見出し画像

もうすぐマイナ保険証が本格始動

2024年11月21日(木)のNACK5『Good Luck! Morning!』内「エコノモーニング」では、こんなお話をしました。

今日は、「もうすぐマイナ保険証が本格始動」というお話をしたいと思います。

来月12月2日から、新規の健康保険証の発行がなくなり、マイナ保険証を基本とする仕組みがスタートしますね。今後は、病院や薬局の窓口では、基本的にマイナンバーカードを使って健康保険の資格確認を行うことになります。また、マイナンバーカードを使いたくない人は紙の「資格確認証」というものを使うことになります。

本題に入る前に、はじめに私の立場を明らかにさせてください。私は行政のデジタル化が研究テーマのひとつでして、デジタル庁のマイナンバー制度に関する会議の一員とし政府の議論に参加してきました。今も、総務省が設置した自治体のデジタル化に関する検討会の座長として、マイナンバーカードの活用の後押しをしています。自分が議論にかかわってきたということもありますので、私は基本的にはマイナンバーカードを使う仕組みを早くちゃんと確立させたいという立場です。ただ、その一方で私は推進派の中ではもっとも慎重派でありたいとも思っていまして、国が進めるんだから何でもOKしようというのではなく、安心できる仕組みがつくれるように、いろいろ注文を付けるということもやっています。そんな専門家のひとりとして、マイナンバーカードやマイナ保険証について、メリットだけでなく課題も含めて、わかりやすく解説をしていきますね。そういえば、私の前にこのコーナーを担当されていたクロサカタツヤさんも政府のお手伝いをよくされていて、国の動きなどを詳しく解説されていましたよね。私も、今後はそういった自分の専門的なお仕事の話を交えてお話ししていきたいと思います。

前置きが長くなりましたが、まずはマイナンバーカードの現状を確認してみましょう。最新のデータでは、マイナンバーカードの申請件数は1億枚を超えています。全人口に対するカードの保有率は75.7%、全国民の4分の3の人がマイナンバーカードを持っていることになります。そして、マイナンバーカードを持っている人の8割が健康保険証としての利用登録をしていますので、いまのところ国民の6割の人がマイナ保険証を使える状態にあるということになります。

私はすでに何回かマイナ保険証を病院で使ったことがありますが、顔認証をしたり何回か同意ボタンを押したりするところがまだ慣れなくてちょっとぎこちないなと感じています。

マイナ保険証については情報管理が不安だから反対だという方もいらっしゃって、使うかどうかは本人の意思次第ですが、情報管理がどうこういう前に、使いにくいものは使いたくありませんよね。少なくとも使う人にとっては圧倒的にわかりやすくて便利であってほしいものです。自動改札とか、ETCとか、銀行のATMといった社会インフラになっているデジタル機器は、非常ーーーにシンプルで便利で、ほとんどの人が何の問題もなく使えています。一方、スマートフォンはアプリの設定やアップデートなどがあって、誰もが直感的に使えるかというと、まだまだそうではありません。マイナ保険証の読み取り端末は、そんなに悪くないとは思いますが、なかなか顔が読み取れなかったとか、同意確認のわかりやすさといった点では、もう少し改善の余地ありますね。そこは、政府やメーカーさんに頑張ってほしいところです。

さて、マイナ保険証の使いやすさは大事ですねという話はここまでにしまして、そもそもあれは何のためにやってるのかといううことを確認したいと思います。

あれは、「オンライン資格確認」ということをしているんですね。もともと、病院などは診療報酬の請求をするために、毎月、レセプトと呼ばれる診療記録の明細書を審査支払機関というところに送っているのですが、そこで、このレセプトの情報は記号や番号が間違っていますよ、ですとか、その人は保険者のデータベースにいませんね、ですとか、その人は保険の資格が切れていますよ、といったことが発覚して、医療機関に差し戻される「返戻(へんれい)」ということが起きています。差し戻されると、情報を修正して再請求しなければいけませんので、医療機関には事務負担がかかります。
そのような中で、診察のたびに毎回データベースにアクセスして、本人の情報が正しいか、保険資格が有効か、本当にその本人かという確認をする仕組みが導入されました。これが「オンライン資格確認」です。この確認は従来の紙の保険証でも、これから使われる「資格確認書」でも行いますが、マイナ保険証を使いますと、自動で情報が入力できますので、医療機関の方が紙やカードに書かれた情報を手入力して確認する手間が減ります。また、紙の保険証では写真やICチップが付いていないので厳格な本人確認ができないのですが、マイナ保険証ではしっかり行えます。

こうして、診療のたびに最新の資格情報を確認することで、返戻も減少すると期待されています。実際、オンライン資格確認は2021年からスタートしたのですがここ2年程は返戻の件数が減少してきているようです。また、どれだけあるのかよく分かっていないのですが、これまで、他人の保険証を使って診療を受けるような不正が行われていたという指摘もあります。毎回本人確認をすることで、そうしたことも非常にやりにくくなります。

9月時点のデータでは、まだマイナ保険証の利用は全体の約14%しかありません。これが、12月以降、どう変化するのか、要注目です。マイナ保険証を使う人が大幅に増えれば、入力や返戻への対応にかかっていた医療現場の事務負担は減りますし、長期的に見ると日本が誇る医療保険制度の持続可能性を高めることになるのではないか、と思います。

以上、「もうすぐマイナ保険証が本格始動」というお話でした。本当はもっと課題や改善策の話もしたかったのですが、続きはまたの機会にお話ししたいと思います。ありがとうございました。

いいなと思ったら応援しよう!