鉄道・登山・サッカーの三段重ね!三重北部の楽しみ詰め込みました!!
2021年10月23日、早朝5時。夜行バスで名古屋駅に到着すると、すぐさま近鉄線に乗り換える。土曜日の早朝の列車に乗る人は少ない。シート端の座席を難なく確保し、発車までのわずかな時間で路線図を眺める。
桑名、四日市、ひと文字だけの「津」。松坂を通って伊勢市、鳥羽、そして志摩へ。途中で乗り換えれば鈴鹿だ。そうだ、この前近鉄に乗ったのは、3月に鈴鹿へ行った時だった。
半年近い緊急事態宣言を経て、やっと戻ってきた旅という楽しみを噛み締める。それにしても、年間2回も近鉄に乗って三重に訪れることになんて数年前には思ってもいなかった。それもこれも、サッカーのおかげだ。
そう、この旅、単なる旅行ではない。サッカー遠征なのだ!
三重県まで私が訪れた理由。それは、私の応援する東京武蔵野ユナイテッドFCとヴィアティン三重との試合を観戦するためだ。
私はキャプテンさかまき。JFLの東京武蔵野ユナイテッドFCを応援するサポーターだ。しかし、ただのサッカー好きではない。サッカーと同じくらい、いやそれ以上に鉄道や登山、何より旅行を愛するスポーツツーリストだ。日本全国の遠征先で山へ登り、時にはローカル線に乗り、サウナに入り、地元のグルメをちょっと食べて見聞を深めているのだ。もちろんサッカー観戦をしにきたのだが、サッカーだけがメインではないのだ。
そんな私の遠征は、言うなれば、料亭謹製・高級おせち料理のごとく。エビ、カニ、カズノコ。クワイにチョロギ。年の初めのためしとて。どの料理もメインディッシュ、豪華でハイカロリーな旅なのだ。
今回の遠征ももちろんたくさんの具材を詰め込んだ。今回は鉄道・登山・サッカーの三段重ね。本来なら、一つ一つが目的になるような主役級のコンテンツだ。しかし、今回は全部いっぺんにいただきます。三重だけに、三段重ね。ここ重要ですよ。
もう一度言いますよ、
一の重、鉄道!
え!?この列車、埼玉を走る某鉄道じゃないですか!?
二の重、登山!
山の形、奇抜すぎませんか!?
三の重、サッカー!
このトラック、ド派手すぎませんか!?
とてもサッカー遠征記とは思えない私の遠征の様子。その一部始終をぜひ見ていただこう!
鉄道編①〜三岐線で再会、懐かしのあの車両!!〜
名古屋から急行列車で30分ほどで、近鉄富田駅に到着する。駅の周りは住宅街で、乗り換えがなければなかなか訪れることは少ないだろう。そんな駅が、今回の旅のスタートだ。
この近鉄富田駅から北へと走る列車がある。それが、三岐鉄道三岐線だ。今回の旅の目的、一つ目はこの路線に乗ることだ。
三岐鉄道という鉄道会社を、ご存知だろうか。三重県の北部、員弁川を挟んで走る三岐線を北勢線を運行している会社だ。路線名は三重の「三」と岐阜の「岐」から採られているが、岐阜県までは到達することなく現在に至っている。本来の計画では山を越えて関ヶ原まで延伸する予定で実際に敷設免許も取得していたが、1931年に現在の終点、西藤原駅まで延伸されて以降は着手されずに終わってしまった。既に免許も失効してしまっているし、今後延伸される予定もないだろう。
鉄道好きの私にとっては、サッカー遠征の際に普段乗らない地方の列車に乗るのがひそかな楽しみの一つだ。今日の試合会場が三岐鉄道の沿線にあることをいいことに、この機会に2つの路線に乗ってみよう。2つの路線は交差していないものの、地図で見る限り徒歩で移動できなくもなさそうな位置関係だ。
まずは三岐線の改札で、一日乗車券を購入する。これ一枚で二路線とも乗り放題になる優れものだ。三岐線のホームで列車を待っていると、程なくゆっくりと列車が入ってきた。すると、何とも見覚えのある、レモンイエローの車体が、少し湾曲したホームへと滑り込んでくる。
そう、この懐かしい列車に乗りたかったのだ!
絵の具で表現するには少し難しい艶消しの黄色に、つぶらな瞳のような前照灯。ご存知の方も多いだろう、かつて西武鉄道で701系として活躍した車両だ。子供の頃に西武新宿線沿線に住んでいた私にとっては、西武=黄色という確固たる方程式が成り立っている。三岐鉄道は黄色とオレンジのカラーリングが基本なのだが、幸運にも西武線時代のカラーに復元された編成がやってきた。
この車両が譲渡されたのは1997年のことだそうだ。当時の西武線といえば、まだ有楽町線も始まっていなかった頃。今では池袋を遠く越えて横浜の元町・中華街まで向かうようになったなんて知ったら、どんなに驚くことだろうか。
列車の扉が開く。子供の頃に乗ったことがあるような、ないような、そんな気持ちで乗り込む。上り列車だが、朝の車両は高校生を中心にそこそこの賑わいだ。しばらくして扉が閉まり、列車が走り出す。ガタゴトと鳴る音すらなんだか懐かしい気がして、思わずイヤホンを外して目を閉じてみる。
頭には、断片的な思い出がシャボン玉のようにいくつも浮かび上がってくる。小さな頃に両親と新宿へと出かけた時のこと。あの時はデパートへ行ったのだろうか、それとも映画だったのだろうか。小金井公園で友人とはぐれ、一人で電車に乗って家へ帰ったこと。西武球場にも、今は無きとしまえんにも、向かう時にはいつも黄色い列車だった。
ここまでのノスタルジーに浸れるのは、流石に西武線沿線に在住していたことのある人間だけかもしれない。しかし、少し昔の列車に乗って旅行をすれば、きっと誰でもちょっとだけタイムスリップができるはずだ。そんなローカル感が、この路線には詰まっている。三岐鉄道は小旅行にぴったりだ。
登山編①〜駅からハイキング。藤原岳へGO!〜
暁学園前駅を過ぎると、学生たちは下車し車内はがらんとしてしまった。朝焼けの光の中で2駅先の保々駅で対向列車を待っていると、貨物列車がゆっくりと通過していった。
幼少期にプラレールや機関車トーマスで遊んだ男の子はすべからく貨物列車が大好きだ。私もその一人。不覚にもテンションが上がってしまい、カメラのシャッターを切るタイミングを間違えてしまった。
通過した貨物列車の積荷はセメントだ。何を隠そうこの三岐線、元々はセメント輸送のために敷設された列車なのだ。
その原料となる石灰石はどこからやってくるのかというと、その答えは車窓に見えてくる。歪な形の山肌を見せるその山こそが、藤原岳だ。
ピラミッドのように削られた山肌を見て、すぐに思い出す山が一つあった。
それは、秩父にある武甲山。秩父のシンボル的な山だが、こちらも石灰石採掘によって削り取られてしまっている。秩父といえば、西武線の終着点でもある。もしかすると、今乗っているこの車両もその昔は秩父まで走ってたいたかもしれない。場所は違えど、石灰石の山には黄色い車両がよく似合う。不思議な巡り合わせもあるものだ。
そしてこの列車に乗りたかった一番の理由。それこそが、この藤原岳に登ることだ。藤原岳は鈴鹿山脈に含まれる山の一つで、標高は1140m。それほど高くはないので、山のちサッカーにもうってつけだろう。鈴鹿というとサッカー好きにはポイントゲッターズの印象が強いかもしれないが、山脈は鈴鹿市から遠く岐阜県まで続いている。
セメント工場を過ぎると、終点の西藤原駅に到着する。この駅は三重県最北端の駅だそうだ。山間の静かな駅で降りたのは、私を含めてわずか数人だけだった。
駅から徒歩10分ほどで登山口まで到着。コンクリートから人へ、鉄道から登山へ。シームレスに山登りへと移行できるのはありがたい、藤原岳登山にも、是非三岐鉄道をご利用ください。
登山届を出したら、いざ行かん、山へ!
中京圏からアクセスも良いからだろうか、7時過ぎというのに、既に登り始めているハイカーの姿もあった。そのおかげか登山道もよく整備されている。朝の日差しを浴びながら、一歩ずつ登っていく。
序盤は鬱蒼とした森の中を進む。登り自体は急なところも多少あるものの、危険な箇所はほとんど無い。距離もそれほど長くないので、初心者でも無理なく登れる山だろう。要所要所で今何合目にいるのかの表示があるのもありがたい。
試合の時間も考えて、休憩はほどほどに急ぎ足で8合目まで登る。標高は800mを超え、あたりは木が疎らになって視界が開けてきた。あたりの景色を歩きたくなるが、ゴロゴロとした岩も時折出現するので足元には気をつけたい。藤原山荘を越えたら、山頂はすぐそこだ。
山頂付近はなだらかな草地になっていて、伊勢湾まで見渡すことができる。名古屋の街や、さっき乗っていた列車はどのあたりだろうか。ランドマークを探しながらなんとなく予想を立てる。見事な秋晴れで、太陽が眩しい。
登山開始からおよそ1時間半で山頂に到着。かなり早いペースだ。あまり参考にはしないでほしい。
山頂に立つと、さらに山の向こう側が見えてくる。藤原岳の山頂は三重県と滋賀県の県境になっている。つまり、今見ている風景は、滋賀県東近江市だ。
東近江市といえば、JFLに所属するMIOびわこ滋賀のホームタウンでもある。三重県側のいなべ市はヴィアティン三重のホームタウンだから、この山はJFL2チームのホームタウンが接する地点なのだ。来年の三重対滋賀戦では、是非この藤原岳をフィーチャーしてほしい。
余談だが藤原岳は、日本三百名山に選定されている。
世の中的には三百名山よりも日本百名山の方が有名だろう。三百名山には百名山の山は全て含まれているから、三百名山の選りすぐりが日本百名山と思われるかもしれない。
しかし、実は百名山の方が先に選定されているのだ。厳密にいうと、深田久弥氏が著書『日本百名山』で自分の登山経験を基に選出したのが百名山で、その後日本山岳会が200の山を追加してできたのが三百名山なのだ。
もちろん例外はあるが、日本百名山に選ばれた山は知名度も人気も高いものが多い。富士山はもちろん、八ヶ岳や筑波山、石鎚山や阿蘇山と言った山の名前は登山をしない人でも聞いたことがあるだろう。前述の通り、日本百名山は独断で選出しているのである程度の異論や疑問点はあるが、高さや品格や歴史において、選ばれるだけの理由を持った山であることには間違いない。
では、百名山の山の方が良いのか、楽しいのかと問われれば実際のところそうでもないこともある。登山道が単調だったり、アクセスが悪すぎたり、逆に開発のされすぎで登り甲斐のない山だってある。一方で三百名山にも、いや、何にも選ばれていない無印の山だって魅力的な山はたくさんあるのだ。
サッカーだってそうだろう。Jリーグに詳しくない人がJ1とJ3と聞いたら、単純にJ1の方が面白くてレベルが高いと思われるだろう。確かにそれは間違いないかもしれないが、サッカー好きなら知っているはずだ。J3の試合にだって特徴的な選手がいたり、スタグルがおいしかったり、もちろん手に汗握る試合だってたくさんある。JではないJFLや地域リーグだって、言わずもがなだ。
山には昇降格の制度はないけれど、山もサッカーも、カテゴリに囚われず面白さを見出したもの勝ちなのだ。
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サポーターはあくまでも応援者であり、言ってしまえばサッカー界の脇役といえます。しかしながら、スポーツツーリズムという文脈においては、サポー…
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