日本のピノ・ノワールの原点ともいえるべき、木村農園の「木村ピノ」
北海道・余市でピノを栽培し始めてから30年。
木村さんの家は、もともとリンゴ農家だったのですが、リンゴの値段がどんどん下がり、その代わりに醸造用ブドウを植えたのがはじまりでした。
そのころはまわりのリンゴ農家も一斉に植え替え、ピノを植えてる農家もちらほらありました。
しかし、ピノ・ノワールは気難しい品種で、まともなものができませんでした。
木村さんとおなじようにピノを植えていた農家は一軒、また一軒とやめていき、その代わりにツヴァイゲルトを植えていきました。
しかし、木村農園の木村幸司さんはピノにこだわり、北海道という土地で、美味しいものができるかわからないこのピノ・ノワールのブドウ園をひろげていきました。
失敗の連続、試行錯誤を繰り返し、やっとそれなりのピノが造れるようになったと思えたのが2008年。
それからは自信の持てるピノを造りつづけています。
その背景には、どんなときでも支え、信頼してブドウを買い続けてくれた千歳ワイナリーやココ・ファームの存在があります。
この「こことあるシリーズ」は、ココ・ファームが木村農園で愛情込めて育てられたピノ・ノワールを、岩見沢の10R ワイナリーでブルース・ガットラヴさんが仕込んでいます。
採れたてのイチゴを齧ったときのような甘酸っぱいみずみずしさと、少し湿ったような土の香りがあわさっていて熟成感と複雑さを感じさせます。
酸はしっかりあるものの、それがとてもやさしく繊細で。
その美しさには静かな凄みと迫力があります。
こことあるシリーズはぼくの大好きなワインのひとつです。