バスケットボールでビデオ判定が導入されにくいのはなぜか
こんにちは!
久しぶりの投稿ですが、最近気になることがあるのでまとめようと思います。
それは、今年のインカレの男子決勝でのことです。
引用:J SPORTS
Twitterで話題になった、インカレ男子決勝東海大学vs白鴎大学のラストプレーでの判定のシーンです。
最後の東海大学の選手のシュートに対して、トラベリングが起こっているのか、あるいは白鴎大学の選手が東海大学の選手を蹴っているのではないか、という声が上がっている疑惑のシーンですが、Twitterでの声を見てると、
「ビデオ判定やチャレンジシステムの導入を!」
のような意見が見られました。
確かにビデオで見返せばこのシーンは間違いなくなんらかの現象が起こっており、笛が鳴らされるべきシーンと言えます。
逆に言えばビデオ判定さえあれば、正確な判定がされていたでしょう。
しかし、現行のバスケットボールのルール上、このシーンをビデオ判定で確認することはできません。
それは何故かについて見ていこうと思います。
現行のビデオ判定のルール
実はBリーグ等のプロリーグにおいては日本でもビデオ判定(IRS•インスタントリプレーシステム)の制度は導入されています。
このIRSで確認できる内容は
・タイマーやクロックに関すること(残り時間やシュートがブザーの前か後か、など)
・アウトオブバウンズ後のスローインがどちらか
・ファウルがシュート前か後か
・ゴールテンディングやインタフェアレンス(シュート時にボールやゴールに触れるバイオレーション)があったかどうか
・シュートが2点か3点か(シュートが入らなかったファウルの場合、フリースローが何本か)
・フリースローのシューターは誰か
・ファイティング(乱闘)に誰が関わっていたか
・ファウルのランク(ノーマルなのかアンスポなのかなど)
ざっくりいうと以上になります。
ビデオが試合中のいつ確認できるかなども細かく規定されています。
ここで注目していただきたいのは、
・ファウルが起こったかどうか
・トラベリングなどバイオレーションがあったかどうか
というような、何かが起こったかあるは起こってないかという事実確認のためにはビデオの確認ができないということです。
つまり、審判が笛を鳴らしていないシーンにはビデオ判定ができず、また、審判が笛を鳴らしたシーンに関しては後から判定を覆して無かったことにすることはできないのです。
上記のインカレ決勝での問題のシーンに関しても、もしIRSが導入されていても確認することができないのはこのためです。
なぜ現象に対してのビデオ判定が行われないのか
バスケットボールに判定を覆すようなビデオ判定が行われない理由は、ひとことでいうとバスケットボールがトランジションスポーツだから、つまり攻守の切り替えが戦術に大きく影響するスポーツだからです。
バスケットボールは、審判が笛を鳴らすかタイマーやクロックが止まるかしない限り継続してプレーが行われるスポーツです。
ワンプレーごとに区切りがある野球やテニス、バレーボールなどのスポーツとは大きく性質が異なります
ファウルやバイオレーションがあったかどうかをビデオで確認するためには逐一試合を止める必要があります。
それをするとすれば、いくつも問題が発生します。
試合時間が止まるということは、時間が止まってる間にお互い仕切り直すことができます。
バスケットボールはトランジションスポーツであるため、ある時間において、オフェンスまたはディフェンスどちらかが有利な状況になっている場合がほとんどです。
それを確認のために時間を止めて仕切り直すことは、たとえビデオ判定の結果何もなかったとしても、判定前とまったく同じ状況からの再会は不可能なので、片方のチームにとってせっかくつくった優位を潰されることになります。
例えば上記の問題のシーンにおいて、もし時間を止めてビデオ判定がされた結果、東海大学の選手も白鴎大学の選手もなにもしていなかったとしたら、その後の白鴎大学の速攻の得点は生まれなくなります。
バスケットボールは攻守の切り替え後の速攻(トランジションオフェンス)があるかないかが戦略に大きな影響を与えます。
そのようなビデオ判定が積極的に認められてしまうと、速攻が減少し、取れるはずの得点やチャンスが多く失われる可能性が高いです。
ビデオ判定した結果何もなかったが許されない競技であるから、バスケットボールで現象があったかどうかに対してビデオ判定が導入されることは非常に難しいのでしょう。
さいごに
バスケットボールの審判には人が行う以上、確実に限界があります。
インカレ決勝での問題のシーンも、ある種審判の仕組み上の限界の一つとも言えます。
完璧な審判ロボットなどが発明されれば変わってくるかもしれませんが、現状そんなものはありません。
審判が悪いと責め立てることは簡単ですが、それではバスケットボールにおける“良い判定”にはつながりません。
より“良い判定”の実現のために必要なのは、選手やコーチ、スタッフ、バスケットボールファンが審判の仕組みや視点を理解した上で、どうすれば審判の限界が少なくなるか考え議論していくことではないでしょうか?
審判への批判にどうしても目が行きがちですが、インカレやプロリーグを吹くような上級審判の方の審判は本当に見習うことが多く、その技術は一朝一夕では身につくようなものではありません。
僕自身、審判活動を通して自分の技術の上達を図るだけでなく、コミュニケーションを通してより多くの人に審判の仕組みや技術を伝えていければいいなと考えています。
そうすることで、より多くの人が判定に納得しながらバスケットボールを見たりしたりできるような環境ができればいいなと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました!