青色申告と事業的規模

確定申告を調べ始めたら、まず初めに多くの人が青色申告という単語に行き着くかと思います。
しかし、色々と調べてみても何だかよくわからない単語が出てきますので整理しましょう。

通常の申告(白色申告)と青色申告の違い

ちなみに青色申告でない通常の申告は白色申告と言われます。
通常の申告用紙が白色であったのに対し、青色申告の用紙が青色であることが由来だそうですが、こう書くとニワトリと卵のようなどっちが先問題な気もしますが気にしないことにしましょう。

白色申告と比較した青色申告のメリットは下記の点あたりかと思います。

・青色申告特別控除(Max65万円の特別控除)

青色申告特別控除には65万円・55万円・10万円の控除があります。
可能ならばMax65万円の控除を受けたいところですが、そのためには当然条件があります。

①55万円の特別控除は受けられるか?
(1)不動産所得または事業所得を生ずべき事業を営んでいること。
(2)取引を正規の簿記の原則により記帳していること。
(3)作成したB/S・P/Lを確定申告書に添付、控除の適用金額を記載、確定申告期限までに申告をすること。
の3要件を満たす場合、55万円の特別控除が適用できます。

なお、現金主義による経理の場合、(2)を満たさないこととされ55万円の特別控除が適用外となります。

②65万円の特別控除も受けられるか?
(1)上記①「55万円の特別控除」の要件に該当していること。
(2)次のいずれかに該当していること。
 イ 電子帳簿保存に対応していること。
 ロ 確定申告をその提出期限までにe-Taxにて行うこと。

③それ以外の方は
上記①および②の要件に該当しない青色申告者は10万円の特別控除となります。

・青色事業専従者給与の必要経費算入

配偶者その他の親族が事業に従事していて給与を支払っていても原則としてこの給与は必要経費になりません。
しかし、2つの特例があり要件を満たすことで必要経費として認められます。
・青色申告の場合⇒青色事業専従者給与の特例
・白色申告の場合⇒事業専従者控除の特例

2つを比べた場合、青色事業専従者給与の特例を使用した方が、より多くの控除を受けられる可能性が高いです。

なお、青色申告者の事業専従者として給与の支払を受ける人または白色申告者の事業専従者である人は、控除対象配偶者や扶養親族にはなれません。

・純損失の繰越or繰戻

青色申告の場合、事業所得などで赤字が生じた場合で純損失の金額が生じた際にその損失額を翌年以後3年間繰越し、各年分の所得金額から控除できます。
また、前年も青色申告をしている場合、その損失額を前年に繰戻し前年分の所得税の還付を受けることもできます。

・貸倒引当金の計上(事業所得のみ)

青色申告の場合、事業の遂行上生じた売掛金、貸付金などの貸金に対して貸倒引当金し、その繰入額を必要経費に算入できます。
計上額は期末貸金帳簿価額合計額の5.5パーセント以下です。
※金融業の場合は 3.3パーセント

・少額減価償却資産の特例あり

青色申告の場合、取得価額10万円以上30万円未満の減価償却資産について、一定の要件の下で合計額300万円に達するまで必要経費に算入できます。
※令和4年4月1日以降に取得した資産の場合、対象資産から「貸付けの用に供した資産」が除外されます。

そもそも青色申告者になるには

青色申告の適用を受けるためには当然手続きが必要です。
それが「青色申告承認申請書」の提出で、提出期限は「適用を受けたい年の3/15まで」or「開業から2カ月以内」です。

なお、これから事業を始める方であれば開業届の提出と同時に行っておくのが良いかと思います。

青色申告と事業的規模

さて、長々と書いてきてしまいましたが一番重要で判断に困る事項があります。それが、各事業を
【事業的規模】で営んでいるか否か?
という点で、事業を【事業的規模】で営んでいるか否かで、特別控除額等が変わってきてしまいます。

原則論的には、事業的規模の判定は「社会通念により行う」こととされており、簡単に翻訳しますと「その仕事で生計を立てているか否か」いうことになります。

事業的規模の判定-不動産所得の場合

不動産等の貸付けによる所得は不動産所得となります。
これが事業として(事業的規模で)行われているか否かで、所得金額の計算方法が異なります。

しかし、不動産所得の場合「その仕事で生計を立てているか否か」について実質的判断が難しいため形式基準があります。(俗にいう5棟10室基準
(1)貸間、アパート等については、貸与することのできる独立した室数がおおむね10室以上であること。
(2)独立家屋の貸付けについては、おおむね5棟以上であること。

事業的規模でない場合、上で述べた青色申告のメリットの内、
・青色申告特別控除→10万円へ
・純損失の繰越or繰戻→損失計上不可のため適用なし
・青色事業専従者給与又は白色の事業専従者控除→適用なし
となります。

事業的規模の判定-事業所得の場合

事業を事業的規模で行っているか否かで事業所得になるのか雑所得になるのかが変わってきます。
事業的規模でない場合、雑所得となりそもそも青色申告の対象外となりますので、上で述べたメリットすべてが対象外となります。

気になる判断基準は、所得税法に明記されておらず原則論に戻り「社会通念により行う」こととなります。

具体的な判定基準としては、
 独立性
 継続・反復性
 営利性・有償性

があるか否かを実質的に判断することとなります。
簡単に考えると「その仕事で生計を立てているか否か」となるので、サラリーマンの方の副業はなかなか事業所得としにくいなぁというのが現実となります。

最後に

長々となってしまいましたが、まとめますと、
①不動産所得・事業所得(・山林所得)がある方は青色申告を行った方が有利。(最低でも10万円の特別控除あり)
②不動産所得の事業規模判定は必ずやりましょう。
③事業所得の事業規模判定も必ずやりましょう。
④どうせやるなら正規の簿記の原則に基づいた記帳&電子申告で65万円の特別控除を受けましょう。

職業柄の営業トーク的な側面もありますが、適切な記帳を行うことは自分の軌跡を正確に把握し、次への計画を立てる上で意外と意味のある行いですので是非やってみてください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?