WCS2024 使用デッキ解説
2ヵ月ぶりの更新です。
という書き出しを書いてから2ヵ月経って気付けば4か月ぶりの更新になってしまいました。
ただでさえ書くのが遅いのに書き進めている内に書くことが増えたり気になる日本語を直したりしている内にありえない時間が経ってしまいました。
↑
とか書いてるうちに色々あって急に書くのがめんどくさくなって更に1ヵ月経ってました。恐ろしい。
ここまでくるとトロフィーの写真を記事に載せたいなと思ってずっと待っていたのですが、全然来る気配も無いしそろそろ書こうとしてた内容忘れていきそうなので忘れないうちに仕上げて公開します。
↑リンクス分からん人向けの予備知識はこちらの記事からどうぞ
↑去年の記事はこちらです
予選通過の経緯
今年もKCポイント1位で通過しました。
結果
世界3位になりました。
ルール
去年と今年でいくつかルールに大きな変更点があります。
まず1つ目の大きな変更点はレジェンドデッキ(キャラテーマ)とスタンダードデッキという枠組みの廃止です。
ここ数年はスキルのパワーが高くなった結果、キャラテーマと環境デッキの境目が無くなりつつあり、分類が機能していませんでした。無理に分類しないことで特殊レギュレーションの条件を満たしたオルフェゴールが特殊レギュ側に侵入するといったこともなくなりますし妥当な変更でしょう。
2つ目はタクティカルカードの実装です。
デュエルリンクスには灰流うららや増殖するGのような扱いを受けているカードがいくつかあります。その内の1つを例に挙げると月の書が該当しますが、全デッキ中3枚という縛りを満たすために月の書を入れなくて良いデッキから探す必要があり、様々なデッキを見せるためのルールがかえってデッキの選択肢を狭める形になってしまっていました。これも妥当な変更だと考えています。
はじめに
今年は去年よりも代表の人数が少なかったので予選ラウンドの回数にも変更がありました。全4回戦で4-0が1人と3-1が4人出て3-1から1人予選落ちが出ます。負けた位置次第では即実質的な予選落ちもありえますから、やはり全勝はマストです。
去年もそうだったのですがこの5デッキの準備というのが死ぬほど大変でして、ただでさえカードパワーやスキルのインフレによりゲームの内容が年々複雑化していっているにも関わらず、デッキの種類やカードプールはどんどん増え続けるため、デッキ毎に必要な対面練習の数も更に倍々に増えていきます。
去年はRYOSUKE&あしゅ率いる七武海組にお世話になりましたが、今年は加えてACTも参加し人手が増えたにも関わらずかなりギリギリでした。
ただでさえ当落線上のデッキが多かった状態から新キャラ・新スキル・新弾で大きく環境が変わったため、準備期間のほとんどはデッキの取捨選択に費やしていた気がします。
ちなみに今年のリンクス部門の日本人の代表は9人居ましたが、後から知ったことですが他の5人が結託して完全に2つのグループになっていたそうです。
デッキ選択
基本の選出方針
基本方針は徹底して安定デッキを選出することです。
ここにおける具体的な安定の定義とは、初動率だけでなく、あらゆる対面や状況に対応できる5デッキを指します。
・初動率が高い
・全対面五分以上
・先後のムラがない
・様々な状況に対応できる
この4点を抑えていることがあくまで理想ですが、実際に全てのデッキがこの要件を満たすことはかなり難しいです。
妥協できるラインを探りつつ、課題となるポイントを可能な限り構築で解消できるよう努めました。
環境的な選出基準
今環境においていくつか足切りの要因となる要素が存在します。
それが以下の4点です。
後攻光天使と閃刀姫の猛攻を受け切れる
閃刀姫リンクモンスター+ライフ5500の上からライフを飛ばせるor返しの閃刀魔法を受け切れる
対象耐性への解答がある
先攻深淵で詰まない
①
最近のデュエルリンクスは後攻側がかなり強いゲーム性です。環境デッキの多くは後攻時にスキルでボーナスが付いて2手以上が確約されているため、先攻側の妨害はそれなりに質の高いものが要求されます。
②
ライフ5500+イーグルブースターを全く苦にしないデッキに対して閃刀姫側はリソースを投げ捨ててでも防御策を取る必要があるため、エンゲージを強く打ち難く(シズクのサーチをエンゲージではなくウィドウアンカーに即変換したり)ゲーム全体で質の高いドローを要求できます。幻魔やダークフルードはこの点で一般的に閃刀姫に有利とされていますが、これらのデッキであっても閃刀姫に先攻を押し付けられた場合勝ち切ることは難しく、閃刀姫対面はコイントスの結果でかなり勝率がブレます。
しかしライフに圧をかけられないデッキの場合、のびのびと大量のエンゲージを手札に抱えられてしまうため、先攻であろうが後攻であろうが関係なくボコボコにされてしまいます。
そのためまずは後攻をしっかり勝ち切り、先攻は要求値をしっかり上げられるデッキを探しました。
③
ここまでの流れから、この環境は光天使と閃刀姫のほぼ2強に近い形です。
閃刀姫と光天使への対抗手段として対象耐性or破壊耐性で場を固めるという手段を取るデッキが環境に多い傾向がありました。デッキ選択によってはこれに巻き込まれて何かしらの耐性で詰むという二次被害を受けかねませんので注意が必要です。
④
深淵に耐性があるのも重要です。
今環境において光天使以外にも先攻で深淵を立てることが可能なデッキがいくつか存在します。
深淵自体を止めようにも禁じられた一滴等は光天使や閃刀姫に対して全く有効でないため、防御札としての要件も満たし辛く使い勝手が悪いです。
採用したデッキ
以上の条件を踏まえ、5デッキは最終的にこのようになりました。
左から
【光天使】
【ダークフルード】
【シャーク】
【閃刀姫】
【先史遺産】
です。
【光天使】
今環境最強のデッキです。去年のSRに引き続き今年の代表全員が採用したデッキになります。
最近のデュエルリンクスの特徴として、スキルで展開を行うデッキは強いという傾向があります。何故かというと『スキルの挙動にカードは介入できない』=『動き出しに介入できず妨害する手段が限られる』からです。
光天使はスキルでモンスターの展開と妨害の貫通を行うので、例えばミドラーシュであればエクシーズを1回を許してしまいますし、ダークフルードであればモンスターを並べるところまではいかれてしまいます。
光天使はスキルで展開が保証されている強みを最大限に活かし、デルタテロスをちらつかせ妨害の先打ちを強要することでローリスクハイリターンな状況を作り出しやすく、スキルの特殊な挙動の全てがこのデッキを支えています。
構築の方針としては、デッキパワーが十分に高いので特定の対面・状況にしか機能しないカードや先攻後攻で大きくパワーが変わるカードのような尖った採択を極力行わず、汎用性の高いカードや弱点を補うカードを中心にデッキを固めています。
《エフェクトヴェーラー》
主に期待している役割としては「スケールドローの受け」「対策必須なカードへの詰み回避」の2点です。
光天使はメインギミックで直接妨害を敷けずドローで罠を引き込む必要があるデッキタイプですから、相手ターンのスケールドローで妨害が増える可能性があるため、手札誘発はなるべく採用したいです。罠を採用できる枚数とドローできる枚数が多いのでそこまで頻発する問題ではありませんが、スケールスローネの3ドローで2妨害以上を敷けない試合はなるべく避けたいところです。
調整メンバーはヴェーラーを3枚で月の書を2枚にしていましたが、ライフを守れなかったり下振れを誤魔化すパワーに欠けると判断したため月の書を優先しています。
《つり天井》
先ほどこのゲームは後攻が有利と述べましたが、それは光天使ミラーにおいても同様です。
先攻でスケール+セプターの最強初動が揃えば物量で押し潰すことも可能ですが、「チアガール+2伏せ」のような弱初動は基本的に相手が強いカードを持っていないことを祈るゲームになりがちです。
今回つり天井を入れる目的は2つあり、1つはミラーのハンド差を埋めるためです。
つり天井がこちらの場のモンスターも流すことで、スキルの起動条件を満たし辛くなるため、月の書などの弱い妨害の通りが良くなります。
チアガールスタートの場合後攻側はビュートで罠を踏むことができないため、ムーンなどによる一点読みを通さない限りは直撃を避けることは困難です。
またもう1つはダークフルードなどの対象耐性系のロックへの解答です。
ほとんどの盤面はホープレイランサーで対応が可能ですが、一部個別にカードで対処が必要な事例があります。
その最たる例がダークフルードの「サイバースマジシャン+ハニーポッド+墓地リフレッシュ」の完全耐性盤面です。
これが成立すると墓地リフレッシュでホープレイランサーをやりすごしつつ、返しに完全耐性を維持したままファイアウォールドラゴンに向かうことでホープレイランサーを除去しワンキルされます。
ただしダークフルード側のこの展開は光天使側の動きを妨害できませんから、スローネやチアガールのドローでデッキを掘り解答を探す形で対応するのが狙いです。
以上2点ですが、つり天井自体はやはりピーキーなカードです。
あくまで伏せの中につり天井が混ざっていることが理想で、複数枚の採用は被ると事故を起こしたり伏せが読まれる原因になりますし、リスクが高いとして1枚の採用に留めています。
更に言えば閃刀姫に対して全く有効でないため、引きすぎるとほぼ間違いなくつり天井の浮きが原因で負けます。(そういう意味では光天使と閃刀姫は共生関係にあったと言えます)
《死者蘇生》
WCS2024 in seattle 最強の1枚。引いたら勝ちです。
初期のリミット1の枠は狡猾やフレシアも候補にあがりましたが、蘇生がテンプレ化し始めた辺りから露骨に他のデッキに対しての勝率が跳ね上がりました。
妨害の貫通だけでなく、スキルでセプターにアクセスし再利用することで先攻時の弱ハンドを強ハンドに変えやすく、あらゆる場面で最高のパフォーマンスを発揮します。
エクストラ
《No.102 光天使グローリアス・ヘイロー》
《フェアリー・チア・ガール》
《深淵に潜む者》
《星輝士 デルタテロス》
ここまでは固定枠という認識です。
こうして見ると固定枠が少ないようには見えますが、RUM絡みのギミックが大幅に枠を食うため、どのNoを採用するかでおおよそのエクストラの構成が決まります。大まかに分けて「枠がコンパクトで対応幅が広いノーブルデーモン」と「枠は食うものの低い要求値で火力が出せるライオホープレイ」の二択です。
今回はエクストラを用いて対応幅を広げたかったため、自由枠が多いノーブルデーモンを採用しています。
《FA-ホープ・レイ・ランサー》
スキルでバリアンズフォースを獲得できるため、実質ノーコストで出せるエクシーズ体としては破格の性能です。OCGでも現役のカードのようですが、当然リンクスでも汎用エクシーズとして一軍入りです。
ワンキルの押し込みだけでなく、効果無効をばら撒いて脅威を取り除いたり、あらゆる用途で活躍します。
《代行者の近衛 ムーン》
主な用途としてはセプスロが絡んだ際に月の書×2による詰み回避と
対焔聖騎士のグラール+カリバーンの突破です。
前者はセプターを徹底して狙われることでスローネが邪魔になり、そのターンの動きが止まることを回避しつつ伏せを踏むのが狙いです。
ただしこの状況はセプスロでドローできている分と壁がある分でどうにかターンをやりすごしやすく、同じ状況が起こる頻度に対して必ずしも重要度が高いとは言えません。
明確に必要になるのは対焔聖騎士におけるグラールへの解答となります。
グラール単騎では月の書1枚で簡単に解決されてしまうため、焔聖騎士側は可能な限りカリバーンも添えて完封を狙ってきます。
グラールの制圧力は非常に高く、グラール下での展開はセプスロが揃うかウイング絡みの2つに絞られますが、それだけではシャルルにセプターが割られて詰みます。そこでムーンを採用している場合、残ったスローネでグラールを破壊できるため、スキルを使用し展開を継続することが可能です。
【シャーク】
メインギミックが戦闘破壊耐性+効果破壊耐性+深淵という複数の足切り要素を備えており、Tier下位のデッキに対して異常に強い性質を持っています。
スキルで生えてくるブラックレイランサーも強力で、消費無しで1妨害を踏みそのままホープレイランサーになれるので安定した前面の突破力も強みです。
《強制脱出装置》
光天使+閃刀姫環境にマッチしている罠とは言えませんが、本来閃刀姫対面において無用となるこのカードも深淵と併せることで1:1交換が可能な罠として機能します。ここが大捕り物ではウィドウアンカーやアフターバーナーで盗り返されるか、そもそも発動する機会すら与えてもらえないため、他のリミット3罠よりも優秀です。
またシャーク自体がそこまで長期戦が得意なデッキではないため、多少美味しくない打ち方を強要されたとしても、速やかにビートダウンを完遂したいこのデッキの目的と用途が合致しています。
《つり天井》
用途は概ね光天使の項で説明した通りですが、シャークでこのカードを扱う場合のメリットがいくつか存在します。
まず前面に効果破壊耐性を付与するのでほぼノーリスクでの発動が可能です。
つり天井を意識した小振りな動きはフレシアがシャットアウトするため、メインギミックだけでこのカードの直撃を回避することは困難です。
またスキルでブラフとして扱えるカードを獲得できるため、ぶっぱサイクにリスクを与えやすいほか、動いていない1伏せがブラフなのかつり天井なのかの判断がし辛い点もこのカードのパワーを押し上げています。
《トロイメア・フェニックス》
一見只の汎用エクストラですが明確に必要なシチュエーションが存在し、主に対光天使の後攻で使用します。
光天使側が月の書+ヴェーラーを構え方をしている場合、墓地ライトハンドシャーク→レフトハンドシャークの展開に対してはレフトのレベル変動効果にヴェーラーを投げ、次に出てきたモンスターに月の書を打ちこむことで盤面を埋めるのがセオリーです。
ところがフェニックスが入っていると、フェニックスで残った月の書を剥がしブラックレイランサーでグローリアスヘイローの効果を無効、ホープレイランサーをそのまま乗せてモンスターを追加しアクアジェットを発動することでグローリアスヘイロースローネ+月の書+ヴェーラーを貫通してキルになります。
【閃刀姫】
閃刀姫自体は前環境から存在するデッキではありますが、スキルでエンゲージ2枚や閃刀姫リンクを追加し、デッキ枚数22枚以上+エンゲージ2枚+ライフ4000+シズク以外1枚という、それなりにバランス調整されているが故にそこそこの立ち位置をキープしているぐらいのデッキでした。
ところが本戦前にエンゲージ3枚と他の閃刀姫リンクが本実装されたことや相性の良いスキルが実装されたことが追い風になり、デッキ枚数20枚+エンゲージ3枚+ライフ5500+カガリ以外複数枚採用可能+ハヤテの打点が2300というデッキが爆誕しました。
ウィドウアンカーを絡めたワンキル、ハヤテによる2キル、マルチロールによるロングゲームとあらゆるレンジで戦うことが可能です。
このデッキもシャークと同じくTier下位のデッキに対して強く、その上不利なマッチアップも覆すだけのデッキパワーも有しています。
調整段階ではあしゅ君の光天使にかなり負けて一瞬候補から外れかけていたのですが、あれこれ試した結果構築の改良とともに勝率が改善したため、閃刀姫以上の選択肢が無いとわかり採用しました。
《ワイトプリンセス》
先攻の防御の要求値を下げるため1枚採用しています。
それなりにハンドに余裕があり一通りエンゲージを回した際、どれだけ回しても魔法罠ゾーンの関係で3アンカー+3イーグル+マルチロール以上の妨害が敷けずドローを重ねる旨味が少ない点が気になりました。
この点は環境次第ですが、少なくともこの環境においては不安が残ると感じたため、手札で持てる防御手段をデッキに用意したほうが良いと考えました。これは閃刀姫に限った話ではないのですが、最近のリンクスのデッキはアドを取りすぎるがあまり魔法罠ゾーンが埋まってしまうので手札誘発を第四の魔法罠ゾーンにしがちです。
初ターンを耐えてしまえばエンゲージが間に合うのでワイトプリンセスが原因で起こす事故はそこまでありませんし、他の手札誘発と比較して召喚できる1600打点は非常に優秀で、自身の効果で退場でき閃刀魔法の発動を阻害しないなど噛み合っている点も多いです。
ダークフルードに対して有効でないのは気になる点ですが、ダークフルード相手の先攻を耐えようとすると手札誘発ではどうにもならず、更に使い勝手の悪いカードを探さなければいけなくなるため割り切っています。
ニンギルス採用・ベクタードブラスト不採用に至る経緯
本来ニンギルスの枠はユニコーンが一般的でしたが、試してみて全く必要性を感じなかったため入れ替え先を探していました。
対象に取れるカードは閃刀姫の基本ギミックでほぼ対応できるため、そもそも閃刀リンク以外のリンクを使用する機会がまずありません。その上、除去できないカードの大半は無視してハヤテで直接攻撃を2回入れれば事足りる状況がほとんどです。
そこで閃刀姫のメインギミックで対応できないかつ早急に解決が求められるケースを探していたところ、ダークフルードとの対面調整を行った際、「ウィキッドマジシャン+ハニーボット+サイバースマジシャン」の盤面を崩す為にベクタードブラストとニンギルスの必要性が生じ採用を決めました。
ニンギルスを採用したことでエクストラから闇属性がいなくなったため、渋々フェニックスをブルートエンフォーサーに変更しリンクダークレイズの条件を満たしています。
本来はリンク・アースレイズで運用していたのですが、通常であればリンク・ダークレイズにしない理由がない以上、見る人が見れば5デッキの内訳とエクストラの内訳まで看過されてしまう恐れがあったからです。
結局ベクタードブラストの不採用に至った経緯としては、平行してダークフルードの練習を進めていく中で、エルフェーズとサイバネットリフレッシュを用いた誘発貫通+最終盤面の強化はデッキに必須の要素であり、そもそもウィキッドマジシャンの枠の捻出が現実的でないと結論付けたからです。
これによりベクタードブラストは仮想敵を失ってしまいました。除去札ではなく墓地に素早く魔法を溜める用途として残す選択肢も検討しましたが、同時期に見つけたオートクレールに枠を譲る形で不採用を決めました。
《『焔聖剣-オートクレール』》
閃刀姫屈指の猿カードです。
閃刀姫の猛攻を受け切る手段としてこのゲームは1枚で完封できるカードがほぼ無いに等しいので、対象耐性や裏側守備で盤面を固めて閃刀姫側の要求値を少しでも引き上げる方法が主流です。
特別な札を用いずとも月の書などで自分のモンスターを裏にしてうまくアンカー等をやり過ごそうとしてくる相手と当たると更に触らないといけない箇所や必要な札が増えます。盤面を返せたとしてもそこからキルにまでこぎ着けようとするとそれなりのハンドが要求されるため、それならもう無視して飛び越えてしまおうという狙いです。
オートクレールという要素が存在することでキルの要求値が一気に下がりやすく、本来3アンカーや3ジャミングの適用に必要な魔法を溜める過程をすっ飛ばすため見た目以上に強いカードです。エンゲージがぶん回った際の終着点として優秀なほか、序盤で引いてもゲームプランを定めやすいという利点があります。
余談ですが、そもそもこのゲームはハヤテの直接攻撃を妨害するハードルがかなり高いです。
主流な妨害が月の書であるため、ハヤテの直接攻撃を妨害できる汎用カードがヴェーラーや大捕り物ぐらいしか存在せず、そもそも伏せの中にハヤテの攻撃を最初から止められるカードが無かったというケースも珍しくありません。
これは閃刀姫ミラーにおいても例外ではなく、イーグルブースター込みで全力で通しにきたハヤテの攻撃はまず止められません。
閃刀姫ミラーは本来持ち物検査的な要素が強く、「3アンカー+ロールを構えられるか?→3アンカー+ロールを対処できるか?→(以降繰り返し)」といった要求をクリアしながらお互いにハヤテの直接攻撃を入れ合い、最終的に先に3回ハヤテで殴った方が勝つゲームになりがちです。いうまでもなくこれは要求値がそれなりに高いので、そうなるまでにどちらかが振り落とされるパターンも多々ありますが、そこでオートクレールが活躍します。
先にハヤテで2回ダメージを入れることでゲーム展開が加速し1ターン早く王手をかけることができるため、残った全てのリソースをもう1度ハヤテのアタックを通すことに注げば良くなり、エンゲージの枚数差を埋めるプランとして非常に有効です。
【ダークフルード】
禁じられた一滴や壊獣1枚で盤面が瓦解するなどピンポイントなメタに対する脆さはあるものの、全対面先攻は耐性+モンスター効果無効で完封、
後攻は手数でゴリ押して貫通する押し付け能力の高さが魅力です。
位置付け的には光天使と閃刀姫にやや劣る認識ですが、上位デッキも喰えるポテンシャルがある点でこのデッキを高く評価しています。
初動率も9割近くあり上で挙げた条件を満たしていますが、選出に関してはかなりギリギリまで迷っていました。
その主な理由は使用難易度の高さです。
先攻展開の主目的であるダークフルードを立てるだけならそこまで難しいデッキではありません。展開に必要な条件(☆2が絡んでいるかなど)さえ把握していれば大概は手を動かしている内にダークフルードに辿り着けます。
このデッキの難易度が高い要因として最も大きい点は、モンスターゾーンが狭い故の展開の融通の効かなさと制限時間の少なさだと考えています。
相手のデッキやプレイヤーの強さが上がってくると、どうしても手札に後続や盤面に+αを要求されるため、展開の難易度が跳ね上がります。
選択肢が多く取れるハンドでは、スタートを間違えると展開が破綻しかねません。加えて持ち時間のほとんどを操作時間に持っていかれるので悩める時間がほとんど存在せず、見落としや破綻が無いか確認していると時間が無くなります。
またなんとか1ターン目2ターン目を終えたとしても3ターン目に展開し直す時間が絶対に足りなくなるので、余裕を持って詰めのターンを迎える必要があります。
当然緊張から来るミスを懸念し持ち込む不安はありましたが、それを踏まえて準備をしたし、逆にこういう大舞台で難しいデッキを上手く回せたら絶対に気持ちいいと思ったのでダークフルードに決めました。
幸いだったのは構築をほぼ変える余地が無かったので、デッキ提出から出国までの4、5日間に展開を詰め込む期間があったことです。
普段はしないのですが、紙でカードを準備して現地のホテルや待機時間でも実際のカードを触って入念に動きを確認しました。
少なくとも持ち込んだことを後悔するようなレベルのミスは無かったと思います。
《ファイアウォール・ファントム》
ウィッチ前に墓地にリフレッシュを配置することでヴェーラーの貫通を狙います。誘発のケアがそのまま盤面の強度を上げることに繋がるので、リンク値が余る場合はほぼファントムを経由します。
リフレッシュ以外を手札に加えるパターンもいくつかあります。
・リチューアルを加える場合
ハニボマジシャンダークフルードを狙うのに必要なカードが「展開に必要なリンク値+サイバースマジシャンを儀式召喚するためのカード」なので、ウィッチだけで集め切れない2枚目の儀式魔法に触るために使用します。
・クロスワイプを加える場合
相手ターンに妨害として使用することもありますが、つり天井のケアとして使うことが多いです。ハニボマジシャンのロックが決まった次のターンのドローフェイズに優先権でウィッチをリリースしクロスワイプを発動することで場のモンスターを4体以下に減らしつり天井の回避を狙えます。
・ミラーの小ネタ
ダークフルードというデッキは攻撃ロック+対象耐性という固め方をされると解答がありません。実はラーの翼神竜デッキに球体形を出されるだけで突破できずに詰んだりします。
ダークフルードミラーもサイバースマジシャン×2で簡単に詰みます。後攻側はロールバックが配布される分ロックに向かう要求値がかなり低く、次元の歪みを引いた時点で最低でも引き分けには持ち込めます。
こうなると展開に札を使ってしまった先攻側が不利に思えますが、ここでデッキ枚数を回復させる小ネタがあります。
どういうものかというと、ファントムをDDRで帰還させてアドバンスセットなりリンク召喚で墓地に送り直すことで数枚デッキ枚数を盛ることができます。これをお互いに徹底すると確実に引き分けになります。
《転生炎獣の聖域》
用途は完全に2つで、手札コストの確保とディフェンサーへの効果無効を貫通するためです。
上述したファントムでサーチしたいサイバネット魔法罠の代わりに聖域を捨てることで無料でクロスワイプが手に入るので重宝します。
元々動くためにサイバネットマイニングの手札コストが必要なので素引きの浮きは問題になり辛いです。
【先史遺産】
このデッキに関してはデッキ提出直前に使用を決め、構築も完全にコピーだったのであまり書くことがありません。5デッキ目を絞り切れず困った段階で、調整メンバーが回しているのを見て悪くなさそうだったため使用を決めました。
このデッキの立ち位置として、まず1つはシャークにかなり相性が良いです。
実はシャークは守備2600以上のモンスターの突破が困難で、その上アカンバロの耐性も加わると脱出のような解答に頼る必要があります。
ここまでの段階でデッキ選択に頭を悩ませていた要因の一つとして、シャークに勝ち越せる第4デッキ第5デッキにあたるデッキが居なかったことがあったので非常に魅力的でした。
懸念点として絶望的に閃刀姫と相性が悪いのですが、そもそもこの段階で閃刀姫にも勝てるという要件を満たせるデッキが幻魔ぐらいしか残っていなかったのでこの部分は妥協せざるを得ないという判断になりました。
反省点があるとすればやはりこのデッキだけ細かいミスが多かったことです。そこまで複雑なデッキではないと判断したのも採用を後押しした部分はありますが、いざ蓋を開けてみるとやはり練習不足だったと痛感します。
使用者が少ないデッキであるという認識を持っていたため、極力人の目に触れないようにしていたのがあまりよくありませんでした。特に後半はダークフルードにかかりきりだったため実戦練習を疎かにしていたのが反省点です。
採用しなかったデッキ
【焔聖騎士フルール】
焔聖騎士です。
構築は捨てた時点のものですが、候補としてはかなり上の方で6番目辺りに居たと思います。
どのモンスターもシャルルになれるので初動率自体は限りなく100%に近いのですが、初動率=勝率では無い典型的なデッキだと考えています。シャルル単騎は穴が多く、展開が通ったとしてもまず負けに直結します。これは事故とほとんど変わらず、今回挙げた安定とは少し違うものです。
2枚以上の組み合わせでようやく納得できる先攻展開になりますが、シャルルに耐性を付与するかフェニックスギアフリードが横に立つか選択できる程度です。決して弱い盤面ではないのですが、手札が噛み合ってそのままあっさり突破されることもあり、先攻展開の根幹を受け身な要素に強く依存しており、特定の〇〇が無いことをお祈りする要素が強いと感じたのがこのデッキの評価を下げた理由です。
一方で後攻時のサージュのパワーは唯一死者蘇生に並ぶカードパワーを有しており、このデッキを使う理由になり得る要素です。
これは焔聖騎士というよりは革命の時花というスキル自体が持つ強みですが、召喚権を使わずサージュ登場→ディンギルス登場の流れは光天使であっても受け切ることは困難です。
構築面に関して言えば、細部に改善の余地はあったと思っています。
しかしデッキ自体の課題が構築で改善しないと感じたため、構築に手を付ける前に捨てる形になりました。
【シャドール】
先攻さえ取れば全対面に勝ち切れるポテンシャルがあり、深淵を割り切ったデッキを扱う場合シャドールが一番強いと考えています。本戦を見据えて早い段階から触っていたこともあり、プレイングという観点で見れば本戦で使用した5デッキよりも慣れているかもしれません。
ただしシャドールを選出する上で問題となったのは以下の3点です。
環境に無視できないレベルの不利対面が多く存在し立ち位置が悪い
他のデッキと比較すると安定感で劣るため起用に一発勝負故の怖さがある
エフェクトヴェーラーの採用が光天使と被る
実際に本番でもシャドールはほとんど居なかったので全員同様の課題に直面し候補から外したのではないでしょうか。
持ち込む大前提として必要な要素はミスをしないことですから、期日までにデッキが固まらなかった場合慣れているシャドールを選択することも視野に入れていましたが、今回はどうにもならないレベルで立ち位置が悪いと感じていたため、早い段階で選択肢から外しました。
【三幻魔】
このデッキを選択しなかった理由として挙げられるのは「プレイヤー側の技術でどうにもならない部分が多すぎるから」です。
具体的に掘り下げると「妨害を構えられるかが不確定」「招来神が効果無効に弱すぎる」の2点です。
幻魔というデッキは、初動とは別に失楽園の2ドローで妨害を引き込む必要があり、かつてのハーピィを彷彿とさせます。
先攻で動けたが妨害が引けず幻魔が棒立ちしてターンエンドという光景もそこまで珍しいものではありません。特に今期は光天使が失楽園の耐性を全く苦にしないため、ノーガードエンドが起きてしまうと確実に負けに直結します。幻魔の構築を進める上でこの部分にはかなり気を使いましたが、この手の事故は経験上劇的な改善は難しく、起こる時は起こるのでそういうものだと割り切るしかありません。厳密に言えば光天使と同様のデッキタイプではありますが、幻魔と比較してドローできる枚数が多く採用枚数も多いため光天使側は致命的な問題とは判断しませんした。
2つ目は幻魔の動きの大半は招来神に依存しており、ヴェーラー1枚で簡単に動きが止まります。また、アルミラージがプールに存在しないためどのようなハンドであっても貫通が困難です。
正確には召喚神でスタートすれば貫通も可能ですが、招来神のサポート無しで必要札を揃える必要がある上、暴言の発動コストを用意できないことから現実的なプランであるとは言えません。
特に対光天使はヴェーラーを引かれている確率が高く、ヴェーラーを避けるためのカードを引くか招来神無しで初動を揃える必要があり、全体的な要求値がかなり高いです。しかもヴェーラーを避ける用の禁じられた一滴は光天使に対して通常運用しようとすると全く役に立たないため、「先攻では暴言」「後攻では一滴」というかなり都合の良い引きが必要になります。
また幻魔というとペンテスタッグ+蹂躙拳の派手な後攻ワンキルが印象的ですが、結局のところ妨害に耐性があるのが三幻魔のみですから、守備で盤面を固めてくる対面に対してはペンテスタッグや招来神を通す必要があり、後攻性能がそこまで高いとは言えません。
調整段階ではこの幻魔以外の要素が妨害に弱いという問題点が浮き彫りになり敗北を重ねました。最適解を取れば勝てたかもしれない試合は勿論あったのですが、プレイ面においてとにかく繊細な部分が多く、一手ミスすると妨害が踏み切れず詰むという事象が頻発しました。
自分はこれを単にプレイが難しいデッキではなく弱いからプレイを要求されているデッキだと感じたため、幻魔の評価を大きく下げました。
ただ「効果無効に弱すぎる」という点に関してはNegative1がこれを革命的なカードで解決していて
受け継ぎし魂を採用することで先攻時に機能しないという一滴の問題を解決しつつ、後攻時はヴェーラーを回避するためのカードとして機能させています。
現地でこのカードの採用を知った時非常に感銘を受けました。もしこのプラン知っていれば幻魔が候補として再度浮上した可能性はあります。
とはいえ最終的に切った理由としては「閃刀姫に意外と負ける」という点です。
その大きな要因としては暴言という閃刀姫に対して全く役に立たないカードを採用してしまっているためです。
無抵抗で耐え切れるほど閃刀姫は弱くないので、閃刀姫相手に暴言を開かなければ盤面を滅茶苦茶にされるが、暴言を開いてしまうとそれはそれで今度はこっちが相手のハヤテを突破できなくなり2回直接攻撃をくらって負けてしまうゲームが起こります。
閃刀姫側の採用札次第ではベクタードブラストの運ゲーでラビエルを落とされたりワイトプリンセスで耐えられて負けというゲームもありますし、実際に世界大会でも何度か起こっています。
【破械】
2枚初動でありながら基本1,2妨害しか構えられず、他のデッキと比較して上振れ要素を持ち合わせていないデッキパワーの低さが目立ちます。
光天使やシャーク対面は先攻後攻問わず深淵が激刺さりする上に、ダークフルード対面はロールバックからファイアウォールドラゴン入場でラギアがリンクマーカーを提供してしまい全ての妨害を失います。
【ヴァレット】
WCS予選では代行天使と共に厳しい規制が入ると予想していたため触るのを後回しにしていました。調整メンバー達の感触が良ければ練習しようかなぐらいの気持ちでしたが、いまいち良さげな報告があがりませんでした。
実際に対面しても全く負けなかったので選択肢から省きましたが、このデッキに関しては採用すべきだったかどうかは今でもよくわかっていません。
総括
世界大会は今年で2回目ですが(KCGTは世界大会ではないと考えているので、数に含みません)これまでの反省点を活かし今年はベストを尽くせたという感覚があります。
3年前の反省文に友達を増やすことを目標にしますなんて書いてたのですが取り組み方自体に改善はできたなと。友達が増えた分別の友達が引退してるので実際はプラマイゼロぐらいの感覚ですが。
最後は手ひどく運に見放される形にはなりましたが、それまでの試合で自分に運が味方しなかったかというとそんなことは無く、むしろいつもよりも運が良い方だったとは感じます。
その上で勝ちの中に自分が想定した通りの勝ちがいくつもあり、これまでで一番の仕上がりを感じたのも事実ですし、それだけにもっと勝ちたかったなという気持ちが強いです。
世界大会への出場や上位入賞が自分の目標としてあったので1つずつ達成できているのは感慨深いです。リンクスの終わりと自分の体力の限界どっちが先に来るんだろう?とふと考えるときが来ますが、あと1回ぐらいは行って綺麗に終わりたいですね。ただ来年はゴウヨクがMDで自力抜けして招聘してくれることを期待してます。
あとKCGTも含めると出た大会で3回連続トラブルとバグの被害を受けてるので良い加減何事も無く大会を終えたいです。デジタルの恩恵皆無。
公開が遅れ需要も薄い記事でしたが、ここまで読んで頂きありがとうございました。
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