「狭山事件」はとなりのトトロのモデルではありません。
「となりのトトロ」にはモデルとなった恐ろしい事件があると噂されている。
それが「狭山事件」だ。
結論:この噂はデマです。
狭山事件とは
「狭山事件」とは、1963年5月1日に起こった強姦殺人事件。
埼玉県狭山市が事件の場所となったことからその名で呼ばれている。被害者は高校1年生の少女だった。
この事件と、「となりのトトロ」には共通点が多く、狭山事件をモデルに映画を作ったという噂があるのだ。
狭山事件と「となりのトトロ」の類似点
・映画の舞台は埼玉県所沢市
となりのトトロでは、メイとサツキは埼玉県所沢市に引っ越してくる。そして、事件が発生したのは所沢市の隣に位置する埼玉県狭山市である。
映画中には引っ越しの荷物を解くシーンがあるのだが、狭山市の名産である「狭山茶」の文字が見える。
・錯乱状態にあった姉の証言
遺体発見後の被害者の姉の言葉も大変興味深い。錯乱状態にあった彼女は、「猫のお化けを見た」「大きなタヌキに会った」と証言している。
「猫のお化け」とはトトロに登場する「猫バス」、そしてトトロは「大きなタヌキ」のように考えられる。
また、映画ではサツキが行方不明になったメイを探し回る。狭山事件でも同様に、姉が妹を必死に探し回る姿が目撃されている。
・事件発生月とトトロ登場人物の関係
狭山事件が発生したのは5月のことだが、注目してほしいのはトトロのメインキャラクターである姉妹の名前だ。
彼女たちの名前は「サツキ」と「メイ」。これは
サツキ=皐月
メイ=MAY
と考えることができる。どちらも5月を表す言葉だ。
2人の年齢を足すと16歳となり、狭山事件の被害者の年齢に一致する。
・母親が入院していた病院名
映画の中でサツキとメイの母親が入院していた病院は「七国山病院」という病院である。これは狭山市にあった「八国山病院」がモデルとなったそう。
この病院はがんなどの末期患者が入院する病棟や精神病棟があるそうだ。
結論:「となりのトトロ」と「狭山事件」は関係ありません
映画「となりのトトロ」と狭山事件の類似点・共通点について紹介してきたが、この2つは本当に関連性があったのだろうか。その噂の真相について紹介していく。
・「八国山病院」など存在しない。精神病棟もない
映画内に登場する「七国山病院」のモデルとなった「八国山病院」だが、そもそもこのような名前の病院は存在しない。
「八国山」という山は存在している。実際に「七国山病院」のモデルになったのは、その山に隣接する保生園病院(現新山手病院)だ。
この病院には精神病棟が存在しているわけではなく、古くは結核の療養所があったとされる。
・「猫の化け物」「大きなタヌキ」の証言の記録はない
狭山事件では、「被害者の姉が妹を探し回っているのが目撃された」と前述したが、これもデマである。実際にはこのような記録は一切なく、「猫の化け物を見た」「大きなタヌキと会った」などとも証言していないのだ。
・所沢市が舞台となったのは偶然
埼玉県所沢市が舞台となった理由は、監督を務めた宮崎駿が当時住んでいた、というだけだといわれている。
そもそも本当に狭山事件をモデルにしたのであれば、わざわざ隣の所沢市ではなく狭山市を舞台にすればいいのではないか。
・姉妹という設定は元はなかった
当初、この映画のメインキャラクターは1人で描かれる予定だった。その証拠として、初期の映画宣伝ポスターには少女が1人だけ描かれており、この少女はサツキでもメイでもない。
ところが同時上映予定だった「火垂るの墓」の上映時間が伸びたため、となりのトトロも上映時間を長くするための策として、メインキャラクターは1人ではなく2人姉妹ということになったのである。
・公式が都市伝説を否定
「となりのトトロ」公式は、となりのトトロについての都市伝説を全面的に否定している。狭山事件との関連性はもちろん、「トトロが死神」「メイは死んでいる」といった説についても「そのような事実は全くない。最近流行りの都市伝説のひとつです」と発表している。
誰かが面白がって言い出した都市伝説が、ネットを通じてあっというまに広まってしまったのだ。
「となりのトトロ」都市伝説の真相
映画「となりのトトロ」には、今回紹介した「狭山事件」との関連性のほか、様々な都市伝説が存在する。しかし、そのほとんどが事実無根のデマであることがわかった。
公式も「噂を信じないでほしい」と発表している通り、あくまでも都市伝説として楽しむ程度にとどめておくのがちょうど良いようだ。