石油はドルでしか買えない、だからアメリカは強かった

石油の取引をドルのみでおこなう「ペトロダラー体制」

「石油取引の通貨をドルに一元化することで、サウジアラビアなど産油国が石油を売って得たドルで米国債を買う再循環が構築された。1973年のオイルショック後、米国がサウジに原油価格の引き上げを認める一方、取引はドルでするよう求めた。そうしてペトロダラー体制が生まれた」

米国は71年の「ニクソン・ショック」でドルと金の交換を停止。基軸通貨ドルは金の裏付けを失ったが、かわりに原油の裏付けがつくようになった。80年代、米国は貿易赤字と財政赤字の「双子の赤字」に苦しみながらも、ペトロダラーの再循環によって支えられた。「米国の通貨覇権の背景には、米国の経済力と軍事力とともに、このペトロダラー体制がある」

原油価格の国際的な指標はすべてドル表示だ。米ニューヨーク商業取引所で取引される「WTI」はもちろん、欧州産の「北海ブレント」や中東産の「ドバイ」も価格はドル建てで、それが原油の売買をドルでおこなう理由の一つになっている。

2004~07年
GCC6カ国が、ユーロのような共通通貨の導入を検討していた。「米国はサウジに『共通通貨には反対しないが、原油価格をドル建て以外にすることには徹底的に反対する』と通告していた」

中東の「ドル離れ」はおさえられたものの、その後に「脱ドル支配」の動きを強めたのが中国とロシアだ。

中国は08年のリーマン・ショックの後、中央銀行の人民銀行総裁がドル基軸通貨体制に異議をとなえ、外貨準備としてドルをためこむ従来の方針を転換。18年には人民元建ての原油の先物市場を上海につくった。 

ロシア中央銀行の外貨準備は17年には50%近くをドルが占めていたが、21年にはその半分以下に減り、ユーロや金、そして人民元を増やした。貿易でも中国への依存度を高め、輸出入とも最大の相手国になった

ロシアも石油や天然ガスの代金をドルで受け取ることが多かったが、ドルを減らして人民元やルーブル、ユーロの割合を増やしている。

「制裁でSWIFTから締め出されたロシアはこれまで以上に人民元決済やルーブル決済を増やそうとするだろう」

円高の原因
ドル取引の需要が低下する国債情勢の流れがあるからして金融機関には必要とされないドルが眠る。余ってるドル(供給量の多いドル)は希少性が低く、価値が低く(ドル安)に作用するはずで、それが円安ドル高傾向の基調に少なからずのブレーキあるだろうこと。

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