共存しよう【前回の続き】
海とは私たちの生活の鏡、地球規模で起こっているマイナスな側面を気づかせてくれる存在だというお話で終わりました。そのマイナスな側面とは海ごみの問題です。とりわけプラスチックはその問題の最たる例だと言われています。最近はレジ袋の有料化などにより、海洋プラスチック問題などが認知されるようになってきました。昨今世間を賑わせているこの問題ですが、今世の中ではどのような事態が起こっているのでしょうか。
海にあるプラスチックの量は尋常じゃない
世界の海ではすでに1億5000万トンにも及ぶプラスチックが存在し、そこに毎年800万トンものプラスチックゴミが増えていると推定されています。正直大きすぎてあまり実感のわかない数字ですが(東京ドーム何個分だろう・・・)1分間に15トンものプラスチックゴミが海に放出されていると聞くと、その量の多さがイメージしていただけると思います。
このままプラスチックゴミが海に捨てられ続けると、2050年には海にいる魚の量を上回る。という非常にショッキングな予想も報告されているのです。
長寿:プラスチック
このプラスチックゴミの厄介なところは自然界で分解される期間が途方もなく長いということです。身近にあるペットボトルでは400年、釣り糸に至っては600年もの歳月をかけなければ分解されないと言われています。自分が出したゴミが400年もの間海を漂い、なんだかロマンチック・・・な訳ないですよね。将来の子供たち、そこに住む動物たちにとってとても迷惑です。
分解までの期間がとても長いプラスチックですが、その分解の長さに比例して細かく砕けてもその存在を保ち続けるということがとても問題視されています。5mm以下まで砕けたプラスチックをマイクロプラスチックと呼びますが、そのような微細なプラスチックは、他の有害物質を吸着し食物連鎖に取り込まれます。(小さな生物がマイクロプラスチックを食べ、その生物を大きな生物が食べ、またその生物を大きな生物が食べ・・・最終的には私たちの食卓に並ぶ可能性もあります)
プラスチックゴミによる海洋生物への被害
私たちが出したゴミなので、私たち【のみ】に害が及ぶのであれば自己責任。それで良いのですが、そうともいかず海に住む約700種類もの生物が私たちが出したゴミにより傷つけられたり死んだりしているそうです。そして、このゴミの92パーセントがプラスチックによるものであるというデータも出ています。
その有害性と循環により私たちが住む地球の生態系に大きな影響を及ぼすと懸念されているのがマイクロプラスチック問題です。2015年の独G7首脳宣言において世界的な問題であることが確認され、現在は様々な国と地域で対応が検討、実施されるようになってきました。
どこの誰が出したゴミなんだ?
いやいや、私たちプラスチックゴミを海に捨ててないし海の近くにいる人が勝手に捨ててるんでしょ?と思った方がいるかもしれません。しかし真実は真逆です。海に漂うゴミの約8割が海とは関係ない地域、内陸で出たゴミであり、風などで飛ばされる、川に行き着き海に流れる。そして、そのゴミが海岸へ打ち上がったところを、海の近くに住んでいる人たちが拾ってくれる。という構造になります。海とは関係のないところに住んでいる私たちにとっても他人事ではないのです。
この海洋プラスチック問題、色々と話始めるとキリがありません。ですが、その脅威から一概に悪だと決め付けられているますが本当にそうでしょうか。(こんなにマイナスなこと言っておいていきなり自問すんな!)いったんここで私なりの結論です。
私なりのプラスチックへの考え方
私は現在のプラスチック問題において、専門家のように知見があるわけではないので確実なことは言えません。しかし、負の側面があることは認識しつつ、プラスチックをこの世からなくすことはできないと思っています。それだけすでにプラスチックは私たちの生活に根差した物になっており、また、安価で便利でとても性能が良い物が続々と世の中に出回っているからです。
ですが、便利だからと言って今起こっている問題を蔑ろにするわけではありません。大事な事は共存であり、便利さを追求した上で、必要なタイミングと場所でプラスチックを使いつつ、適切に処理できるまでの一連の流れが作られているかが重要だと思っています。
販売する側はその一連の流れを含めて商品価値として、買う側もその流れを意識したリテラシーが必要な世の中であるべきだと思います。今まで恩恵を受けていて、かつ現在進行形でその恩恵にあやかっているのにも関わらず、いきなりプラスチックは悪みたいな風潮は正直無責任だと私は思います。
悪いのはプラスチックではなく、私たちのモラルの問題。まずその側面に気づいてもらうために、今起こっている地球規模の問題を把握するべく、先ほどからつらつらと述べたような事実が必要になってくるわけです。
前回から今回まで長々と話しましたが、私なりの結論も、おそらく海に携わらなければ見えなかった視点でしょう。そう言った意味で、海は本当に色んなことを教えてくれます。感じ方や、そのあとどう行動に移すかは人それぞれです。しかし、変わるきっかけを与えてくれるのが海であり、その海の魅力をより多くの人に知って欲しくてこの活動をしています。
(参考:日本財団 海と日本プロジェクト 【海ごみレポート1】)