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膨らむAIへの期待と電力問題

2024年9月19日のNACK5『Good Luck! Morning!』内「エコノモーニング」では、「膨らむAIへの期待と電力問題」と題して、最近のAI関連ニュースから今後の展望を考えてみました。

で、本題に入る前にひとこと。じつは前回から、出演はスマホから電話回線でつなぐのではなく、パソコンからzoomを使いインターネットでつないで話をするようにしているのですが、今回はコーナー冒頭でこちらの音声が放送に流れず、ちょっとした放送事故になりました(汗)。もちろん以前にチェックを行っていましたし、30秒もしないうちにわたしの声が流れたので混乱はほぼなかったと思いますが、難しいものです。

本題です。自民党総裁選と立憲民主党の代表選では、エネルギー政策がひとつの論点になっています。再生可能エネルギーの開発にも力を入れつつ、原子力発電所をゼロにする社会をすぐに目指すのか、それとも新しく作るのは控えるけれども既にある原発は有効活用していくのか、あるいはむしろ積極的に原発を作ったり動かしたりしていくのか、というように、与野党の候補者の考え方にはけっこう幅があって注目されるところです。

そしてここで注目したいのは、河野太郎氏が「AIの普及によって電力需要が増加している」ということを理由に挙げて、原発に対する政策を転換したということです。

原発が要るのか要らないのかという議論の背景には、電力の需要が今後どうなるのかということがあります。そこで電力の需要が歴史的にどう変わってきたのかを確認してみましょう。日本の電力需要は、経済成長などを背景に長年一貫して増加を続けてきましたが、2007年をピークに、横ばいあるいは減少という傾向に変わってきていました。人口減少や東日本大震災をきっかけとした節電が進んだことが原因のようです。これが、原発をもう増やさなくていいんじゃないかという慎重論の根拠になってきました。

ところが、私たちの生活が以前よりさまざまなデジタルサービスに依存するようになってきたのに合わせて、情報を処理するサーバーを置くためのデータセンターが各地で建設されるようになってきました。関東地方では、千葉県の印西市というところにアマゾンやGoogleなど外資企業のデータセンターが集中していることが知られています。ほかには相模原市や多摩市などが知られていますし、さいたま市にも、今年に入ってから巨大なデータセンターが建設されたことがニュースになっています。

そこにさらに、生成AIなど人工知能の急速な進化と普及という波がやってきています。AIは非常に多くの電力を必要とするので、人口が減少していく中でもデータセンターによる電力需要は、今後は大幅に増えていくのではないかという予測が有力になってきています。ついでにいうと、電気自動車の普及も電力の需要を押し上げますし、徐々に浸透してきている仮想通貨なども莫大な電力を使用することが知られています。こうしたことを踏まえると、
近年は横ばいか減少傾向だった電力需要がふたたび増加傾向になるというのは確かだろうと思いますね。

こうした状況を踏まえて、慎重派だった河野太郎氏をはじめ、与野党で原発の活用に一定の理解を示す候補者が増えてきているようです。そうでないと電力不足を理由としてデータセンターが海外に移転してしまったり、AIに対する投資が日本から他の国に逃げてしまうといったことが懸念されるんですね。

この「AIに対する投資」ということでは、ここのところ期待が持てるニュースが続いているので、最後にそのお話もしたいと思います。

ところで「サカナAI」という会社はご存じでしょうか?サカナAIというのは、2023年7月に東京に設立されたばかり、設立1年ちょっとという会社です。しかしそんな新しい会社であるにも関わらず、この会社の評価額は10億ドルを超えているそうで、「ユニコーン」と呼ばれる非常に希少な急成長企業として急速に名前を知られてきています。

その理由は、この会社の創業者がいまの生成AIブームを作ってきたGoogleのAI研究者たちであるということがひとつ、そして彼らが、単独のAIによって問題を解決するのではなく、複数のAIが魚の群れのように集まって協力して問題を解決するというユニークなアプローチをとっているということにあるそうです。技術的なことは私もまだ深くは理解できていませんが、サカナAIは莫大な資金や巨大なデータセンター、莫大な電力を使わなくても効率的にAI開発をできる道を切りひらいていっているということのようです。

今月に入ってから、このサカナAIについて2件の大きなニュースがありました。1つは、世界トップの半導体メーカーであるエヌヴィディア(NVIDIA)など米国企業から200億円の資金調達をしたというニュースです。NVIDIAはサカナAIの大株主となり、今後は研究開発などで協業を進めていくことになりました。さらに、日本国内の企業からも合計100億円程度の資金を調達するというニュースが流れました。出資するのは3つのメガバンクや生命保険、証券会社、商社、IT、通信会社など10社です。今月だけで300億円を調達しているということになるわけで、期待の大きさを感じますね。

以上、今日は膨らむAIへの期待と電力問題についてお話ししました。AIの普及によって電力政策がどう変わっていくのか、また、新しいアプローチで効率的にAIを開発する企業が急成長していくのか、ひきつづき見守っていきたいと思います。

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