電験3種 2021年度 理論 問11 半導体

半導体の性質についての問題です。

(1)

ベースが(n型やp型にするための不純物は考慮しません)1種類の元素でできていれば単元素半導体複数の元素でできていれば化合物半導体です。インジウムリン(InP)はインジウム(In)とリン(P)の化合物,シリコン(Si)は単元素なので,(1)は誤りです。

(2)

半導体の中を自由に動いて電流を運ぶものをキャリアといいます。n型半導体では電子,p型半導体では正孔(ホール)がキャリアとなります。
半導体内にキャリア濃度の濃い部分と薄い部分があるとき,濃い部分から薄い部分にキャリアが拡散して,キャリア濃度が均一になろうとします。キャリアが動くということは電流が流れるということです。
キャリア濃度の差が大きければその分たくさんのキャリアが動くので,(2)は正しいです。

(3)

たとえば純粋なシリコンからなる真性半導体では,シリコン(Si)の価電子(結合に使える電子)4個すべてが結合に使われています。このシリコンの結晶に価電子が5個あるアンチモン(Sb)を混入すると価電子が1個余って,余った価電子が半導体の中を自由に動けるキャリアとなります
したがって,不純物を加えるとキャリアの濃度が変わる(濃くなる)のは正しいです。しかし,自由に動けるキャリアが増えると電流を流しやすくなる(抵抗が下がる)ので,(3)は誤りです。

(4)

真性半導体ではすべての電子が結合に使われ,キャリアのない状態で安定しています。しかし,光や熱などのエネルギーを加えると,エネルギーを得た電子が結合から外れ,外れたところに正孔(ホール)が生じます。したがって(4)は誤りです。
ちなみに,この現象を使っているのが太陽電池です。

(5)

半導体に電界を加えて流れる電流はドリフト電流と呼ばれます。導体を流れる電流と同様,電界が大きいほどドリフト電流も大きくなります。したがって(5)は誤りです。
ちなみに温度が上がったとき,導体では金属原子の振動が増え電子の流れが妨げられるため抵抗が上がりますが,半導体ではキャリアが動きやすくなるため抵抗は下がります。


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