その日のまえに
重松清のことは全く好きじゃないのだけど、ふと思い出して、やっぱり印象に残す作家だなと妙に感心した。
祖父が手術を受けることになった。なんだか難しい手術で、成功率は3割から4割らしい。このご時世に執刀してもらえるのは本当にありがたいけど、状況が切迫していることを突きつけられたようで少し悲しくなった。
「その日」に備えて何をしたらいいかわからなかったが、とりあえず、非常に遅れた就活終了の旨をLINEした。祖父は「おめでとう」とメッセージをよこした後、働くとはなんたるか、を饒舌に語った。人と話すことが大好きな人だから。手術について、祖父自身はあまり深刻に受け止めていないようで、今年の運勢が最強で喜ばしいみたいなことも話していた。その気楽さに少しだけ胸が軽くなったけど、もしかしたらを考えると泣きそうになった。
正直、今は実感がわかない。ただ1ヶ月もすれば全て終わっていて、泣いたり笑ったりしているのだろうと思うと不思議な気持ちになる。1ヶ月後はちょうどバレンタインだな、とか、感染症のこととか、とりとめもないことが頭の中をぐるぐるして、それ自体が逃避なのかもしれないとこれを書きながら気がついた。今回の手術がうまくいっても、「その日」は必ずやってくる。「「その日」のまえに」備えることはきっと私にはできない。備えるということは、その日を肯定することで、それってなんだか失礼な気がする。
もう何日かしたら考えも変わるのかもしれないけれど、今日のこの気持ちを何かに残しておきたかった。それだけです。