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健康長寿とテクノロジー

2024年10月24日(木)のNACK5『Good Luck! Morning!』内「エコノモーニング」では、こんなお話をしました。

今日は「健康長寿とテクノロジー」というテーマでお話ししたいと思います。まずは私の個人的なエピソードを少しお話しさせてください。実は先週末、東京で開催された「東京レガシーハーフマラソン」に出場してきました。この大会は、国立競技場をスタートして神田駅まで走り、また国立競技場に戻るというコースで、都心の一般道を走れるというなかなか貴重な体験ができる大会なんです。

私は高校生までは陸上部で駅伝をしていましたし、大人になってからはフルマラソンに3回出たこともあるんですが、ここ10年くらいは大きな大会には参加していなかったんですね。ですから今回は、1ヶ月ほど練習はしましたが、正直、体力に自信がなくて「制限時間内に完走する」ということが目標でした。しかし始まってみると、思っていた以上に良いペースで走れまして、なんとか一度も歩かずに完走することができました。タイムは2時間28分です。優勝選手のタイムは約1時間でしたので2.5倍以上かかってしまっていました(笑)。1万5000人もの人が参加したのですが、その中には超エリート選手から私のような一般市民までいて、また年齢的に私よりかなり上の、もしかすると私の親世代なのではないかという方もいましたし、車椅子の方もいましたし、障害を持った方が伴走者と一緒に走っているのも見かけました。年齢がいくつになっても、障害があっても、自分の目標に向かって汗を流すというのはいいものですね。日本は世界一の長寿国でありますが、昔と比べても健康で過ごせる時間が長くなっている、ということも感じました。

ということで、ここからが本題でして「健康長寿とテクノロジー」のお話です。アメリカのサンフランシスコとシリコンバレーは、世界中のスタートアップやテクノロジーが集まる場所として有名ですよね。そこのIT業界の成功者や投資家たちの間では最近、「不老不死」や「健康長寿」を目指す技術が急速に進んでいて、次のビジネスチャンスだと期待されています。アマゾンの創業者であるジェフ・ベゾス氏や、著名な投資家であるピーター・ティール氏が老化細胞を除去する薬を開発する企業に投資しているという話や、Googleの創業者の一人であるセルゲイ・ブリン氏も神経疾患や精神疾患を研究する企業に熱心に投資しているといった話が知られています。ChatGPTを作ったOpen AIのサム・アルトマン氏も長寿を研究する企業に約300億円もの投資をしています。

(私は子どものころ、120歳まで生きてできるだけたくさん世界中を見て歩きたいなんて思っていたのですが、「不老不死」「健康長寿」を目指す技術にご興味ありますか?)

「健康寿命」という言葉がありますね。これは、ただ長く生きるのではなく、元気に健康でいられる時間をできるだけ長く保つことです。今、投資が集まっているのはまず、この健康寿命を延ばす技術やサービスです。どんな栄養をとればいいのか、どのような睡眠をとればいいのか、という生活スタイルの管理や改善から始まって、再生医療やバイオテクノロジー、予防医学などによって、老化を防いだり、少しでも遅らせたりしようという研究が盛んになっています。

この分野の投資は、じつはしばらく前から過熱していまして、2年前には、「指先から採取した数滴の血液で、がんや糖尿病などさまざまな疾患の検査ができる画期的な技術」をうたい莫大な投資を集め社長も次のスティーブ・ジョブズだと人気を集めて大ブームを起こしたセラノスという会社が、じつはそのような技術は嘘だったということがわかり、大きな詐欺事件となりました。社長は、2022年に禁錮11年の有罪判決をうけ、この事件は「シリコンバレー最悪の詐欺」などと呼ばれています。しかしこのような大スキャンダルがあっても、その経験から学んで、今は信頼性重視で引き続き活発に投資と技術開発が進んでいるといいます。この分野への期待の高さがうかがわれますね。

日本でも、注目すべき企業がいくつかあります。たとえば「ekei labs(エーケイラボ)」という企業は、血液検査によって糖鎖(とうさ)というものを手がかりに体内年齢を測定して、老化の進行をその人に合った方法で抑えるための情報を提供するということをしています。また、「AutoPhagyGo(オートファジーゴー)」という会社は、細胞の中で老廃物を掃除して細胞の再生を司る「オートファジー」という機能を研究していて、老化や病気の予防に役立つ技術を開発しています。それから「エム」という会社では、画像解析技術を使って脳の健康状態を管理するサービスを行っていて、特に認知症の予防に役立つことが期待されています。

こうした動向をまとめると、「不死」というのはさすがにまだ難しいようですが、老化を抑制したり、老化の原因となる細胞を取り除いたりすることについては、今日ご紹介した企業が成長することによって、近い将来現実的なものになってくるかもしれない、と期待できそうです。つまり「不老長寿」「健康長寿」ということですね。これは基本的に良いことではありますが、ただし、本当に人の健康寿命が伸びて元気な高齢者が増えるとなると、年金や社会保障制度のあり方も変わるでしょうし、人の働き方も変わるでしょうし、ビジネスも大きく変わっていくでしょう。まずはこの分野への投資や新しい企業の成長を見守りながら、新しい社会や経済の形を考えていくことも必要になっていくのではないかと思います。以上、「健康長寿とテクノロジー」というお話でした。

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