電験3種 2021年度 理論 問5 ゼーベック効果
単に名前を知っているかどうかだけの意味のない問題です。
(ア)
温度差→電圧は,ゼーベック効果です。ペルチェ効果は電流→温度差です。
(イ)
温度差=熱によって発生する起電力なので熱起電力です。誘導起電力は,コイルに磁石を近づけたりとかで電磁誘導によって発生する起電力です。
(ウ)(エ)
温接点と冷接点だそうです。あえて考えるなら,高低だと温度なのか電圧なのかわからないってことぐらいでしょうか。
というわけで答えは⓵です。
(蛇足1)
本当に意味のない問題です。アマゾン川のポロロッカぐらいの豆知識でしかない問題です。
例えて言うなら,抵抗に電圧をかけるとき電圧を上げると電流が増えるということは本質ですが,その現象をオームの法則と呼ぼうがOhm's lawと呼ぼうが○△□現象と呼ぼうが物理現象には何の影響も与えないわけです。
(蛇足2)ゼーベック効果
せっかくなのでゼーベック効果について一応説明します。
導体の中には電子がたくさんあります。電圧をかけるとたくさんの電子が同じ方向に動いて電流が流れるのですが,実は電圧をかけなくても電子はそれぞれ動いています。そして,この電子の動きは,温度が高いほど活発になります。ただ,電子の動く方向がばらばらのため,全体としてみると温度が高くても低くても電流は流れません。
ここで一つの導体で場所によって温度差がある時を考えます。
温かいところでは電子は活発に動きます。活発に動いた電子の一部は,冷たいところに到達します。冷たいところでは動きが活発じゃなくなるので,到達した電子は冷たいところにとどまります。
こうして,温かいところの電子は少なくなり,冷たいところに電子がたまってきます。
電子は負の電荷を持つので,電子が少なくなった温かいところの電圧は高く,電子がたまった冷たいところの電圧は低くなり,この電圧の差を熱起電力と言います。
冷たいところに電子がたまってくると,移動しようとする電子とたまった電子が反発しあい,移動しずらくなってきます。温度差によって電子が温かいところから冷たいところに移動しようとする力と,冷たいところの電子のたまり具合によって移動を妨げようとする力の釣り合うところで落ち着きます。
そのため,ゼーベック効果による熱起電力は温度差に比例します。温度差1℃で何Vの電圧が発生するか(ゼーベック係数)は導体の種類によって異なります。
(蛇足3)熱電対
さらについでに,熱電対についても説明します。
さきほどのゼーベック効果を用いて温度を測定しようと思います。
単純に考えると,左図のように,ゼーベック効果で熱起電力⓵が発生している導体に電圧計をつないで電圧を測ればいいように思います。
しかし,この方法だと,電圧計につながっている導線にも温度差があるため,導線にも熱起電力②が発生し,補正しなければなりません。
どうせ補正するなら,右図のように,測定のために都合のいい(ゼーベック係数が小さくて補正が少なくて済むとか,高温に耐えられるとか)適当な導体にしてもいいわけです。この時,導線は両端とも同じ温度なので熱起電力は発生しません。
このように2種類の導体の先端を接触させ,接触した部分の温度と基準温度の温度差を電圧の形で測定できるようにしたものを熱電対といいます。
たとえば,熱電対の2つの導体のゼーベック係数がそれぞれ1[mV/K]と0.1[mV/K](つまり温度差1℃につき1mVと0.1mVの電圧が発生する)のとき,電圧計の読みが90mVだったとすると,測定対象は基準温度より100℃高い(熱起電力は100mVと10mVで差し引き90mV)ということになります。