電験3種 2021年度 理論 問4 電磁誘導
コイルの近くで磁石を動かしたときの電磁誘導を求めます。
(前提1)電磁誘導とは?
電磁誘導とは,導体の周りで磁束を変化させたときに導体に電圧が発生する現象です(電圧が発生している場所が導線でつながってれば電流が流れます)
どんな形の導体でも発生しますが,効率よく電圧を発生させるため,導線をぐるぐる巻きにしたコイルの中の磁束を変化させることが多いです。
磁束を変化させるには,この問題のように磁石を近づけたり遠ざけたりするほか,別のコイル(電磁石)を近くに置いてその電磁石に流す電流を変化させることもあります。
(前提2)誘導起電力の大きさは?
電磁誘導によって発生する電圧を誘導起電力といいます。
コイルに発生する誘導起電力は,
E = -N × ΔΦ/Δt(E:誘導起電力 [V],N:コイルの巻数,ΔΦ:磁束の変化 [Wb],Δt:時間 [s])
で表されます。
つまり,コイルの巻数が多い(性能がいい)ほど,磁束の変化が速い(変化が大きくて,変化にかかる時間が短い)ほど,発生する電圧が高くなります。
式全体にマイナスがかかっているのは,誘導起電力によって流れる電流によって発生する磁束が,磁束の変化の反対の向きであることを表していますが,マイナスを気にせずに誘導起電力の大きさを求めて,向きはあとで考えるのがよいでしょう(向きの考え方は(ア)の解説で)
(ア)コイルに流れる電流の向き
電磁誘導でコイルに流れる電流の向きは,磁束の変化を妨げる向きです。
磁石をコイルに近づけることによりコイルの中の左向きの磁束が大きくなるので,コイルは磁石による磁束の変化を打ち消す右向きの磁束を作るように電流を流します。右ねじの法則で右手親指をコイルが作る磁束である右向きにすると,他4本の指は磁界の手前側で下向きとなるので,(ア)は②になります。
別な言い方をすると,磁石のN極が近づいてくるので,コイルは磁石の側にN極を作って磁石の動きを妨げます。コイルの右側にN極を作るときの電流の向きは,右手親指を右にした時の他4本の指の向きなので,やっぱり②になります。
(イ)鎖交磁束数の変化
コイルの鎖交磁束数とは,磁束がコイルをくぐる数です。コイルの巻数が200なので,磁束1本あたりコイルを200回くぐります。磁束が10 [mWb]増えるので,鎖交磁束数は,
10 [mWb] × 200 = 0.01 [Wb] × 200 = 2 [Wb]
なので,(イ)は2です。
([mWb]:ミリ ウェーバー,1[mWb]= 0.001[Wb])
(ウ)誘導起電力の大きさ
(前提2)の式に当てはめるだけです。
E = -N × ΔΦ/Δt = -200 × 0.01 / 0.5 = 4 [V}
(ウ)は4です。
というわけで答えは(4)です。