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大学生と「情報」「データサイエンス」
2025年1月23日(木)のNACK5『Good Luck! Morning!』内「エコノモーニング」では、こんなお話をしました。
今日は、『大学生と「情報」「データサイエンス」』というお話です。先週末は、大学共通テストが行われましたね。私が務めている武蔵大学でも、無事に実施されましたが、全国的にみても大きなトラブルなどはなく今年のテストは終了したようです。本当によかったと思います。
ところで今年の大学共通テストでは、これまでの国語・数学・外国語・理科・地理歴史公民(いわゆる社会科)に加えて、初めて「情報」という教科の試験が行われました。今日はまずこの「情報」という科目に注目したいと思います。
いま私たちの社会や経済では、AIやデータ分析、プログラミングなどの技術が大きな影響力を持つようになっていますね。企業は日々膨大なデータを集めて、消費者のニーズや市場の傾向を分析してビジネス戦略を立てていますし、選挙があればビッグデータを活用してキャンペーンを行いますし、医療や福祉でも行政でも、スポーツやエンターテインメントでもAIやデータ分析が活用されています。そのような社会動向に合わせて「情報」という科目が重視され、大学入試でも使われるようになるというのは、自然な流れかと思います。
今年はじめて行われた大学共通テストの「情報」の試験では、思考力や問題解決力を重視する問題が出題されました。たとえば「部活動の作業担当をプログラミングで割り当てる問題」ですとか「観光庁が発表した旅行者数のデータを分析する問題」といったように、単純な暗記問題ではなく、実際のデータを読み解いて身近な課題に対応する力を測るような内容でした。いい問題だと思います。
ただ、少し気になるのは、この「情報」という科目に対する大学側の扱いです。2025年度入試では多くの国公立大学が情報の受験をするように求めているのですが、実際には6割以上の大学が「情報」の配点比率を他教科より低く設定しています。たとえば国語や数学や外国語を100点満点とするのに対して、「情報」はその半分の50点満点とする、といったようなことです。つまり共通テストで「情報」の受験は必須なのだけれども、この1教科で大きく差がつくことはない、ということです。私立大学の中には共通テストは使うけれども必須科目や選択科目として扱わないというところもあります。新しい科目なのでまだ様子見だということもありそうですが、残念ながら情報という科目がまだあまり重視されていない、という見方もできます。
ここは大学によって判断が分かれるところで、今後は「情報」の配点を高めにして情報が得意な生徒を積極的に求める大学が出てくる可能性もある、と私は思いますね。ちなみにわが武蔵大学は、大学共通テストの成績で受験できる方式の中で、選択科目として情報を選べるようになっていまして国公立大学よりは配点が大きいです。
次に、大学に入った後の「情報」に関する学びについてもお話ししたいと思います。いま、全国の大学で新しく作られる学部として最も多いのが「データサイエンス学部」なんです。AIやデータサイエンスは最先端の学問だ、学ぶと就職に有利だ、ということで非常に人気があるんですね。また、政府は、「数理・データサイエンス・AI」というのはデジタル社会の基礎知識だ、いわゆる「読み・書き・そろばん」的な素養だ、ということで文系や理系といった専門性や学部を問わず、すべての学生に「数理・データサイエンス・AI」の初級レベルの知識を身に着けてもらうことを目標に掲げています。各大学の教育プログラムを認定してお墨付きを与える仕組みも始まっています。
しかし、文系や理系を問わず、「数理・データサイエンス・AI」を学ぼうというのは目標としては素晴らしいのですが、私たちのような人文系・社会科学系の大学ではなかなか簡単なことではないです。デジタル技術やサービスが大好きな学生は多いですしAIへの関心も高いのですが、いざ学ぶとなると数学に対する苦手意識が強い人が少なくないんですね。
私は、高校数学で大きな挫折を経験しまして、よく定期試験で赤点をとって、再テストを受けていました(笑)。ただ、数学は得意ではないんですが、数学が嫌いかというとそうでもなくて、興味はあるんです。そして、興味を持ち続けているおかげで、人生経験を重ねているうちに苦手意識もだんだんなくなってきました。たとえば、野球やサッカーを観戦するときにデータを意識すると楽しいですし、健康管理のアプリもまさにデータサイエンスです。気がつくと身の回りには、データサイエンスがたくさんあって、意外と毎日お世話になってたりするんです。そんな話をしながら、学生には「数学が得意でなくてもいいけど、数学を嫌いにはならないで」と言っています。きっと、嫌いにならずに付き合っていれば、どこか興味を持てるポイントや、できるようになることも出てくると期待しています。
ちょうどコロナの頃から小中学生は1人1台の端末を使って勉強していますし、同じ頃から小中学校ではプログラミング教育が必修化されましたので、いまの小中学生は自分でゲームをつくって遊んだりもしますし、論理的思考にも慣れ親しんでいるんですね。そうした世代がそろそろ大学に入ってきますので、大学生のデータサイエンスのレベルも年々高まっていくのではないか、と予想しています。彼らに負けないように、私も今年はもっとAIやプログラミングの勉強をしようと思っているところです。ということで、『大学生と「情報」「データサイエンス」』というお話でした。