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横河武蔵野FC、JFLに辛くも残留。〜2024年を振り返る〜

横河武蔵野FC、最終節でJFL残留決定。

11月24日。ソニー仙台FCの退会に加えて、最終節に他の試合の結果により他力本願な形で残留が決まった。21年、23年も最終節で残留が決まるという土俵際ではあったが、一応自力残留の目が残っていた。しかし、今年に関してはその自力残留すら前節の時点で消滅。武蔵野史上最も追い詰められた状況だった。正直、ミネベアがHondaFCに勝った11/10以降は生きた心地がしなかった。

最終節も、PKで先制も83分にセットプレーの際にキーパーがファンブルしたボールを押し込まれて同点に。同時進行していたミネベアも同点だったため、このままでは得失点差で残留圏内には届かない。この時点で降格をほぼ確信しましたが、その後ミネベアが失点。武蔵野応援席にこだまする「ミネベア失点した!」の声。選手にも情報が伝わったのか、攻撃からキープに切り替えて残り数分を守り切って引分で試合終了。スマートフォン越しに見る別会場の試合終了と同時に涙が出てきました。なんですか、これは。


なぜ武蔵野は低迷したのか。

なぜ武蔵野は低迷したのか、という前に、そもそもここ6年の順位を振り返ってみよう。

19年:16チーム中4位(東京武蔵野シティ、監督:池上寿之)
20年:16チーム中11位(東京武蔵野シティ、監督:池上寿之)
21年:17チーム中15位(東京武蔵野ユナイテッド、監督:池上寿之)
22年:16チーム中6位(東京武蔵野ユナイテッド、監督:依田博樹)
23年:15チーム中13位(東京武蔵野ユナイテッド、監督:石村俊浩)
24年:16チーム中15位(横河武蔵野FC、監督:石村俊浩→池上寿之)

この6年間、チーム状況と名称は目まぐるしく変わっている。Jリーグを目指していた19年は成績面だけで言えばJ3参入要件に届く4位。しかし20年にJリーグ参入を断念し、21年に東京ユナイテッドと提携して名称変更。両チームの選手の連合軍でJFLに挑むもうまく融合できず開幕13戦勝ちなしとなり、最終戦で辛くも残留。逆に22年は有力選手が大量に加入したことで6位と急浮上したが、提携を解消した昨年は主力が多数引き抜かれて残留争いに逆戻り。今年から横河武蔵野に戻ったが浮上できずといった状態であり、低迷したも何も基本的に下位安定である。それでも今年は今までになく厳しい状況ではあったのだが。

今年の武蔵野が低迷した理由はいろいろあるが、主に下の5点だと考える。
・昨年から監督が続投したが、チーム力を上積みできなかった
・他のチームに対しての優位性を持てなかった
・再現性のある攻撃が最後まで構築できなかった
・主力の負傷が相次ぎ、最終盤に守備が崩壊した
・アウェイで1勝もできなかった

それぞれの理由について、時系列に沿って見てみよう。

昨年から監督が続投したが、チーム力を上積みできなかった

今シーズンの武蔵野は、昨年から引き続き石村氏が指揮を執ったが、そもそも昨年最終節まで残留争いを演じるほど低迷した監督が続投するという点で嫌なムードはあった。一方で、例年よりも早期の始動や継続効果、ユース出身の大ベテラン阿部拓馬や2年ぶりに復帰した田口光樹ら積極的な補強もあり、期待感もゼロではなかった。

 開幕戦の枚方戦では新加入の山﨑舜介のゴールで引き分け、3月のホーム戦ではのちに残留争いをするミネベア・新宿に勝利。さらに天皇杯予選では日大をPK戦の末破り出場を決めるなど序盤は明るい話題も多かったが、4月以降は勝ちきれない試合が増えて2ヶ月勝ちの状態に。この時点では先制されても追いつくなど展開的は悪くない試合も多く、下位チームが武蔵野以上に低迷したこともあり順位も残留圏内の13位前後とメッキは剥がれつつあるがまだなんとなく行けそうという感じがあった。

 6月には天皇杯1回戦では同じJFLの栃木シティから得点を奪えず敗戦。翌週のリーグ戦で栃木シティに再戦したが、なんとスタメンメンバーは先週と全く同じ。リベンジのつもりだったのだろうが、しっかりと対策を施してきた相手に前半3失点となすすべなく返り討ちに。采配面での限界も見え始め、この試合の後半から昨年一定の結果を出した3バックへの戦術変更。直後の鈴鹿戦では勝利したもの次の試合からは4連敗。後半途中で2点を先行した枚方戦では連敗脱出が見えたラストワンプレーで悪夢の同点ゴールを浴びて白星を取り逃すなど泥沼の状況。夏の中断前最終戦では最下位のミネベアにも敗戦し、残留争いのライバルに勝点3をみすみす献上し自らの戦況を悪くしてしまった。

この間、ロングボール主体の攻撃に変えるなど浮上を試みて模索したが奏功することはなく、逆に裏を取られて失点を繰り返す試合が増えてチーム状況が悪化したように見えた。

夏の中断期間後はメンバーを大幅に変えるなど最後まで試行錯誤はしたが白星は拾えず、結局9月に21年まで指揮した池上監督に交代。シーズン途中の監督交代は少なくともJFL昇格後チーム初の事態だった。

他のチームに対しての優位性を持てなかった

監督交代直後のインタビューを読むと、監督交代後に練習強度がかなり上がったことが書かれていた。

武蔵野は夜練かつ練習時間も限られるため、効率的な練習ができないとチーム力の差は開くばかりになってしまう。かつては運動量で他のチームに優位を取り、相手の体力が落ちたタイミングで攻めに転じて仕留めることができていたし、それが武蔵野のプレースタイルだった。しかし、今年のプレーは完全にその逆になっており、前半の開始15分までは攻勢を仕掛けられるが、精度が低くその時間に点数が取れない。逆に攻め疲れたところを相手に決められてしまう。顕著だったのはアウェイのソニー仙台戦。天皇杯から中3日で疲れているはずの相手に完全に守り切られ、最後の20分で3ゴールを叩き込まれて惨敗。前半シュート数0と割り切った戦術を敷いた相手に完全にハマってしまった。さすがJで歴戦を重ねた鈴木淳監督である。また、試合終盤の失速で勝ち点を落とした試合も多く、ホーム滋賀戦は残り1分、枚方戦はあとワンプレー粘れれば勝ち点を取れていた。最後の最後での踏ん張りの効かなさも露呈した。

主力の負傷が相次ぎ、最終盤に守備が崩壊した

監督交代直後の栃木戦には敗れたものの、鈴鹿戦で引き分けて連敗をストップ。暫定で最下位となったものの、次の浦安戦で10試合ぶりの勝利を果たしてすぐさま最下位を脱出。さらには首位を走っていた高知を撃破するなど4戦負けなしで持ち直したように見えたが、その高知戦で主力選手だったセンターバックの中川と鳥居が揃って負傷しシーズン終了まで離脱。そこからチームは急失速し、その試合以降の6試合を全て複数失点で落として得失点差も一気に悪化。28節で降格圏へと転げ落ちた。最終的な失点数はリーグワーストの56。残留を争う新宿とミネベアが終盤戦に守備重視の戦術で引分を重ねて勝ち点を堅実に積み上げ、得失点差の悪化も最小限に食い止めたのとは対照的であった。守備陣はもちろん、他のポジションでも負傷で長期離脱した選手は多く、ベストメンバーが揃う時期は少なかった。

怪我人がなければというたらればはあるが、それはチームの守備力が属人的であったということを意味している。昨年も中川が負傷離脱した際にチームは大きく成績を落としており、今年も全く同じことが起こってしまった。控えの選手の能力面というよりも、負けが込んで気落ちする状況を鼓舞できる選手がいなくなってしまったことが大きく、失点すると止まらない状態になってしまった。

高知戦のすぐ後の滋賀戦で5失点、大分戦で2失点、三重戦は3失点。残り3試合となった沖縄戦でも前半で絶望的な3失点を喫したところでここで4バックを諦め、後半からは3バックの守備的な戦術にスイッチ。最終戦ではボランチには守備に長けた吉田を起用するなど選手起用も含めて守備的な陣容に変え、点を取られない布陣にスイッチするとともに、大桃が大きな声で最終ラインを統率。最後の最後でなんとか1失点で引き分けに持ち込んだ。

この集中力が年間通じていればもう少し楽に残留できたと思うが、とにかく終わりよければすべてよしといったところだ。

再現性のある攻撃が最後まで構築できなかった

リーグワーストに沈んだ守備に目が行きがちだが、今年は正直言って攻撃面も非常に渋かった。26得点はブービー。得点数では石原が6点、後藤・鈴木・小林が4得点で続いたが、FWの選手は石原を除けば澤野と小口が1得点ずつ、他の選手に至ってはシーズン無得点と全く振るわなかった。今シーズンは攻撃的なポジションで阿部拓馬・田口光樹・新関成弥らを獲得したが、得点力向上には結びつかず。もちろん新関の鬼プレスや阿部のキープはチームの武器だったことは間違いないのだが、FWに求められる最大の役割は得点を奪うことであり、その部分を完全に差し引いて他の部分だけで評価できないだろう。

攻撃シーンを見ても、形を最後まで構築できなかった。一年間を通しての攻撃の基本はサイドからの仕掛けだったが、うまくサイドに展開できても中に待つ人が少なく簡単に跳ね返されてしまう。ボールを回してシュート機会を窺うがコースを塞がれているので簡単に防がれる、といったシーンが年間を通じて目についた。単騎でドリブル突破を狙いやカウンターで数的有利の状況を作りたいが、なかなかそういった展開は見られなかった。特に今年は守備の時間が長いため攻撃に転じた時に疲れが出てしまったり、ビハインドの展開となり相手が自陣に引いてしまうとそれを打開できるような攻撃がさっぱりできないといった守備面でのうまくいかない点が攻撃にも悪影響を及ぼしている部分も見受けられた。

勝利した試合を振り返っても、ミネベア戦は3点中2点が後藤のミドルと直接FK、鈴鹿戦はPK、浦安戦は相手GKの飛び出しを見逃さなかったロングシュートとミドルシュート、高知戦はクロス気味のシュートが入った形と、閃きやラッキーがあれば点が入って勝てるがそれがないと停滞し勝てないという状態。要は得点に再現性がないので、次に同じように点を取って勝つということが難しかった。2年連続で連勝がないのもこの点が要因のひとつだろう。得点力に関しては昨年も相当低く(28試合30得点)、流れの中からの得点も少なかった。しかし、特に後半戦はセットプレーからある程度狙って点を取れる形ができていただけに、今年はそれすらもできずさらに得点数が減ってしまったというのは非常に深刻な状況だろう。夏前に一度ロングボールを使ってシンプルに攻撃する形も模索したのだが、残留がちらつく中で形になる前に断念してしまい結局身を結ばないなど、チームスタイルのブレもあった。

ただ、色々並べてみたもののそもそも武蔵野には昔から決まった攻撃スタイルはあってなかったような気もする。「運動量で上回ってあとは個人技でなんとかする」スタイルだったのに肝となる「運動量で上回る」ができなかったので「個人技でなんとか」の難易度が上がったと考えれば割と合点がいく。

アウェイで1勝もできなかった

最後に、シーズンを通じてアウェイで一度も勝てないという惨状も低迷の一因になった。ホーム戦績は5勝4分6敗、18得点20失点とほぼ五分の成績だったのに対して、アウェイは0勝4分11敗。恐ろしいほどに勝てず、得点はわずか8に対して失点は4倍を超える36。さらに半数近い7試合が3失点以上という目を覆いたくなる数字ばかり。ちなみに今シーズンの「総」失点数が36以下のチームが7チームあります。

アウェイ戦績が少しでもマシなら、さすがにもう少し楽なシーズンになったのではと思う。

武蔵野が最後に勝利したアウェイ戦は昨年9月の新宿戦。東京都外での勝利は昨年7月の沖縄戦まで遡る。飛行機移動の試合ならまだわかるが、新宿や浦安は近場なのに、どうして勝てないのだろうか。。。

今年は残留できたものの……

今年はなんとか残留できたが、来年は盛岡とYSCCが降格、飛鳥が昇格する。来年以降はVONDS市原や福井、ジェイリース、福山など今年惜しくも昇格を逃した多くの実力のあるチームが控えているだろう。たとえば東京武蔵野ユナイテッドだった頃のようにJ3から選手を大量に獲得できるのであれば話は別だが、今の武蔵野には難しい。チーム力を相当上振れさせない限り、来年も再来年も残留争いからは逃れられない。

 武蔵野が悪いというよりは、JFLの大半がプロクラブの実質的なJ4になっているという現実があり、アマチュアチームには練習時間や選手層などの面で相当厳しいものになっている。肌感覚でいえば、Jリーグ参入への成績要件が優勝で自動昇格、2位入れ替え戦と厳しくなった2023年を境に一層厳しさを増している印象がある。

ここ数年の残留争いも武蔵野をはじめ、ミネベアミツミ・クリアソン新宿(J志向だが多くの選手はフルタイムの企業勤めと聞く)とアマクラブが中心だ。企業チームたがプロ契約選手の多いマルヤス岡崎や正社員かつ練習時間も確保されているHondaのようなチームではない限り、これからも継続してJFLに在籍し続けるのは容易なことではない。武蔵野の場合「横河」と社名を冠してはいるが横河電機の社員は全体の半数もいない。練習時間も就業時間後の夜練だ。高年俸でチームの軸となる選手を獲得でき、週何回もの練習や分析に時間を割けるできるプロチームと互角にやり合うのは難しい。その中で戦っていくには、前述したように他のチームに対しての優位性を作れるようなやりかたなり戦術なりで勝ち点を拾っていくしかない。

さらに、来年は石原、澤野のFWふたりが引退するので、得点力の強化は必須だ。個人的に希望が持てたのは、最後の2試合でルーキーの山崎稜介が出場機会を得たことだ。石原と同じ明治出身でスピード感のあるストライカー。元々はU-18日本代表の逸材だ。彼のブレイクが来年の横河武蔵野には不可欠だろう。思い切りのいいサイドアタッカー平野右京も一皮剥ければ面白い。もちろん補強もしないといけないが、点の取れる選手はなかなかフリーにならないのが実情だ。結果はすぐ出ない可能性もあるが、地域リーグで結果を残したストライカーを引っ張ってくるのも悪くない。

また、守備の要だった中川が退団、森田もJ3宮崎に引き抜かれてセンターバックの補強も必要となる。今年急成長した西見、逆に今年は出場機会を伸ばせなかった山田に期待しつつ、JFL以上のリーグで実績がある実力者は獲得したい。

最後に、今シーズンは38名の大所帯ではあったが、出場機会ゼロの選手はGK2名含む3名とほとんどの選手が試合に絡めたことを考えれば、選手を多めに保有する方針自体は間違っていなかっただろう。スカウティングの目はいいものがあると思っているので、来年も有望な選手を獲得しチームの勝利につなげて欲しい。

一気に一年を振り返ったが、応援している身からすると5月から11月はずっと苦しい時間だったような気がする。勝てば札幌(しかも対戦相手のGKは元武蔵野の児玉が出てくる可能性が高かった)という天皇杯初戦に敗れ、ラストプレーでの失点で勝点を落とし、アウェイで一度も勝てず、監督が代わって盛り返した後はライバルチームの猛追。そして最後の最後に残留。来年はもうちょっと楽に残留を決めたいものですね。あと、アウェイでも2回くらいは勝ってください!


いろいろありましたが、今年も楽しかったです。
ありがとうございました!また来年!




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