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東京武蔵野シティのライセンスとスタジアム問題

去る9/24、東京武蔵野シティFCにJ3ライセンスが交付されました。

今回のライセンスは、条件付きです。

武蔵野はJ3クラブライセンス申請に伴い、J3クラブライセンス交付規則第8条〔施設基準〕第2項I.01第3項第1号の例外適用申請を提出。(5年以内のスタジアムの新設)

ここでいう第8条〔施設基準〕第2項I.01第3項第1号の例外適用申請とは昨年緩和されたライセンス制度の例外です。

(2) 前項に関わらず、基準I.01(2)においては、「Jリーグスタジアム基準」に明示した項目についてのみ、以下のとおり例外を設ける。
1 ライセンス申請者が、ライセンス申請時に、以下のいずれかに該当するものとして「例外適用申請書」を提出し、基準I.01の例外適用がJリーグ理事会で承認された場合は、基準I.01を満たしているものとする
イ. 要件を満たすための工事が着工されており、かつ、当該ライセンス申請時から4年以内に到来する最終のシーズンの開幕前日までに竣工し、工事期間中も試合開催に支障をきたさないと合理的に認められる場合
ロ. Jリーグ規約第30条第1項の要件を満たすスタジアムを将来的に整備することをライセンス申請者が文書で約束した場合
2 前号ロの例外に基づきライセンス申請者がJ1またはJ2 に昇格したときは、ライセンス申請者は、当該昇格決定後3 年以内に到来する最終のライセンス申請時までに、場所・ 予算・整備内容を備えた具体的なスタジアム整備計画を提出しなければならない。また、昇格決定後5年以内に到来す る最終のライセンス申請時までに工事完了し、供用開始が 行われなければならない。ただし、工事完了・供用開始までの期限については、ライセンス申請者が当該期限内に到 来する最終のライセンス申請時に前号イに基づく例外申請を行い、これが認められたときは、4年以内に到来する最終 のシーズンの開幕の前日まで延長される。なお、想定外の事象が発生しやむを得ないと認められる場合は理事会にて例外規定の適用の有無を決定する

 長々引用しましたが、J参入から3年以内に具体的な計画の提出、5年以内にスタジアムを完成することを条件にJ3参入が認められることになりました。さらに、5年以内に工事が着工していれば、もう3年待ってもらえるので、
単純に言えばJ参入から3年以内に具体的な計画を提出し、5年以内に工事を着工し、8年以内にスタジアムが完成していることがJ参入の条件となります。参入条件が、参入後のスタジアム完成というのも順序が逆なようにも思えますが、Jリーグのホームページのスケジュール図がわかりやすいので参照ください。

どこに作るの?スタジアム

 まず気になる点は、5年以内のスタジアム”新設”という文言。現在の本拠地である武蔵野陸上競技場を含め、既存のスタジアムを使用せず、他にスタジアムを建てることになります。

そんな場所があるのでしょうか?

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 武蔵野市の地図を見てみましょう。武蔵野市内で広い土地があるのは、境浄水場横河グラウンドNTT電気通信研究所成蹊大学くらい。他は既存の公園等を整備するしかありません。とは言え既存の公園にスタジアムを建てることについて周囲の反対は必至でしょう。保育園でも反対が起きる市ですからね。
 井の頭公園は動物園がありますし、そもそも西園(地図下側)に陸上競技場が既に存在しています。新設でなければ、ここを改修するという案もあるかもしれませんが。(ただし西園は三鷹市。)

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 武蔵野中央公園はほとんどが広場で、周囲も研究所等が多く民家が少ないので一番可能性はありそう。公園北側は草野球・少年野球のほか、サッカーやラクロス等をしているのを見かけます。南側の芝生も紙飛行機やピクニック、散歩、バーベキューをしている人が多い場所。昔は中島飛行機の工場でした。あと武蔵野陸上競技場との間に不自然に丸くカーブした道がありますが、これは昔野球のスタジアムがあった名残です。

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小金井公園も東側が一部武蔵野市で、今は野球場やテニスコートが点在しているエリア。敷地的にはうまく整備すればできそうですが、道路を挟んで住宅地なのがネックでしょうか。武蔵野市より小金井市からのアクセスが良いエリアなのも懸念点。

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 公園以外だと、三鷹駅前の横河グラウンドは既にグラウンドがありますが、それほど広くないので改修してスタジアムに出来るかわかりません。電通裏という意味深なバスの行き先でもおなじみNTT電気通信研究所は広大な敷地がありますが、私有地(正確には逓信省→電電公社→NTTなので元々は国有?それにしても歴史が長い)ですし、地図で空き地になっているところには新しい建物も立っており閉鎖等も無さそう。浄水場も地図を見る限り遊休地は無さそうですが、右下の工事箇所が気になります。

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 一方で市外に適した土地があるかと言われてもちょっと思い浮かびません。三鷹、小金井、西東京等近隣の市であれば心理的な遠さはありませんが、市外にスタジアムがあるのに、「武蔵野シティ」という名前なのはどうでしょうか。また、近隣の三鷹・府中・小金井・西東京はFC東京の株主という”領土問題”もあります。まさか広域地名としての武蔵野や国木田独歩が言うところの「武蔵野」という拡大解釈はしてこないと思いますが・・・

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ジプシー・ムサシノ?

 次に、J参入からスタジアム完成まではどうするのでしょうか。都内でJ3のリーグ戦ができるスタジアムは味の素スタジアム味の素フィールド西が丘駒沢陸上競技場夢の島陸上競技場などがありますが、味スタはFC東京、東京Vと重複します。3チーム重複したら日程くんが頭を抱えてしまいそう。
 西が丘や夢の島はFC東京U-23で開催実績がありますが、そのU-23も21年までは参入予定ですのでそれまでの間は重複、しかも同一カテゴリでの重複になります。仮に開催しても西が丘は現状でも集客に苦戦していますし、駒沢、夢の島は武蔵野からのアクセスも良くありません。
 なにより、最長8年間、ジプシー球団を続けて観客数は集まるのでしょうか。8年間あったら小学生6年生も大学2年生になってしまします。なお、ジェフ千葉はJ2降格から8年間あってもまだJ2のままでした。

あ、新国立競技場あるじゃん。

条件を緩和するJリーグの意図は?

 また、この例外条件の怖いところは、3年間頑張ってみたけどダメだった場合にはJFLに戻されることです。「3年待っても兆しは見られない〜」ってチバユウスケも歌ってましたし。
 「Jリーグに行きましょう!」と声高に叫んで、スポンサーを口説き落とし観客をかき集めてJリーグへ行っても、スタジアムが無いので地元で試合は開催できない、挙げ句の果てにスタジアム完成の目処が立たずJFLに逆戻り。そんな行き当たりばったりのチームにファンはついてくるのでしょうか。JFLに戻ってきて(不本意ながら)地元開催ができたとして、果たしてファンはまた足を運ぶのでしょうか。
 カテゴリが上がることによる本拠地変更の例で言えば、地域リーグからJFLへ昇格した際のブリオベッカ浦安コバルトーレ女川がスタジアムの問題でそれまでの本拠地を使用できず、集客面で非常に苦労しました(浦安は主に柏の葉やフクアリ、女川は石巻や仙台、角田などで開催。)。それと同様のことが起こるのは火を見るよりも明らかでしょう。整備計画提出まで3年(今年の参入は実質的にほぼ不可能なので4年)と言うとそれなりに長いですが、1から作ろうとすると近隣への説明やらなんやらであっという間だと思います。着工は待たずとも、せめて計画の目処が立ってからJ3へ参入した方が良いのではないでしょうか。

 話は逸れますが、JリーグはスタジアムなしでもJ参入できる仕組みを作ってまで、チームを増やしたいのでしょうか。本当にJのチームを増やしたいのであれば、地域リーグとJFLとの枠組みの改革に真剣に取り組むべきです。JFL・Jリーグに行きたいチームは全国に唸るほどいるにも関わらず、年間でJFLへ昇格できるチームがわずか2チーム。しかも、昇格を決める大事な大会(地域CL)は上位カテゴリではあり得ない過密日程のレギュレーション。この部分のボトルネックを解消しないことには、どれだけJFLーJリーグの間口を広げたところで歪なピラミッドのままです。例えば、地域リーグとJFLの間に3地区程度のリーグを設けることでピラミッドを均すとか、大胆な枠組みの変更が必要だと思います。

後発クラブだからこそ、理念を高く掲げるべき。

 最後に、そこまで急いでJリーグに行かなくてはいけないのでしょうか。東京武蔵野シティFCの前身は、横河武蔵野FCという企業主体のチームでJは目指していませんでした。しかし、J3の発足によるセレクション参加選手の減少や観客数減少、そしてJFL自体の先行きの不透明さ・先細る懸念からJリーグ加入へ転換した経緯があります。2010年代前半の親会社の業績悪化の影響も少なからず受けているかもしれません。その辺りの経緯はこの本が詳しいです。

 それだけに、チームを存続させていくためにJリーグへ加盟することは理解はできます。いくら「JFLの方が気楽でいい」なんてファンが言っていても、チームが無くなっては元も子もありません。

 一方で、東京のプロサッカーチーム事情は激変しています。東京だけでも、上も見れば近隣にFC東京東京V町田がいて、地域リーグには東京ユナイテッド、東京23FC、南葛SCなどがJFL・Jリーグを狙っています。チームは東京でなくても、都内にも浦和や鹿島ファンもいます。
 武蔵野シティはJリーグのチームとしては後発組。武蔵野市民にも、近隣の企業にも、既に他チームのファンという人や他チームのスポンサー企業が相当数いるはずです。そんな状況の中でプロサッカーチームとしてやっていくためには、単に「武蔵野市のチーム」という動機付けでは、市への帰属意識以外でお客さんに訴求することはできないでしょう。Jリーグを目指そう!という明確な目標があるうちは良いですが、Jに行ったあとの目標はなんでしょうか?J2?J1?ACL?
 今すぐにJ!と焦らずに、どんなチームを目指すのか、理念に従って活動をすべきだと思います。その延長に新スタジアムやJ参入があれば最良ではないでしょうか。

一躍”注目クラブ”になった武蔵野。

  このスタジアムに関する例外をJ参入に適用したチームは初めてです。それだけでもサッカー関係者からは興味を持たれるでしょう。それに加えて、「スタジアム新設」という大きな話が登場しました。サッカー関係者だけでなく、地元を巻き込んで否が応でも注目を浴びるでしょう。

 それだけに、今後のロードマップが見たいところ。何年後のJ入りを目指して、お客さんをどう増やすか、スタジアム建設中にお客さんをどう離さないか。どんなスキームでスタジアムを作るのか。どこが予定地になっているのか、そもそもこれから議論するのか。
 既存のファンも、住民も、サッカーファンも、ステークホルダーがみんな動向を気にしています。

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