2022年、MADE IN FUKUIの衝撃。世界一地元にこだわったユニフォームで、全国を目指せ!
このオフシーズン、私は2枚のユニフォームを購入しました。
1枚目は、私が応援する東京武蔵野ユナイテッドFCのユニフォーム。今年からサプライヤーがYONEXからPUMAへと変わり、装いも新たに2022年シーズンを戦うことになります。
去年まで1万円ちょっとで買えたことを考えると少々お高めですが、背番号が自由に選べるようになったり、ホーム開幕戦に間に合うようになったりしたのは嬉しいところ。応援したい選手がたくさんいて迷ってしまったので、今年はなぜか選択肢にあった「0」にしてみました。私の永遠の推し選手は千葉ロッテマリーンズの諸積兼司選手です。
MADE IN FUKUI
そしてもう一枚購入したユニフォームは、北信越サッカーリーグに所属している福井ユナイテッドFCのユニフォーム。福井県出身の妻にプレゼントするというのが一応の購入理由になっているのだけれども、実際に乗り気なのはもちろん私だけ。早期予約だとお安くなるという言葉に乗せられ、購入ボタンをポチッと押してしまいました。
しかし、なかなか東京に住む私にとって福井は遠い場所。新幹線と特急を使ってざっくり4時間。実際問題として毎試合のように試合観戦に行くことは難しい。しかし、それでもユニフォーム購入に踏み切ったのは、今年の福井のユニフォームがとにかく革新的で素晴らしくて、ぜひ購入したいと思ったから。いや、革新的なんてレベルではなく、多分日本初の試みでしょう。だからこそ、今回記事で紹介をすることにしました。
革新的な試みとは、このユニフォームがMADE IN FUKUIだということ。MADE IN JAPANではありません。MADE IN FUKUI。県内生産なのです。どのチームのユニフォームもデザインや素材にさまざまなこだわりが散りばめられていますが、産地にまで拘ったユニフォームというのはこれまでになかったのではないでしょうか。(※ Twitterからの情報によるとFC岐阜のサプライヤー、Razzoliも岐阜県内で生産をしているとのこと。こちらも素晴らしい!他にも、ユニフォーム情報ありましたらぜひ教えてください!)
ユニフォーム紹介の動画では、実際に県内の工場でユニフォームが作られている様子がしっかりとまとめられています。ユニフォームの製作工程自体、見るのはなかなか珍しいですね。
皆さん、もし今ユニフォームが手元にあれば、タグに書いてある原産国を見てください。どこの国が書かれているでしょうか。ちなみに私が昨年まで着用していた東京武蔵野ユナイテッド(当時は東京武蔵野シティ)のユニフォームを見てみたら、MADE IN JAPANでした。YONEXさん、今まで素晴らしい製品を本当にありがとうございました。
このように例外はあるものの、ユニフォームを含めて我々が着ている洋服の多くが中国やベトナム、タイといった外国製。外国製を悪く言うつもりはありません。品質が悪いと思ったことはほとんどないし、リーズナブルな値段で購入できるというメリットも同時に享受しています。しかし、洋服としてはなかなかお高いユニフォームが日本製だったらちょっと嬉しいですよね。
しかし、福井のユニフォームはそんな日本製を飛び越えた福井製なのです。生地を編み込むところから始まって、プリント、縫製、背番号のシール作成から熱圧着までを全て県内。まさに、福井の技術力の集大成、これこそユナイテッドといっても過言ではありません。さらに、ユニフォームのデザインの迷彩柄は福井の市町村をモチーフとしているのだから、県を背負うチームの本気度がうかがえます。正直言って2万円近いお値段は少々お高く感じますが、質の高さを考えればきっと適正なお値段でしょう。さらにユニフォームを通じて地場産業振興につながるなんて、素晴らしいことじゃないですか。
推しに投資を惜しまない、これ、大事なことですよ!!
福井は繊維王国なんです
しかし、どこの県でもこのようなプロジェクトが行えるわけではありません。MADE IN FUKUIユニフォームが製作できる背景には、福井県が古くから繊維産業で栄えた地域だということが関わっています。
実は、北陸は繊維の一大産地。特に福井県は2017年のデータによると繊維工業出荷額は愛知、大阪に次ぐ第3位です。人口一人当たりの繊維出荷額では全国ぶっちぎりの第1位。
これは今に始まったことではなく、現在の福井県北部に当たる越前国では古くから絹織物が盛んだったのだそう。
湿度が高く静電気が発生しにくい気候や水が豊富にあるといった立地条件、冬は雪が多く内職が盛んといった要因が織物の生産に適していたという背景が織物の生産に適していたんですね。さらに明治時代になると、機械織が普及し羽二重織と呼ばれる絹織物の一大産地として発展。その後は時代の流れとともに合成繊維へと移り変わり、現在では最先端の化学繊維を使用した高付加価値製品の生産でも有名です。はい、ここテストに出ますよ。
また、繊維だけではありません。このプロジェクトになくてはならないもう一つの技術が、プリント技術です。
昔のユニフォームと比べると、最近のユニフォームはたくさんの色を使い、細かなデザインができるようになったと思いませんか?この理由の一つが、昇華転写プリントができるようになったからにあります。
昇華転写プリントとは、布地とは別に特殊なインクで印刷したデザインを印刷しておき、そのデザインと布を密着させて熱をかけることでデザインを布に転写をする技術のこと。あらかじめ布を染めたり、さまざまな色の糸を使用して布を織ったりするのに比べると、細かなデザインまで行うことができることが最大の利点です。
少し前まで、ユニフォームの細かなデザインというと刺繍やワッペンで行われていることが多かったですが、立体的でかっこいい反面ほつれたり、洗濯をすると剥がれてしまうこともありました。ユニフォーム自体が重くなるデメリットもあります。しかし、プリントであればそう言ったことは起こりません。
この工程を担当しているのは、福井ユナイテッドのスポンサーでもあるジャパンポリマーク株式会社。あまり知られていないかもしれませんが、この会社は熱転写の技術を活かして多くのスポーツチームの背番号ラベルも手がけています。実は日本代表のユニフォームの背番号やネームラベルにも20年以上採用されています。ニッチですが、日本サッカー界にも貢献しているすごい会社なのです。
繊維産業が盛んで、技術力の高い会社がある福井だからこそ実現できたこのMADE IN FUKUIユニフォーム。この凄さを知っていただけたでしょうか。いや、欲しくなったのではないでしょうか
もちろん応援するチーム以外のユニフォームにはなかなか欲しくても手が出ないという方も多いかもしれません。しかし、この取り組みを追じて福井の繊維産業が有名になればこのユニフォームのコンセプトは成功だと私は思います。地元の会社や地元の産業を盛り立てられるような試みがサッカー界から広まれば、サッカーが地元に密着しているということをアピールできる絶好の機会になるのではないでしょうか。これからは、福井といえばメガネフレームとユニフォームの産地で覚えてくださいね!
そんな福井県には、現在全国リーグに所属するサッカーチームがありません。実は47の都道府県のうち全国リーグのチームがない県は和歌山と福井だけ。前身のサウルコス時代に北信越リーグで戦っていた金沢や松本、長野は気付けばJリーグへ行ってしまいました。
一方で暗いことばかりではありません。2024年春には、遂に福井へ新幹線がやってきます。駅前は再開発が進み、俄かに街が変わり始めています。
地元愛を全面に出した今年のユニフォームからは、そんな近い未来に福井の名を背負って全国リーグで戦うんだという決意を感じます。
今年こそは福井のユニフォームを着て、北信越リーグに、地域決勝に応援へ行きたい!地域リーグの開幕を前に、今からシーズンが楽しみです。
「不可能を可能にする」サプライヤー
さらにいえば、このユニフォームを実現にはサプライヤーであるHUMMELの懐の深さも一躍買っていることでしょう。
普通に考えれば、自社の製品は自社の工場などで作った方が安上がりだし、生産や品質管理等もしやすいはず。この構想が現実となった背景として、HUMMEL側の協力があったと言うことは想像に難くありません。福井ユナイテッドには前々からこのMADE IN FUKUIユニフォームの構想があったそうですが、面白い考えを実現できるサプライヤーのアシストがあったのかと思うと足を向けて眠れません。
ここから先は
OWL magazine 旅とサッカーを紡ぐWeb雑誌
サポーターはあくまでも応援者であり、言ってしまえばサッカー界の脇役といえます。しかしながら、スポーツツーリズムという文脈においては、サポー…
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?