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生成AIを活かしてキャラクター創出の生産性を100倍に:100 TIMES AI HEROESができるまで

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〜12月8日 12:30

この記事では、第3回AIアートグランプリ最終選考 審査員特別賞受賞作品である拙作「100 TIMES AI HEROES」のコンセプトと、生成された画像ギャラリーを掲載しています。

100 TIMES AI HEROESは、生成AIの能力を活かして、キャラクター創出の生産性を100倍にします。
第3回AIアートグランプリの最終選考会や展示作品を見てくださった方はもちろん、生成AIの活用・共存を考えるみなさまにとって、何かインスピレーションを喚起するものであれば幸いです。

(2024年11月10日追記)
2024年11月9日、AIフェスティバル2024の中で行われた、第3回AIアートフェスティバル最終審査会において、審査員特別賞をいただきました。ありがとうございます。

有料部分では、この作品に至るまでの過程(2019年から)と、その過程での思考フロー、ワークフローを解説しています。作品制作の背景が気になる方はぜひご覧ください。
有料部分は、2024年12月8日まで、割引価格で販売しています。
それ以降は陳腐化してしまうため、有料設定にて制限をかけています。


前提

魅力的なキャラクターは、物語を牽引する

拙著漫画より引用

魅力的なキャラクターは、物語を牽引します。

物語を強く推進するキャラクターがいるかどうか、がその物語を面白いものであるかを決定しうる重要な要素と言えるでしょう。


キャラクター創出はアイデア✖️アイデア


拙作アイデアスケッチ

キャラクターは、アイデアとアイデアの、大胆な組み合わせから生まれます。

作家ごとにいろいろだと思いますが、私の場合は、「そのキャラクターはどんな願望・能力・役割を持っているか」からアイデアを膨らませてキャラクターを創ります。
様々な願望、能力、役割を考えてリスト化しておいて、それぞれランダム取り出してに組み合わせると、自分では想像し得なかったようなユニークで新しいキャラクター像が生まれます。


願望✖️能力✖️役割 → 特有の事情

拙著漫画より引用

キャラクターの願望、能力、役割の組み合わせが、そのキャラクター特有の事情、いわばナラティブを生み出します。

キャラクターがそれぞれ特有の事情を抱えていることによって、身の回りの出来事に対して受動的に感情を喚起したり、能動的に意思を持って行動します。
キャラクター自らが動くので、物語を牽引することができるのです。

逆に言えば、願望、能力、役割のようなナラティブを持っていないキャラクターは、物語を牽引することができず、出オチに終わってしまうとも言えます。


拙著漫画より引用

例えば、人間を傷つけたくない、なんでも食べることができる、餓鬼の王がいたらどうでしょうか?

彼(彼女)はどんな状況に対して、どんな風に、感じ、考え、行動するでしょうか?


拙著漫画より引用

キャラクターは物語の中で、自身のナラティブに従って振る舞います。

ただの「なんでも食べれる✖️餓鬼の王」は、人にとって脅威で脅威であり、敵対者として振る舞うかもしれません。
しかし、「人間を傷つけたくない✖️なんでも食べれる✖️餓鬼の王」には葛藤があります。
餓鬼の王として求められる役割と、彼(彼女)の願望とがアンビバレントな関係になっています。
人間にとって友好的であったり、人間と一緒に暮らしているかもしれませんし、極端に人間を避けて暮らしているかもしれません。

単なる属性や能力だけでなく、そのキャラクターならではの肌触り、質感が、何らかののっぴきならない事情を想像させます。
それがリアルであればあるほど、「このキャラクターはきっとこう動くであろう、こうは動かないであろう」という自律性が生まれます。

では、キャラクターのナラティブさえあれば、物語は成立するのでしょうか?


作家の役割:自身のナラティブを物語に反映すること

拙著漫画より引用

物語を作っている作家自身にも、それぞれ特有の事情があるはずです。
そして、その内容が、作家にとって身につまされる内容であったり、強い嗜好(萌えとか癖)であるほど、そのディティールは深く、強い印象になります。

作家は、自身の経験や願望、癖などのナラティブを物語に持ち込むことによって、キャラクターに外的な要因を与え、さらにのっぴきならない状況を作り出します。

いわばそれは、キャラクターの持っているナラティブに対抗しうるナラティブであり、キャラクターをのっぴきならない状況に追い込むことができる、物語のもう一つの重要な要素なのです。


物語:キャラクターがのっぴきならない状況に向き合うこと

拙著漫画より引用

物語とは、キャラクターがのっぴきならない状況に向き合うこと、と言えます。

私たち現実の人間にもさまざまなのっぴきならない状況が起こり得ますが、それらは、あらかじめ避けたり、逃げ仰せたりできる可能性があります。
しかし、物語の中のキャラクターたちは、のっぴきならない状況から逃れることができないのです。

例えば、「王都を守る巨大な壁の向こうから、次々と人間を食べる巨人が襲ってくる」とか、「大事な妹がドラゴンに食べられてしまったから、復活させにいかなければならない」などです。

冷静に考えれば、まったく荒唐無稽な話ですが、物語の中のキャラクターたちにとってはのっぴきならない状況であり、彼らは大真面目にそれに取り組むのです。

キャラクター1人ひとりのナラティブに従った感情の動きや行動原理がリアルであればあるほど、人々は物語に引き込まれ、「このキャラクター、これからどうなっちゃうんだろう…!」という関心が喚起されることで、物語を読み進めるのです。


どうやってやるか

生成AIが作った100体のキャラクターたち

100 TIMES AI HEROESでは、キャラクター創出の生産性を100倍に加速します。

キャラクター特有のナラティブと、外見的特徴を自動的に生成して、活き活きとした人物像としてキャラクターのアイデアを示すことができます。


生成AIで人間のアイデアを100倍に拡張する

願望、能力、役割のアイデアを格納したスプレッドシート

Few-Shot Promptingによって、キャラクターの願望、能力、役割のアイデアを100倍に拡張し、スプレッドシートに格納します。

最初のアイデアは、それぞれ10個でも5個でも大丈夫です。いくつか自分で考えて、ChatGPTなどに、「下記の能力とは別の能力を10個提案してください」などのプロンプトを投げて、簡単に数を増やすことができます。

1つひとつが目の覚めるような刺激的で斬新なものである必要はありません。
願望、能力、役割の、思いもよらない組み合わせの面白さが醍醐味であって、1つひとつのアイデアは、平凡なものでも既知のものでも構いません。

好きな漫画の登場人物それぞれの願望、能力、役割を書き出してもよいでしょう。


願望、能力、役割のリスト

願望、能力、役割のリストには、例えば下記のような内容が含まれています。
(処理を早くするため、実際には英語で格納されています)

願望

  • 世界中の子供たちに教育の機会を提供したい。

  • 環境に優しい新しいエネルギー源を開発したい。

  • 人々の心の傷を癒す音楽を作りたい。

  • 貧困をなくす革新的な経済システムを構築したい。

  • 宇宙に新しい人類居住地を築きたい。

  • 難病を治す画期的な医療技術を発明したい。

  • 世界平和を実現するために外交官になりたい。

  • 人工知能を使って人々の生活の質を向上させたい。

  • 地球上の絶滅危惧種をすべて保護したい。

  • 人々の心を癒すような美しい芸術作品を作りたい

能力

  • 時間を操る指輪を持つ

  • 感情を色として視覚化できる

  • 植物と会話する能力を持つ

  • 重力を自由に操作できる

  • 夢を見ながら学習できる

  • 体から電磁波を発することができる

  • 記憶を具現化する能力を持つ

  • 傷を他人に移すことができる

  • 音を視覚化し、操作することができる

  • 影を具現化できる

役割

  • 吟遊詩人

  • 剣闘士

  • 召喚士

  • サイバーセキュリティ専門家

  • ストリートアーティス

  • 外交官

  • ハッカー

  • 環境活動家

  • メカパイロット

  • ソーシャルメディアインフルエンサー

全く斬新なアイデアというのはあまりなく、どこかで聞いたことのあるものがほとんどだと思います。


属性情報:年齢、性別、種族

この作品では、多様な属性を持ったキャラクターが生まれて欲しいので、上記の願望、能力、役割の他に、キャラクターの基本情報となるような属性を加えるため、年齢、性別、種族のリストも作りました。

こちらは大量に用意する必要はなく、生成したいキャラクターの範囲に併せて任意のものを設定できます。

例えば、物語の舞台が学校生活なら、年齢は[高校1年生, 高校2年生, 高校3年生, 教師]のように、極端に狭くしてもよいわけです。
私の用いたリストには、下記のような内容が含まれています。

年齢

  • Preteens

  • teens

  • young adult

  • middle-aged

  • senior citizen

  • centenarian

性別

  • Male

  • Female

  • non-binary

  • Intersex

  • Gender fluid

種族

  • Human

  • Half-human, half-animal

  • Half-human, half-reptile

  • Half-human, half-plant

  • Half-human, half-aquatic

  • Half-human, half-imaginary

  • Half-human, half-machine

  • Half-human, half-god

  • Half-human, half-elf

  • Half-human, half-orc


生成AIでアイデアをランダムに組合わせる

100 TIMES AI HEROESのプログラム(イメージ)

この先は、要素の組み合わせや繰り返し処理を自動化したいので、Googleコラボに簡単なプログラムを書いて行いました。

上手く動かないときは、ChatGPTや、Claude、Geminiなどにエラーについて質問して、修正を行いました。
Google Colabやスプレッドシートの取り扱いは、Geminiが1番詳しかったです。

スプレッドシートから願望、能力、役割をランダムに取り出し、それぞれに対応する変数に格納します。
年齢、性別、種族は、一つの変数にまとめてしまいます。


キャラクターコンセプトを作る

100 TIMES AI HEROESのプログラム(イメージ)

変数をプロンプトに組み込んで、キャラクターのコンセプトを生成し、CharacterConceptという変数に格納します。
要約するときに、いくつかの要素が抜け落ちてしまうかもしれませんが、それも偶発性の面白さがあるので許容します。


画像生成用のプロンプトを作成させる

100 TIMES AI HEROESのプログラム(イメージ)

画像生成用のプロンプトを作ります。

生成される画像のクオリティを安定させたいので、必要な要素は英文で直接入力し、変数に格納します。
変数CharacterConceptと組み合わせて、画像生成用のプロンプトが作られます。

それなりに長いプロンプトになるので、情報が抜け落ちて生成結果にバラツキが生じる懸念があったのですが、Midjourney、niji・journeyではかなり安定して出力することができました。


15分で100通りのアイデアを生成させる

アイデアが生成される様子とがMidjourneyで画像生成をする様子

上記までの処理をfor文で繰り返し処理して、15分で100通りのキャラクターコンセプトとビジュアルプロンプトを生成することができます。

ビジュアルプロンプトを画像生成AI(ここではMidjourneyとniji・journey)に投げて、画像を生成します。
プロンプトの共通部分の効果によって、生成されるキャラクター画像のポーズ、カメラアングル、アートスタイルはかなり揃いました。


生成AIに新しいアイデアを生成させる

100 TIMES AI HEROESのプログラム(イメージ)

for文による繰り返し処理の中で、プログラムがキャラクターコンセプトとビジュアルプロンプトを生成するのと同時に、AIが新たな願望、能力、役割のアイデアを生成しスプレッドシートに格納するようします。

キャラクターが100体生成されると、願望、能力、役割それぞれのシートが100行追加されます。

願望のアイデアリストに追加されたアイデア

これにより、ほぼ無尽蔵に、独自のナラティブとビジュアルを持ったキャラクターを創り出すことができます。
これが、100 TIMES AI HEROESです。

AIが生成した100体のキャラクターたち


人間の役割は?

作家のナラティブが、鑑賞者の共感を喚起する

拙著漫画より引用

先にも述べたとおり、人間は、自らの経験や願望、癖などのナラティブをストーリーに乗せて、キャラクターにのっぴきならない状況を作り出し、キャラクターのナラティブの中から感情の動きと行動原理を表出させ、鑑賞者の強い共感を喚起することができます。


それも生成AIの方が得意なのでは…?

拙作、AIでシナリオ、作画したAI漫画より引用

人類のナラティブを集約し、抽象化したLLMにも、それは可能ではないでしょうか?
しかも圧倒的なスピードで。


AIが無尽蔵に物語を生成するようになったら、人間はそれを読み続けることができる...?

拙作漫画より引用

生成AIでキャラクターのコンセプトを作ることができ、キャラクターのビジュアルを作ることができ、物語を作ることができ、それらを自律的に、無尽蔵に生成し続けるようになったら、人間はそれらを読み続けることができるのでしょうか?

この作品では、キャラクターを創出する役割を生成AIに、それらを評価したり選抜する役割を人間である私がが担っていますが、私の評価軸と採用基準値を言語化できたら、その役割もAIに任せることができると想像できます。

キャラクターができるなら、物語の中のキャラクターの振る舞い、感情の動き、行動原理などの要素についても評価軸を言語化できそうですし、その結果と次に起こる出来事の連続体である物語の評価もできるだろうと想像されます。

物語の構造の単純化

前提

  • テーマ、メッセージなどのメタ要素

  • 世界観、物語の舞台などの環境設定

  • キャラクターのナラティブ

物語の最小単位

  • 前提に応じた、又は前提を裏切るような出来事

  • 出来事に対するキャラクターの反応、受動的な感情の表出

  • キャラクターのナラティブに従った主体的な行動

  • 次の出来事に繋がるような変化(ヒキ)



AIが生成した100対のキャラクターたち

AIがキャラクターや物語を評価することができたら、物語を読んで楽しんだり、つまらなく思うことも、AIにできるのではないでしょうか?

AIがナラティブを生み出し、ストーリーを生み出し、自らそれを享受し続けることができるなら、人間には何の役割が残るのでしょうか?


主な使用ツール

アイデアの拡張:ChatGPT、Claude3.5Sonnet
コーディング補助:ChatGPT、Claude3.5Sonnet、Gemini
キャラクターコンセプト生成:OpenAI API
データベース作成:Google SpreadSheet
コード実行:Google Colab
キャラクター画像生成:Midjorney, niji・journey
画像エディット:Adobe Lightroom Classic, Adobe Photoshop 2024
音声生成:OpenAI TTS-1
BGM生成:SunoAI

100 TIMES AI HEROES プロジェクトページ


ギャラリー

生成AIが自動的に生成したキャラクターコンセプトとビジュアルプロンプトから生まれたキャラクターのギャラリーです。
各バージョン、最初の100体をスライドショーで展示しています。
テキストは、生成AIが出力したままです。

v1.2

v1.1

v1.0


第3回AIアートグランプリ

100 TIMES AI HEROESは、第3回AIアートグランプリの最終選考作品に選抜されました。
第3回AIアートグランプリは、AIフェスティバル2024期間中に最終選考が行われます。

第3回AIアートグランプリ

AIフェスティバル2024


有料部分について

無料記事はここまでです。
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有料部分では、この作品に至るまでの過程(2019年から)と、その過程での思考フロー、ワークフローを解説しています。作品制作の背景が気になる方はぜひご覧ください。
有料部分は、2024年12月8日まで、割引価格で販売しています。
それ以降は陳腐化してしまうため、有料設定にて制限をかけています。

このような機会をいただけたことを大変うれしく、誇りに思います。
ここまで読んでくださった皆様、ありがとうございます。

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