7月:止まない雨に手を繋ぐ wrote by @onigirinigireee
○シチュエーション
駅前広場で行われたライブが終わった帰り道。
音弥の提案で繁華街と奥のシャッター街を散歩しながら帰ることに。
すると、シャッター街を歩いている途中で夕立が来て、近くの店の屋根の下で雨宿りすることに。
そこで思い出される、ふたりと未希との出会いの話。
雨原 音弥 → 音
篠田 未希 → 未
篠田 あかり → あ
音「あーあ、降られたな」
あ「そうですね」
音「夕立だし、すぐ止むだろうけど……」
音「そういやここだったよな。未希ちゃんと会ったのも、あかりと始まったのも」
音『あれは、ライブが終わった帰り道だったんだよな』
音『遠回りして帰ったら急に雨が降ってきてさ』
音「あーーーーもう」
音「たまに気まぐれ起こすとこれだよ。天気予報ちゃんと見てくるんだった」
音「雷まで鳴ってるし」
音「うえー、全身ぐしょぐしょ……」
音「ギターは……まぁ中は大丈夫だろ」
音「とりあえず拭かないと……こんな濡らしちゃってごめんな」
音「……ん?」
未「……グス……ッ」
音「……女の子?」
音「なんでこんなところに……それよりも、あの子もずぶ濡れじゃん」
音「タオル、もう一枚あったよな」
未「……」
音「こ、こんにちは」
未「……え」
音「あのさ……よかったら、使うか?」
未「おにいちゃん、だれ?」
音「俺は音弥っていうんだ。高校生だよ」
未「高校生……お姉ちゃんと一緒」
音「お姉ちゃんがいるの?」
未「うん」
音「どんなお姉ちゃんなの?」
未「いつも優しくて、未希とたくさん遊んでくれるの! でも怒るとすごく怖いの」
未「でもね、お姉ちゃん大好きなんだよ!」
音「そっかそっか。いいお姉ちゃんなんだな」
未「うん!」
音 (みきちゃん……で合ってるのかな)
音「俺には妹がいるんだ」
音「優しくて大人しいけど、言いたいことは言うし、友達もいっぱいいるんだ」
未「妹……未希と同じ」
音「そうだね」
音「でも、あいつは高校生だから、君にとってはお姉ちゃんかな」
未「妹なのに、お姉ちゃん……?」
音「あはは、ごめんごめん。気にしないで」
音「ところで、君のお名前はなんていうの?」
未「未希は未希っていうの!」
音「未希ちゃん」
音「とりあえず、タオルで髪の毛拭きな」
未「うん」
音「どうしてここにいるの?」
未「……お姉ちゃんとはぐれちゃったの」
未「見つけようとしたんだけど……見つからなくて……気が付いたらこんなとこに来ちゃってて……」
音「どこから来たの?」
未「東区のらいぶを見てたの……」
音「てことは駅前のステージんとこか!? ずいぶん歩いたな……」
音「そりゃ疲れただろ」
未「……グス」
未「お姉ちゃんと手を繋いでたの」
未「でも、途中でいっぱい人が来て手を離しちゃって……」
未「怖くて、とにかくお姉ちゃん探さなきゃって思って歩いてたら……雨が降ってきて……」
音「そっか……」
音「ひとりで心細かったな……」
未「……グス」
音「俺もさ、いまひとりで心細いんだ」
音「よかったら、お姉ちゃん見つかるまで一緒にいてもいい?」
未「……!」
未「うんっ!」
未「お兄ちゃん、それなあに?」
音「ん? 背中のか?」
音「これはギターだよ」
未「お兄ちゃん、ギターできるの?」
音「できるぞー。さっきもライブで弾いてたんだ」
未「そーなの!? すごーい!」
音「すごいだろー」
未「聴きたい!」
音「うーん……ここじゃ弾けないかな、ごめんな」
未「えー」
音「またライブで弾くから、その時に聴きに来てくれよ」
未「むー」
音「じゃあ……代わりに触ってみるか?」
未「いいの!?」
音「いいよ、ちょっと待っててな」
未「はやくはやく!」
未「おっきぃーーー!」
未「どうやって弾くの?」
音「ベルトを肩にかけて、こうやって持って……」
未「おーーー……」
音「未希ちゃんには大きすぎるから一緒に弾こうか。こっちおいで」
未「うん」
音「どうだ?」
未「楽しいー!」
音「よかった」
未「でも音が出てないのがなあ」
音「ごめんな、音出しても大丈夫な場所だったら思いっきり弾けたんだけどな」
未「雨やまないね~」
音「そうだね~」
未「ひゃっ……!」
音「今のは近かったな……大丈夫か?」
未「こ、怖くない、もん」
音「よしよし、偉い偉い」
未「すぅ……すぅ……」
音「寝ちゃった」
音「まぁ、いつからかは分からないけど、ずっと一人で不安だったもんな」
音「そりゃ、疲れるわ」
音「……暇になっちゃったな」
音「~~♪~~♪」
あ「ーーーっ!」
音「……ん?」
あ「みきーーー!」
音「あれ……篠田か……?」
あ「はぁ……はぁ……」
音「篠田!」
あ「へ……雨原先輩……?」
あ「未希!」
音「え」
あ「未希! 未希!」
音「篠田落ち着け。疲れて寝てるだけだよ」
あ「あ……そう、ですか……」
あ「はぁーーーーーーーっ……」
音「ほれ、タオル。未希ちゃんが先に使ったやつだけど、よければ」
あ「ありがとうございます……」
音「びしょ濡れじゃねーか」
あ「や、大丈夫で……ヘクチッ」
音「どこがだよ。ほれ、パーカー羽織っときな」
あ「……すみません」
あ「先輩、なんでこんなところにいたんですか?」
音「さっき駅前広場でライブがあってさ、遠回りして帰ろうとしたら夕立に遭って」
音「そしたら偶然、ここで未希ちゃんがひとりで雨宿りしてたから……」
音「未希ちゃんも濡れてたし、さすがに放っておけなくてな」
あ「そうでしたか……おかげで助かりました。ありがとうございます」
音「はぐれたんだって?」
あ「はい……先輩が参加してたライブを見てて」
あ「しっかり手を繋いでたんですけど、人混みに流されたときに手を離してしまって……」
あ「今日はやたら客がいたじゃないですか。だからすぐに人混みを抜け出せなくて、しばらく流されてしまったんです」
あ「やっと抜け出したので探そうとしたら、夕立が来て……」
音「そっか……」
音「いや、わるい。そんな顔をさせるつもりじゃなかったんだよ」
音「無事に見つかって良かったな」
あ「もっと私がしっかりしてなきゃ……」
音「……」
あ「先輩?」
音「……」
あ「なんで私、頭撫でられてるんですか……?」
音「……別に、なんでもないよ」
音「ふたりとも風邪引くとまずいから、帰ろう」
あ「未希は私が」
音「ああ、頼む」
未「……ん」
未「……おねえ、ちゃん?」
未「へへ……おねえちゃんだあ」
未「離しちゃって、ごめん、ね……」
未「おねえちゃ……ん……」
未「また……来ようね……」
未「すぅ……すぅ……」
あ「……」
音「……篠田はいいお姉ちゃんだよ」
音「自信持っていいんだよ」
あ「……はい……っ」
あ「ありましたねー、そんなこと」
音「めっちゃ昔みたいな反応するじゃん。つい去年のことだぞ」
あ「本当に、あの日のことは感謝してます」
あ「本当にありがとうございます」
音「いえいえ」
音「未希ちゃん元気か?」
未「元気ですよ。今朝も、音弥くん来ないのーって聞かれました」
音「そっか。ずいぶん慕ってくれてるんだな」
未「音弥先輩がうちに来ると、いの一番に未希に抱きつかれてますよね。嫉妬しそう」
音「そういう対象で見てないから嫉妬すんな」
音「んで、そのあと1ヶ月後くらいだったよな」
音「あかりの方から好きだって言ってくれたの」
あ「な、なんですか急に」
あ「いいじゃん、好きになっちゃったんだもん」
音「ははっ」
あ「またそうやって子供扱いして……」
あ (でも、先輩の優しい手も好きだからやめてほしくはない……かな……)
音「おまえ、髪まだ濡れてるじゃん」
あ「あれ、そうですか?」
あ「えーっと……」
音「あ、そのタオル」
あ「にひひ。あの時にお借りしたものです」
音「そういや返してもらってなかったっけか……」
あ「もうちょっとお借りしますね」
音「は~~? ったく……いいけどさ」
あ「返すつもり、ないですけど」
音「おい」
あ「ふふっ」
あ「雨、止みませんね」
音「……そうだな」
音「まぁ、このまま止まなくてもいいけど」
あ「それいつまでここで雨宿りしてればいいんですか」
あ「いつまで経っても先輩の部屋に行けないじゃないですか」
音「たしかに」
あ「まぁでも」
あ「もうちょっとこのまま雨宿りしてるのも悪くはないかもですね」
音「そうだな」
あ「ひゃあっ!」
音「おー……近かったな今のは」
あ「……」
音「……姉妹だな」
あ「うるさいですよ……」
関連台本
6月:梅雨恋 wrote by @onigirinigireee|おもち|note(ノート)https://note.mu/mt2_omochi/n/nfc040ea4dd1a