エコハウスの将来 温暖化対策としての住宅、建築としてのあり方
長野県がNDC60%(二酸化炭素削減率 国は46%)の決定の前、多数のパブリックコメントが知事の背中を押したと聞いた。ここ数年そういう市民発信の活動が少しずつ実を結ぶことがある。問題はより切実だからこそだとは思うが、今まではそんなことはなかった。
建築は建築、エネルギーはエネルギー、まちづくりはまちづくり、市民運動は市民運動などと全部が分かれているという印象を持っていたからだと思う。
ところが、その分野を超えての交流が始まり、その境界が溶け始めている。今回の「建築物省エネ法」に関しても、気候変動に関わっている人、FFF(FRIDAY FOR FUTURE)の人など様々である。
建築の断熱、省エネが広がらない一つの理由に、「専門家に任せておけば大丈夫だろう」という専門性の問題がある。私の高校の同期の友人がある鉄骨系メーカーの住宅に住んでいて、「最近の竹内の投稿を見ていて、自宅が発泡系のコンクリート版を使っているのだが、これくらいの話をしているのか」と聞かれたので、Hハウスのことだと「そんな断熱性能では全然足らない」と伝えたら、ショックを受けていた。「日本の有数の企業がなんでこれでいいと思っているのか。」ともいう。建築の世界ではあたりまえでも、他の分野での一般的なメーカーに対する期待値は全然異なる。いろんなハウスメーカーがRE100を掲げて、作る過程でのCO2排出をゼロに抑えようとしているが、作っている住宅、アパートは全然それに届かない。なんかチグハグだが、誰も突っ込まないので、改善されない。知れば当たり前のことも、知らぬとチグハグが見逃される。
さて、今日取り上げるのは、ZEHの話。役所の縦割りの話は別の投稿に譲るが、経産省と国交省のいうZEH基準はまったく似て非なるものだという話。
○経産省のZEHは、高効率な機器+高い外皮性能+省エネルギーというもので、エネルギーがセロになる建物。
○国交省のZEH基準は、外皮性能を示し、2025年義務化の適合基準の20%削減(ただし、再生可能エネルギーは入れずに)という、たった2割引の性能のもの。
確かに、国交省の基準でも太陽光発電をたくさん載せればゼロエネルギーにはなるが、10 kW以上の太陽光が必要である。それを国交省は外皮の問題だけでよく使う。
ものすごく混乱しやすい状態である。ちなみに国交省はこの基準を2030年までに義務化するといいっていて、ハードルは低い。一方、国際社会が求めているようなゼロエネルギー=カーボンニュートラルとはほど遠いものなのである。