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水理学の教科書・参考書おすすめ5選


1.はじめに

 水理学のテスト対策や実験レポート作成,研究,趣味としての勉強等において優良な教科書・参考書,参考文献は必須である.そこで本記事では河川工学を学ぶ学部生である筆者が,独断で選ぶおすすめの水理学の書籍を5つ紹介する.

2.水理学のおすすめ書籍5選

 初学者が手を出しやすい順に紹介する.(おすすめ順ではない)

(1)有田正光:水理学の基礎

有田正光:水理学の基礎,東京電機大学出版(2006)

 高専の本科,大学の学部における水理学の座学における重要ポイントを,必要最低限に絞ってまとめられている.またコンパクトで持ち運びしやすい.イラストも多く,初学者に最適である.一方でそれぞれの要点をつなぐ文章が少ないため,知識を体系化しにくい印象を受ける.

(2)水工学委員会 水理実験指導書改訂小委員会:水理実験解説書 2015年度版

水工学委員会 水理実験指導書改訂小委員会:水理実験解説書 2015年度版,土木学会(2015)

 水理実験の解説のみが記載された書籍は本書以外に存在しないと思われる.水理実験の授業資料の補足に最適.A4サイズで薄い本書は,実験の最中にも閲覧しやすい.初学者にもわかりやすく書かれており,きっと水理現象の面白さに気付いてしまうはず.
 筆者は本書で,条件さえ整えればレイノルズ数20000の層流を再現可能であることを知った.台所のシンクで常流・射流と跳水を観察しようのくだりは最高.

(3)禰津家久,冨永晃宏:水理学

禰津家久,冨永晃宏:水理学,朝倉書店(2000)

 (1)と比較し要点をつなぐ文章が充実している.筆者は(1)を読んでも釈然としない部分(概念の定性的なイメージ,とか)を本書の丁寧な解説文ですっきり腹落ちさせた経験がある.筆者の元指導教員は本書を持ち運べる水理公式集(5)と表現していた.

(4)日野幹雄:明解水理学

日野幹雄:明解水理学,丸善出版(1983)

https://www.maruzen-publishing.co.jp/item/b302663.html

 2022年時点で第34刷まで発行されているロングセラー.本書を読んだことのない水理学系研究者は存在しない(偏見),定番の一冊.筆者がこれまでに出会った多くの水理学の授業担当教員は,参考書として本書を推薦していた.充実のトピックがコンパクトにまとまっている.しかし初学者にはやや難解かもしれない.

(5)水工学委員会 水理公式集編集小委員会:水理公式集 2018年版

水工学委員会 水理公式集編集小委員会:水理公式集 2018年版,土木学会(2019)

 水理学系の研究者・実務者にとっての辞書.927ページの超大ボリュームと引き換えに,(発行時点で)最新かつ幅広い知見がこの一冊に詰まっている.タイトルに水理とあるが,水の物理的要素の他に化学や生態学に関する内容も豊富である.タイトルに公式集とあるが,公式だけが羅列されているわけではなく解説文が丁寧に掲載されている.
 2018年版の出版以前には平成11年版が出版されているなど,低頻度で改訂されている.過去版と最新版を比較することで水理学に関わる知見の変遷をたどるのも楽しい.
 座学や実験で登場した公式のパラメーターの確認などに便利かも.
 土木学会の会員だと少し安く購入できる.一家に一冊は置いておくべき.

3.おわりに

 ここまでおすすめの水理学の教科書・参考書を紹介した.
 大学の授業ではその大学の教員が執筆した教科書を使用する場合があり,期末試験や編入試験,院試験ではその教科書から出題されるケースが多いと思われる.そのため指定された教科書しか読んだことのない学生が多くいるはずである.しかしその教科書がよいものとは限らない.実際に筆者が所属する大学で指定された水理学の教科書は,ムーディ図が載っていないなど非常に不適切な内容である.(ムーディ図のない水理学の教科書などカツ抜きのカツ丼のようなもの)
 複数の教科書に目を通しながら,自分にとって最適な一冊と出会うことが学問修得の近道である.

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