日は別行動してる。
このあとシャッター街で待ち合わせなんだ。
朔
シャッター街?
東区の寂れてるところか。
あそこ待ち合わせできるようなところあったか?
朋和
通りの奥に古い本屋がある。
図書館だとかは散々調べたけど、なんにもなかった。
今日はあそこで調べ物するんだ。
朔
へえ、思ってたよりちゃんと調べてんだなあ。
朋和
お前ほんっと失礼なやつだな!
朔
寝てる間に盗み事して、寝起きの奴に脅迫する奴の方がよっぽど失礼だと思うけどなあ?
朋和
ぐぅ……。
ほ、ほら! さっさと行くぞ!
朔
はいはい。
△少しの間
朔
そんなに急ぐと転ぶぞー。
朋和
こども扱いするなよな!
朔
いやいや、小学生はさすがに子どもだと思うぞ?
……友輝だったか?
あのガキンチョとはいつからの仲なんだ?
朋和
友輝とは家が近所なんだ。
だからお互いほんっとに小さい時からずっと一緒にいる。
幼稚園も小学校も、学校以外で遊ぶ時もいっつも!
……なのに、友輝の親が転勤で県外に行くことになって、だから友輝も一緒に……。
朔
ふーん、そうなんか。
朋和
そっちが聞いてきたのに、テキトーな返事しやがって。
朔
まあ、他人事(ひとごと)だからな。
もし俺がお前だったら、残り少ない時間を目一杯、一緒に過ごそうと思うけどな。
朋和
いいんだよ!
冬を止めたら、その後はずっと一緒にいれるんだから。
朔
……、本当は出来ないって、もう分かってるんだろう?
朋和
……ッ。
朔
もうすぐ中学生に上がるような子供がそれを理解できないとは思えない。
気持ちは別としてもな。
朋和
……仕方ないだろ。
何もしないでその日がくるのを待つだけなんて、オレには出来なかったんだ。
朔
ああ、気持ちは分からなくもない。
……、ところでなんだが、お前たちは一緒にいれないだけで終わるような仲なのか?
朋和
え? それって、どういう……。
朔
ちょっくら自分語りになっちまうけど、お前もりっちゃんのことは見えてただろ?
朋和
ああ、お説教してた美人の。
朔
俺のせいでりっちゃんの印象が……、まあいっか。
朔
りっちゃん以外にあとふたり兄弟がいるんだけどよ。
俺ってこう見えて、4人兄弟のいちばん上なわけ。
でもな、俺たちが全員そろったのは、もう云百年も前なんだ。
朋和
云百年!?
そんな、寂しくねえのかよ……?
朔
そりゃあ寂しいさ。
特に夏を担当している薫(かおる)って弟とは、この力を得てからずうっと会えてないんだ。
冬と夏は、交代のタイミングが合わないからな。
朋和
……ねえ、もしかして、なんだけど。
りっちゃん? と会った時って、久しぶりのタイミングだったの?
朔
ん? んー、そうだなあ。
律とは去年の交代以来だし、次は来年だな。
朋和
……! ご、ごめん、なさい。
大事な時に、オレ達、邪魔したってことだよな……!?
朔
うーん、そこはまあ、別に気にしてない、訳じゃあねえけど。
ずっと会えない訳じゃないからな。
そんな顔すんな。
朔
それよりも、俺が言いたいことはだな?
一緒にいられるから友達なんじゃあないし、会えない距離にいるから友達じゃなくなるってのも、違うだろうってことだ。
分かるか?
確かにしばらくは会えないかもしれないが、今は便利な時代なんだろ?
俺にはよく分からんが、遠くにいても話はできるし、お前達がもっと大人になればあっと言う間に会いにも行けるらしいな。
今生の別れじゃあないんだ。
なら今すべきは、一緒に過ごせる時を大事にすることなんじゃないか?
朋和
……、そう、だな。
オレと友輝の仲は、距離なんかで消えるもんじゃない!
朔
おう、その意気だ。
あいつにも同じ話してやれ。
そんで、春になったら、寂しくても笑って見送ってやんな。
朋和
……分かった!
なあ、ありがとう。
迷惑かけてんのに、ちゃんとオレ達のこと考えて話してくれて。
朔
いーってことよ。
この町を愛する土地神からチカラを得た影響なんかね。
どうにも町の奴らを無碍に出来ねえんだよな。
ほら、さっさと行こうぜ。
あんまり待たせるのも──。
朋和
ん、どうしたんだ?
朔
なんか、嫌な気配がする。
昔にも同じ気配を……、まさか。
なあ、友輝は常に俺の鎌を持ち歩いてたんだよな!? ▼慌てたように
朋和
お、おう。
失くすと大変だからって、必ず持ち歩いてるみたいだけど……。
朔
面倒なことになった……
おい、掴まっとけ!!
朋和
うわ、これまさか、待ってうわーーー!!!!!
△強い風の音
●東区:シャッター街
友輝
は、はぁ……ッ!!
なに、なんだよあれ……! ▼息を切らして
やまあらし
匂う、匂う!!
お前からアノ鼬(いたち)の匂いがする!
どこに匿っている!?
友輝
い、いたち?
知らない、知らないよそんなの……!
やまあらし
人の子風情が、俺様を騙せるとでも思うな!
どこだ! どこに隠した!!
友輝
知らないってば……ッ!
だれか、たすけて……あっ。 ▼気づき、呆然としたように
やまあらし
ハッ、行き止まりだなあ人の子?
もう逃げられないなあ? ▼楽しそうに
さあ、鼬どもはどこだ、言え!!
友輝
知らない、知らないってば……!!
誰か、助けて、朋和……。
朔
──下がれ、友輝!!
やまあらし
ガッ……!? △強い風の音
友輝
うわっ
朔
──よお。
懐かしい匂いだと思ったら、お前さんかよクソネズミ。
朋和
友輝、無事か!? ▼気分が悪いのを耐えつつ
友輝
朋和! ……そっちこそ、大丈夫……?
朋和
うるさい、大丈夫だよ! ▼ちょっと恥ずかしそうに
怪我とかないか?
友輝
なんとか、大丈夫……。
やまあらし
出たな、冬の鼬めが!
ああ、憎い、憎たらしい……!!
朔
おやおや、熱烈なこって。
そのくせ、俺がどこにいたのは分からないんだから、相変わらず残念なお頭(おつむ)してんのな。
やまあらし
フン! ▼馬鹿にしたように
そういう貴様も、人の子なぞに命を握られているようじゃないか。
そやつがアレを持っているのは分かっている!
友輝 △心の声
アレって、もしかして、鎌のこと……?
朔
俺がガキ相手に本気で遅れを取ると思ってんのかあ?
はー、こりゃナメられたもんだなおい。
──また痛い目みてえみたいだな。
やまあらし
武器を持たぬ貴様に何ができるか!
この恨み、受けてもらおうか……!!
△戦闘音
◇背中の針がミサイルのごとく飛んでいく
朔
くっ……。
△強い風の音・戦闘音
◇強風で進路を逸らされた針が地面に突き刺さる
朔
成長がねえのな、クソネズミ。
今度はこっちの番だぜ……!
△強い風の音・戦闘音
◇風の刃がやまあらしを狙う
やまあらし
ぬるい、ぬるいゾ!
昔年(せきねん)の恨み辛みを知るがいい!
△強い風の音・戦闘音
◇しばらくふたりの戦闘が続く
朔
がふ……ッ
朋和
朔……!!
やまあらし
……哀れよのう、鼬。
人に縛られ、本来の力も出せずなぶられるその姿……。
最高に哀れで、笑いがとまらんなあ!!
朔
(血を吐き出して)……、ほざけ、どぶねずみ風情が。
やまあらし
その気丈な物言いもいつまで続くか、見物だなあ! ▼興奮しきったように
△缶がぶつかる音 ◇友輝がやまあらしに缶を投げつける
友輝
……あの人にこれ以上、手出ししないで。 ▼震えを抑えたような声
やまあらし
……はあ?
朔
おま、何やってんだ馬鹿! ▼焦ったように
やまあらし
興醒めよ。
しかし、そうだな。
こいつにばかり時間を割くわけにもいくまい。
あと3匹も残っておる。
兄が消滅したと聞いて、どんな表情(かお)を見せてくれるのか……。
今から楽しみなことだ!
朔
くそ、間に合わない……!
逃げろ、早く行け!!
やまあらし
巻き込まれた不運を嘆くがいい……!!
◇ミサイル針を発射する
朋和
──朔、こっちだ!!
△一際強い風・戦闘音
やまあらし
な……!?
朔
──無茶してんじゃねえよ、ガキンチョどもが。 ▼口調は穏やかに
友輝
足手まといは嫌だったから。
やまあらし
馬鹿な、奴の鎌はあの餓鬼が持っていたはず……!?
朋和
オレのこと無視するお前が悪かったんだぜ。
お前が朔と友輝ばかり目をつけてたおかげで、こっちは動きやすかったぜ!
朔
さてさてさて。
さっきはよくもやってくれたじゃねえか。
しかもなんだって?
俺や町の人間だけじゃ飽きたらず、俺の弟に手を出そうって?
言ってくれるじゃねえの。
朔
覚悟、出来てんだろうな。
△少しの間 → 爆発的な風の音
微かに聞こえる、やまあらしの断末魔
●南区:住宅街 友輝の家の前
朋和
なあ、本当に大丈夫なのか?
友輝
痛くないの?
朔
だーいじょうぶだって何遍も言ってんだろうが。
人の子の治療じゃ俺にゃ意味ねえし……。
しばらくは祠でおとなしくしてるからよ、そんな気にすんな。
それよか、もう妖だの神様だのに、容易く手を出すんじゃねえぞ?
朋和
分かった。
……でも、朔には会いに行ってもいいかな?
朔
やめとけ。
これ以上、下手に関わってちゃ、ふたりして変な輩に目ぇつけられんぞ。
友輝
もう、朔とは会えないの?
朔
……、言っただろ?
会えないから切れるような繋がりなのか?
朋和
!!
そんなことない!
友輝
僕たち、朔と会ったこと、ずっと忘れないから……!!
朔
おう。 ▼どこか嬉しそうに
精々、冬を楽しめよ、ガキンチョども。
△穏やかな風の音
●西区:科戸時計台
土地神
師走の語原と言えば、坊主が忙しなく走り回る様が有力だが、それ以外にも諸説ある。
「四季果つる」が変形し「しわす」と言われるようになったという説もひとつだな。
朔
昔の人にゃ、四季が一度果てて、そこから再生していくように見えたんだろうな。
……で、今更そんな蘊蓄(うんちく)を聞かせに来たわけじゃねんだろ、土地神殿。
土地神
当然よ。
此度は「四季納めの儀」を執り行えなくなるかと、ちと肝が冷えたぞ。
朔
なんだよ、説教か?
あの鼠を放っておいた猫にも責任の一端はあるんじゃねえのぉ?
土地神
タイミングが悪かった。
別件で町を離れておっての。
よく対処した、誉めてつかわす。
朔
へいへい。
ありがたきお言葉をどーも。
土地神
それに、子守をするお前の姿、なかなかおもしろかったぞ。
朔
うっせー。
……今回は散々だったが、心配される程じゃあねえよ。
大晦日は坊主も猫も走るような忙しさなんだろ。
ここは任せてさっさと行きな。
土地神
……そうか。
この後も頼んだぞ。
朔
ふう……、ん?
◇眼下の科戸大通りを駆けていく朋和・友輝を見つける
朋和
友輝! 早く来いよー!
友輝
待ってよ朋和ー!
朔
ふ……。
お前たちに、冬の加護があらんことを。
なんてな。
関連台本
4月:季節を巡らせる妖 wrote by @mt2_omochi|おもち|note(ノート)
5月:とある猫の悠々散歩 wrote by @ChiiTaKap|おもち|note(ノート)