電験3種 2021年度 理論 問3 磁性体と磁気遮へい

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磁性体についての問題です。

(前提1)強磁性体とは

強磁性体というのは,ざっくり言うと鉄(ほかにはコバルト・ニッケルなど)のように磁石にくっつく物質です。このような物質は透磁率(電気回路でいう導電率)が高いという性質があります。そのため,磁束(電気回路でいう電流)は透磁率が低い外部の空間よりも透磁率が高い強磁性体の内部を通ります

(考え方と答え)

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歩きにくい(透磁率の低い)草ボーボーの野原(外部空間)を歩いてるときに,近くに歩きやすい(透磁率の高い)アスファルトの広場(強磁性体)があったらちょっ遠回りしてでもアスファルトを歩くじゃないですか。で,その広場の真ん中にも野原(中空部)があったら,小学生以外はわざわざ真ん中を通らないじゃないですか(注:磁束は小学生ではなく大人です)。すると中空部は磁束が通らない=外部の磁界の影響を受けなくなるわけです。

というわけで答えは,(4)です。

(蛇足1)静電遮へいとは?

外部の磁界の影響を及ばなくするのが磁気遮へいでした。外部の電界の影響を及ばなくする静電遮へいというのもあります。

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左の図は外部の電界を表しています(紫矢印)
真ん中の図のように電界の中に導体を置くと,電界により導体中の電子が移動し,電子が移動してきた側の表面に負の電荷,電子がいなくなった側の表面に正の電荷が現れます(これを静電誘導といいます)。これらの電荷により,導体内部に外部電界と逆向きの電界が発生します(緑矢印)
実際の電界は外部の電界と導体の電荷による電界を合成したものなので,導体内部では外部の電界と導体の電荷による電界が打ち消しあい,右の図のように中空部を含む導体内部は電界がない状態になります。これが静電遮へいです。

(蛇足2)静電遮へいと磁気遮へいの違い

静電遮へいは導体内の中空部に外部の電界の影響が及ばないこと,磁気遮へいは強磁性体内の中空部に外部の磁界の影響が及ばないことでした。中空部に電界・磁界がないのは似ていますが,静電遮へいでは中空部以外の導体内部も含めて電界がないのに対し,磁気遮へいでは中空部以外には磁界があります

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なぜこのような違いが生じるのかというと,電気にはマイナスだけの電荷を持って自由に動ける粒子(電子)がありますが,磁気にはNだけとかSだけの磁力を持つ粒子がないからです。

電気では,静電誘導により導体表面に電荷が現れると,外部のプラス電荷から出てきた電気力線は導体表面のマイナス電荷に入ってそこで終点になります。別の電気力線が導体表面のプラス電荷から出て外部のマイナス電荷に入ります。

一方磁気では,原子一つ一つが小さな磁石となっており,外部のN極から出た磁束が入ってくると原子のS極が磁束が入ってきた方向を向きます。S極だけの粒子ならそこで終点ですが,小さな磁石なのでS極の反対にはN極があり,そこからまた磁束が出ていきます。この磁束が隣の原子の向きを変え,さらにその隣の原子の向きを変え……という繰り返しで磁束の通りやすい道ができ,磁束の通りにくい中空部には磁束が通らないようになります。

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