ラヴォス飛来後、ボッシュは言った。「ラヴォスの気配が2つあるぞ!?」
ボッシュが原始時代に来た当初、地殻に存在するラヴォスを感じていた。その違和感はほんの少しだけで、古代のラヴォスよりも微妙に気配が違う感じはした。その意味が今はっきりと判った。
未来でラヴォスは子供を産んでいた。ラヴォスに生殖機能があるならオスメスの関係性もあるかもしれない。、ハッキリとした事はいえないが、いずれにせよ古代の段階では一体分のラヴォスしかいなかった。
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前回のつづきhttps://note.com/msyaan/n/n182c30a64d7e
エイラは水辺でプテラの身体を洗っている。枯れた草の様なものでゴシゴシしている。
ラヴォスの衝突を近くから巻き込まれたプテラとクロノ達は全身黒ススまみれで、水辺でそれを落としていた。
プテラ達はエイラの世話になり、クロノ達も見様見真似でエイラを手伝った。
エイラ
「クロたち、これからどうする?
メンバーはラヴォス落下地点が気になっていた。好奇心とか、そういう類のものではなく、ラヴォス飛来以降、強烈な磁場が土壌に残っていて思考を乱された。
ラヴォス飛来前後で気分が異なる。まるで体が、ラヴォスへに吸い寄せられているかの様だった。
エイラ
「ならエイラも連れてけ。エイラも気になってた。」
ラヴォス衝突にて蒸発した地面の粒子は成層圏まで届いた。あたかも空一面が雲に覆われた状態だった。
昼間だというのに光が殆ど入ってこない
視界が悪いにも関わらず、ポイントに近付くと、目視でも可能な程に空間の揺らぎが見えた。
ルッカ
「エイラ、ゲートの先はどんな危険が待っているか分からないわ。」
エイラ
「エイラ行く、危険、大丈夫。闘う、好き!」
キーノ「エイラが行くならキーノも行く!」
マール
「それにしてもなんか、寒いな…昨日と比べて今日やけに寒くない?
ボッシュ
「もしかすると、ラヴォスのせいかもしれんな。あのあと、黒い大雨が降って、今もまだずっと曇り空じゃ。」
ルッカは雨が降る原因が判っていた。灰などの微粒子は雲と結合することで落下し、雨がふったようになる。上空に見えるのは雨雲ではなく、灰煙である。
ルッカは考古学的な見地から判っていた。晴れる日はもう何年も来ないだろう事を。気温がどんどんと下がりつづけ、地球は氷に満たされる。陸上の生命は一年以内に絶滅し、また何十万年もかけて海から陸上に上がる生物が生まれるのだろう。
その間に地殻は大変動し、隆起し、ゲートのある場所は山脈になっていた。
故にゲートの出口は山脈内。洞窟の中だった。
まず7人は洞窟から外へと通ずる道を探さなければいけない。
原作設定の様に都合良く出口はなく、洞窟内には魔族の祖先が住んでいた。ジール王国が人造生物の種として使ったサンプル種族である。
ラヴォスの影響で人間は魔力を使える様に進化し、氷河期に適応でき絶滅を免れた。恐竜人は不運にも殆どが絶滅してしまったが、独自の進化を遂げた希少種がいた。知能が低い種族が多かったが、体に多くの魔力を溜め込んでいた。それが魔族の祖先だった。祖先は魔力を都合良く扱えなかった。魔力の応用力が足りず、偏った力を持っていた。例えば寒い氷河期において体温調節機能のみが飛躍的に発達した種が生き延びていて、熱や冷気に強い防御耐性を持っていた。現代においては、その機能が退化した種も繁栄できているとはいえ、この時代の魔族の先祖は進化の途上にあった。その魔族を改造し利用したジール王国は、あらゆる方面で人造兵士として使っていた。原作ではボッシュが幽閉された嘆きの山にて侵入者を阻む様に、海底神殿では警備兵として配置されていた。
魔族の祖先は人間が繁栄を維持する中において生存領域を広げられなかった種族でもある。人間が空に移り住んだとはいえ、海の海産資源はジール王国が支配していた。今は人目を避ける様に洞窟に住んではいるが、ジール王国が滅亡してからは、彼らは急激に繁栄する事ができ、中世、現代の様な魔族へと進化することになる。進化するとはいっても、ジールが改造した人造魔族と、火を扱う人間が社会を牛耳るので生存領域までは広げられない。中世のトルース山やガルディアの森に生息している最弱な種となるだろう。だが、知能が低い分、弱者なのに、あきらめが悪くしぶとくて絶滅しない。まるでディストピアな世界だと判っているのに子作していた未来人の様になるだろう。
〜暗闇の洞窟〜
「ライト!」
ボッシュが魔法で光を灯した瞬間、魔族が目の前にいた。
クロノ達の悲鳴が洞窟に響き渡る。
だが一番悲鳴を上げたのは魔族の方でボッシュは比較的冷静だった。
突然住処に侵入してきた人間に驚き、魔族達は逃げ出した。
「ここはどこじゃろうか…」
ボッシュは風の流れを視覚化する魔法と方位を知る魔法を使い、出口を探した。
マール
「ボッシュって変わった魔法が使えるんだね…他に何が使えるの?」
ボッシュ
「ワシはジール王国では生命魔学の賢者と呼ばれおった。回復や蘇生、何でもできるが、個人的に得意なのは魔法道具を作ったり修理したりじゃな。たとえば剣に命を吹き込むこともできるのう。よしんば命を生み出すこともできるのう。グランとリオンという可愛い精霊がいるんじゃが…」
エイラがクシャミをした。露出がはげしくぷるぷる震えている。
ボッシュが魔力で熱を送った、
「お前さんらはワシらから大雑把な魔法のやり方しか教わっておらんから力のコントロールは難しいのかもしれんのう。 基本原理はファイアで、体温調節にも使えるじゃが…
マール
「力のコントールっていうけど、どうやったらいいの?」
ボッシュ
「そうじゃな…
魔法を使うとき、魔力が体から抜け出る感覚あるじゃろ? その抜け出る方向ってわかるかの?
マール「体から↑に抜け出る感じかな…
ボッシュ「なら上から下に抜け出る感覚をイメージしてファイアを唱えてみたらとうかの?
マール
「あれ?出ない?…いつもは小さくても炎出せるのに」
ボッシュ
「力をリミットいっぱいまで下げたんじゃ。何も出てない様に見えてちゃんと出とるよ。
マールは自分に向けてファイアを放った。
「ほんとだ! 一瞬体がポカポカになった!」
マールはファイア呪文を連呼した。
ボッシュ
「本来なら無詠唱で魔法は使えるんじゃが、お主ら古代人じゃないからのう…。
体質的に無理じゃろうな…」
ルッカ
「タイムトラベルをする魔法ってないの?」
ボッシュ
「それは兄、ハッシュの専門分野じゃった。ワシはあまり詳しくない。ワシが知ってるのはせいぜい未来への擬似的ワープくらいかの…。
ルッカ
「ワープ?」
ボッシュ
「スロウ系魔法があるじゃろ? 空間に向けてスロウを重ねがけして、その空間の時間の流れを極端に遅くするんじゃ。その中に入れば、外の世界は早いスピード進むことになる。これがある意味での擬似タイムトラベルじゃ」
ルッカ
「へー。じゃあ、原始時代から帰れなくなっても大丈夫そうね…」
ボッシュ
「かなりの魔力を使うからのう。巨大な魔法陣でも描いて代用魔力を得ないと実用性がないのう。』
ボッシュ達は洞窟を抜けた。
一面雪の降る世界。ボッシュにとって懐かしい景色。
ボッシュ
「あ、あの光の柱は!」
白い世界で、天から伸びている光柱を見てボッシュは喜んだ。
「良かった! 天空都市は健在じゃ!」
「なんじゃ〜
ビビらせおって!
未来の映像は所詮未来の出来事。
これでジール様に胸を張って報告ができる
後はダルトンの問題だけじゃが、奴が王宮をどの様に私物化しておるのか、考えるとゾッとするのう。」
〜入国管理局〜
「武器はここであずかりますので…」
ボッシュ
「ご苦労さん」
担当者
「やや! ボッシュ様ではありませんか! 失礼しました。どうぞこのままお通り下さい…」
〜王宮〜
「おい爺!」
「はい、なんでごさいましょうかジャキ様」
振り返り、いつもの癖で反射的に答えたボッシュ。
ジャキはタイムゲートに巻き込まれて中世で魔王の仕事をしていたはず。なぜ、どうして、と
ボッシュの頭は混乱していた。
「爺! 服がボロボロじゃないか! そんな姿で王宮をウロウロするとは教師の恥だぞ!」
「あと、そこの女! ほとんど裸姿じゃないか! 一体王宮を何だと思っているのだ! おい爺、聞いているのか? 早く女を連れて行け」
「申し訳ありませんジャキ様、直ぐに着替えてまいります」
ボッシュはいつもの癖で応対した後、エイラを世話役に預け、自身の部屋へと向かった。
ジャキはロボを珍しそうに見ながら、あちこち触っていた。
「姉様ー!」
ジャキはサラを呼んだ。面白そうな玩具を早く教えてあげたい。
「どうしたのジャキ」
サラが奥から出てくると、クロノ達に挨拶をした。
サラ
「皆さんは異国の方でしょうか?」
マール「え?どうして?」
サラ
「お召し物が見た事ないものでしたので」
マール
「え、えと、私達遠くの所、ガルディアから来たのです」
サラ
「ガルディア…
ああ、あの国ですね。あの国は…
良い所ですよね〜」
サラは王宮の鏡でもある。。メンツを重んていて『知らない』とは言えず、話を合わせた。
ボッシュは部屋で着替えていた。
4着ある筈のいつもの作業服が1着ない。
ボッシュはカレンダーを見て思い出した。この時代のもう一人の自分の存在を。
もう一人のボッシュは今、ラヴォス実験に備えて、いざという時の為に魔神機を破壊する剣を作っていた。
ラヴォス実験は2日後に迫っていて、この時代のボッシュは急いで作業をしている。
ボッシュは作業室へ走り、もう一人のボッシュと対面した。