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ChatGPT登場から2年

2024年12月12日(木)のNACK5『Good Luck! Morning!』内「エコノモーニング」では、こんなお話をしました。

最近は、生成AIに関する話題を毎日のようにたくさん見かけますが、そのきっかけとなったChatGPTが誕生したのが2022年の11月30日、今から約2年前なんですね。そこで今日は「ChatGPT誕生から2年」と題しまして、ChaGPTを中心とする生成AIをめぐる最近の話題を整理してみたいと思います。

私は情報社会についての研究者ですから、研究にも教育にもいろいろ試してみるということを積極的にやってみています。じつは、いつか告白しようと思っていたんですが、毎週この番組でお話しする内容を台本として作る際にも、けっこう生成AIを使っているんですよ。使い方はいろいろ試している段階ですが、参考にする記事を要約するときにはよく使います。あとは、話の流れの中で、ちょっと用語の解説を加えるときなんかは、「◯◯について300文字以上400文字以内で説明して」といって下書きさせたりしてます。もちろん、最終的には内容に間違いがないかどうか確認したり、言葉遣いを自分らしいものに変えたりして私の文章にするわけですが、ゼロから作文するのに比べたら、効率はとても良いです。

さて、生成AIの最近の話題の1つ目は、ChatGPTを提供しているOpenAIが今週12月9日から提供を開始した「Sora」という動画の生成AIです。このサービスは、文章で指示を与えて数分待つだけで、非常にリアルで質の高い動画を生成することができます。この言葉から映像を作れる、というのが技術的にはすごいところです。また、静止画像や動画素材を与えて、それらを活かした動画をつくることもできます。映像の雰囲気や、縦横比、時間などを指定することもできます。出来上がった映像にさらに指示を出して作り直させることも簡単にできます。このSoraは、現時点では有料ユーザー向けのサービスで、月額20ドル(約3,000円)を払っているユーザーは長さ5秒の動画を1ヶ月で最大50本作ることができます。月額200ドル(約3万円)の上級プランのユーザーですと長さ20秒までの動画を1ヶ月で500本まで作れます。CM動画やSNSでシェアするショート動画のようなものを、誰でも手軽に作れるようになった、ということですが、おそらく1年もすれば生成できる動画の長さはもっと長くなるでしょうし、映像作品としての質もさらに高まると思います。

2つめの話題は、AIの開発で最終目標とされている汎用人工知能(Artificial General Intelligence:AGI)と呼ばれるものについてです。これまでのAIというのは、囲碁をするとか、音声を認識するとか、質問に文章で答えるというように、特定の仕事しかできないわけですが、汎用人工知能というのは、いろいろな種類の作業ができたり、自分で学習して進化したり、あたかも人間のように考えたりすることができるというものです。そのような高度な人工知能は、2045年ごろに登場するのではないかと言われたり、いやいや何年たっても無理じゃないか、と言われたりしてきたのですが、2年前にChatGPT・生成AIが登場してからは、もっと近い将来にそこまで達成できてしまうのではないか、ということも囁かれてきたわけです。

そのような中、ChatGPTや先ほどのSoraを作っているOpenAI社のスタッフが、12月7日にXで自分たちは汎用人工知能(AGI)を達成したんだ、ということを投稿したので注目されています。OpenAIは、先週12月5日に「o1」と呼ばれる最新バージョンのChatGPTを発表したのですが、これが、「すべてのタスクで人間を上回るレベルには達していないものの、ほとんどのタスクでほとんどの人間よりも優れた性能を備えている」というんですね。会社としての公式声明やサム・アルトマンCEOの発言ではなく、一社員がXでつぶやいた言葉ですのでそれほど重く受け止める必要はないのかもしれませんが、「ほとんどのタスクでほとんどの人間より優れている」というのはリアルな表現で、そうかもしれないなとも思います。ChatGPTも、先程ご紹介したSoraも、もっといえば他社製品も含めて生成AIは驚くほどのスピードで進化していますし、表に出てきていない開発中のAIでは相当なレベルのものを達成しているようだ、それがあと1年2年で登場してくるだろうということは以前から言われています。ですから、あるタスクに特化して人間を上回るというだけではなく、総合的な意味で人間を上回るようなAIの登場というのが、また少し現実味を帯びてきているのだろう、と思います。

ただ、では人工知能が反乱を起こして人間を滅ぼすようなSFが現実になるのかというと、私はまだそれは考えすぎだと思います。そもそも生成AIという技術は、一般人が言いそうなこと、誰もが考えそうな常識的なことを返してくるものなので、いわゆる天才が考えるような飛躍した考え方とか、クリエイティブな考え方というのはしないんですね。人間の脅威となるのは、そういう一般人では理解できないような天才の思考方法をAIが身につけたときだと思いますので、当面は、便利にお手伝いしてくれるパートナーとして付き合っていく、付き合い方を見つけていく、というのが妥当なところだろうと思います。

ということで、今日は「ChatGPT誕生から2年」題して最近の生成AIをめぐる話題をご紹介しました。ありがとうございました。

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