大型パネルと高断熱高気密化
この絵は社会共通資本としての森林を使って、これからの日本でキャッシュアウトしないために必要な仕組みとして、大学で教えている絵である。森林から木を切り出して、製材してそれで家を建てる。製材した時に出る枝や木の皮や半端なものはバイオマスエネルギーとして使い、化石燃料の使用を減らす。建築に携わるものとして、日本の国土の67%の森林をうまく建築に活かしたいと常々思っている。そんな多くの森がある国はないし、うまく使えば、これほど良いことはない。リノベにしても同じで、今ある建物をどう活かすか、今あるものをどう使うかが肝だと思う。
でも、これは本当にうまくいってない。まず、日本では林業がうまくいっていない。そして、国産材の価値がちゃんと認められていない。森林を活かそうとしている事例はあるし、様々な取り組みはあるけれど、「家を作る」という大量に木を使うところは、外国産を輸入して集成材を使うことになってしまっている。マンションと同じようにクレームにならないように、製品の均一化が進み、せっかくの木造の家もビニルクロスとMDFのドアなどの仕上げ材が使われている。安く作るには、それは必要なのだけれど、それもなんかなあという感じである。
そこで、色々考えて、なんかブレイクスルーできるモデルが考えられないかと思っている。
さてさて、
そこで大きく考えたのは、林業の出口戦略として考える時に、デザインも大事だろうけど、温熱性能がすごく重要だと考えた。地域の森林でとれた材木で、その地域の高性能住宅が建てられることができたら、最初の地域でキャッシュアウトしないモデルを実現できる。エネルギーまちづくり社では一緒に活動できる工務店さんと一緒に、いくつかのモデルハウスやエコタウンの設計をして、その過程でどうしたら高性能の建物をリーズナブルな価格で供給できるかなど、経験を蓄積した。
その過程で、林業のことも色々学びつつある。日本の木の産地は大抵地元の消費だけではなく、ある広域で消費されないといけないとか、一筋縄では行かない。例えば、秋田や和歌山(紀州)のスギなどはやはり東京のような首都圏で消費されないと需要がないとかそういうこと。
だから、単純に距離だけの問題ではない。そのバランスがあるという話。一方、木曽などでもどんどんヒノキが使われなくなっているという話もあり、なかなか難しい。
さて、もう一つの方法として、大型パネルでの対応が可能性があると見ている。大型パネルというのは工場でパネル化したものを現場で組み立てるもので、工法的には金物を使った在来工法である。特にフランチャイズで行うような技術ではない。在来工法は、軸組に構造用合板を張って、水平力を負担するが、それを工場で作ることになる。プレカットが進んだ日本の木造のさらに一歩先を行っている技術で、構造用合板をモイス、付加断熱をした場合、そのままの形でパネル化されて搬入される。建て方は通常は1日。その時点で、屋根工事、外壁工事、仕上工事が可能になるので、工期が二週間ほど短縮される。当然、工場で作ってくる分、高くなるが、工期短縮とのバーターで相殺できるレベルと考える。
木造住宅の高断熱高気密化と大型パネル化、これらが実現すると、実は温熱的にも優良な住宅が安価に手に入れられることができる。屋根工事、外壁工事、電気工事を外注し、残りの仕上工事をDIY的にすれば、高性能な家を手に入れることができる。あるいは、今までそういうプロセスを経験したことのない工務店にとっても、1回やれば次につながる。百聞は一見にしかずである。