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地理空間情報に注目!

2025年2月6日(木)のNACK5『Good Luck! Morning!』内「エコノモーニング」では、こんなお話をしました。

今日は、「地理空間情報に注目!」という話題です。先週の金曜日のことなのですが、私は東京ビッグサイトで表彰式が開催された、内閣官房主催の「イチbizアワード」というコンテストの審査員を務めました。今日はこのお話からさせてください。

2022年度から始まったこのイチBizアワードは、「地理空間情報」を活用したビジネスアイデアを表彰するコンテストです。地理空間情報というのは、場所や位置に関する情報です。たとえば地図上で、建物や道路がどこにあり、どのように配置されているかなどを表します。スマホやカーナビの地図には毎日お世話になっているよという方は多いと思います。地図にGPSなどの衛星データやいろんなセンサーやカメラのデータなどを組み合わせて、人や車の位置情報とや混雑情報や気象データをリアルタイムで組合せたりしていますよね。企業でも行政でも、そこにどんな人が住んでいるのかを分析したり、災害対策をしたりと、地理空間情報は本当に広く使われるようになってきています。最近は、地形や建物の形などを立体的に表現した3Dデータの活用も増えてきています。

このイチbizアワードでも、さまざまな地理空間情報を活用して新しいビジネスに発展しそうなユニークなアイデアがたくさん紹介されました。たとえば最優秀賞を受賞したのは長野県から応募された株式会社ハタケホットケの「水田雑草対策ロボット ミズニゴール」という作品でした。これは細身の三輪車のようなロボットが田んぼの中を走り回って水を濁らせることで雑草の光合成を妨げて草取りの手間を減らしてくれるというものです。しかも、GPSを搭載していて、ロボットの自動運転や走行ルートの設定や記録もできるということでした。すでに製品化されていてビジネスとしても興味深いものでした。

そのほか、アイデア部門の優秀賞を受賞したのは共愛学園前橋国際大学というところの学生さんで、マインクラフトというブロックを重ねて自由に3Dの世界を作れるゲームに、国土交通省が公開している実際の街の3Dデータをとりこんで、小さな子どもたちにゲーム内で交通ルールを学んでもらおう、それから実際の街に出ようという交通安全教育のアイデアでした。これも素晴らしかったです。

ところで、この表彰式の2日後の2月2日には、鹿児島県の種子島宇宙センターからH3ロケットが打ち上げられましたね。今回のロケットには、「日本版GPS」として知られる準天頂衛星「みちびき6号機」が搭載されていました。GPSというのは本来、アメリカの人工衛星から電波を受信して自分の位置を割り出す仕組みですが、日本独自の「みちびき」が加わることで、国内で使うスマートフォンの位置情報精度が一段と高まります。また、災害が起きた際の情報通信インフラとしても役立つとされています。

「インフラ」と聞くと、多くの方はまず道路や鉄道などの物理的な設備を思い浮かべると思います。しかし、これからは地図や位置情報といった「地理空間情報のインフラ」も同じように重要視していく必要がありますね。特にいま、埼玉県では八潮市の下水管の損傷が原因で道路に大きな陥没が発生してニュースとなっていますが、電気・ガス・水道・下水道など生活に欠かせないインフラの線や管がどの場所にどう埋められているのか、どれほど老朽化しているか、あるいはどんなリスクが隠れているのか、といった情報はそれぞれの運営会社や役所の担当部署は持っているのですが、あまり整理・統合されていないというのが実情です。そのため今回のような陥没事故を未然に防ぎにくかったり、道路工事のときに誤って管を傷つけてしまうトラブルが起こりやすくなっています。

一方、埼玉県の場合は、県庁が道路や河川に関する3次元データを一般に公開していまして、これは全国的にみても先進的な取り組みといえます。実際、このデータを使って陥没前の現場の道路の状態を分析してXで公開している方がいらっしゃいました。もちろん、インフラ情報にはセキュリティ上の配慮が必要な場合もあり、誰でも自由に見られる公開データにするのが望ましくないケースもあります。しかし、公開の範囲や方法を適切に調整することで、質の高い地理空間情報やインフラ関連データを必要とする人たちが、自由に使えるようにしていく意義は非常に大きいと思います。

こうした高精度データや地理空間情報が広く活用されれば、行政サービスの質が一段と向上したり、交通や物流、観光など多彩な分野で新たなビジネスチャンスが誕生するかもしれません。ちょうどこの一週間ほどの間に、私の周りではアイデアコンテストの表彰があり、人工衛星が打ち上げられ、埼玉県の道路の3次元データが話題になったりと、“情報インフラ”の重要性を感じるニュースが立て続けに起こりました。そうした動きに触れると、来年のイチbizアワードではどのような地理空間情報の活用アイデアが出てくるのだろう、と今から楽しみでなりません。

というわけで、今回は「地理空間情報に注目!」というお話でした。

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