電験3種 2021年度 理論 問8 交流回路
抵抗に交流電圧をかけたときの電流を求める問題です。正弦波の式とグラフの関係がわかれば解けます。
(前提)正弦波の式とグラフ
正弦波の式 A×sin(Bθ-C)とグラフの関係は下図のようになります。
式全体にかかる係数Aは,グラフの縦軸方向の高さ(振幅)を決めます。
sinθだけなら-1から+1の間で振動するので,Aをかければ-Aから+Aの間で振動するようになります。
θにかかる係数Bは,グラフの横軸方向の幅(周期)を決めます。
sinθはθが2π[rad]増えるごとに同じ値になる,周期2πの周期関数です。sinBθはBθが2π[rad]増えるごとに同じ値になるので,周期はBθ=2πよりθ=2π/Bとなります。
最後のCは、グラフが右にどれだけズレるかを決めます。この項がないsinθは,θ=0の点で0から右上がりに増えていくグラフになります。sin(θ-C)は,θ=Cの時にsinの中が0になるので、θ=Cの点で0から右上がりに増えていき,グラフ全体が右にCズレたことになります。
(式全体の係数)
電圧が-100√2から+100√2の間で振動するので,オームの法則により抵抗の大きさ5Ωで割ると,電流は-20√2から+20√2の間で振動するのが正解なので,係数は20√2です。
他の選択肢にある20は,電流の実効値(最大値÷√2=実効値)のことだと思いますが,式の係数と直接対応するのは最大値であって実効値ではありません。もし実効値で考えるなら,電圧のグラフから電圧の実効値は100√2÷√2=100[V]で,オームの法則により電流の実効値は100÷5=20[A],式の係数は最大値に直して20×√2=20√2になります。
(tの係数)
問題文に電源周波数は50Hzとあるので、周期は1/50[s]となります。
時間tについての式なので(前提)のθをtに置き換えて,周期2π/B=1/50よりB=100πになります。
(最後の項)
最後の項はグラフの横軸方向のズレですが,問題の回路はコイルやコンデンサのない抵抗だけの回路なので,電圧と電流の位相はズレません。したがって,電流のグラフも図2の電圧のグラフと同様,+π/4[rad]の点で0から右上がりとなり,(前提)のCは+π/4,(前提)の式に初めからマイナスがついているので,最後の項は-π/4になります。
(蛇足1)グラフの軸の表し方
グラフの軸は、普通は1文字で表されますが、問題の図2ではωtという2文字になっています。あまり見慣れない書き方かもしれませんが、見方は変わりません。
左図では、x=1の時y=0、x=3の時y=4ということを表していますが、右図ではωt=π/4の時v=0、ωt=3π/4の時v=100√2です。式を変形するとt=π / 4ωの時v=0、t=3π / 4ωの時v=100√2ということです。
ここで角周波数ω [rad/s]=2πfで、問題文よりf [Hz]=50なので、ω=100πです。
ということは,電圧が0になる点に注目すると,
ωt= π/4 ⇒ t= π/4ω ⇒ t=1/400
ωt=5π/4 ⇒ t=5π/4ω ⇒ t=5/400
ωt=9π/4 ⇒ t=9π/4ω ⇒ t=9/400
となります。これを利用して横軸を角度ωt[rad]にした緑色の代わりに,黄色の時間t[s]で表すことができます。