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レビュー/THE AGONISTの5作目「FIVE」

2016年10月29日 Text by Kotaro MASUDA a.k.a. TAROO-METAL

FIVE / THE AGONIST
2016年9月28日発売

カナダのエクストリーム・メタル・バンド(もちろんメロディック・デス・メタルと言ったってかまわない),THE AGONISTが放つ5作目となるスタジオ・アルバム。その名も「FIVE」。Voのヴィッキーが加入して2作目だ。前作「EYE OF PROVIDENCE」がリリースされたのが2015年だから,かなりのハイ・ペースで制作されたことになる。イマドキのアーディストにしては珍しいが,ファンにとっては嬉しいかぎり。

他のバンドには真似できないTHE AGONISTならではのメランコリックかつゴシガルな雰囲気は本作でも健在。邪悪でヒステリックなデス・ヴォイスと柔らかなクリーン・ヴォイスを自在に操るヴィッキーの歌唱が何より印象に残る。中音域をクリーンな声で歌う時に,純粋に綺麗なクリーン・ウォイスではなくて少しかすれたダーティな声で力強く歌う場面が時折あるのだが,前作ではあまり目立たなかったその歌いっぷりが特にかっこいい。⑭"Take Me To Church"はその象徴だ。

曲はかなりメロディアスになったと思う。いや,曲自体はアグレッシブなのだが,ヴィッキーが歌うメロディがよりドラマティックになったのだ。曲そのものにしても,速くて激しい曲でばかりではなくなり,スピードを抑えつつもキャッチーなメロディとスケールの大きさを併せ持つ曲が増えたと言っていいだろう(たとえば①"The Moment"や④"The Game",⑦"The Raven Eyes"など)。押すところは押す,引くところは引く。ヴィッキーの歌い方にしろ曲調にしろ,そのようなメリハリがとてもよく効いていると思う。

とは言え弱点がないわけではない。前作の"Disconnect Me"に匹敵するキラー・チューンがないのだ。クオリティの高い曲が揃ってはいるものの,ふと気づけばメロディを口ずさんでしまうような突出したインパクトを持つ曲はない(と個人的には思う)。もっとも,これは贅沢な悩みではあるのだが。

それはさておき,この「FIVE」は,おそらくTHE AGIONISTの転機となるアルバムだと思う。アリッサ在籍時のスタイルから一歩も二歩も抜け出して,よりスケールが大きくてメロディアスな独自世界へと突き進みつつあるーーそんな印象を強烈に感じさせる作品だ。

2014年には一度来日公演が決定していながら諸事情により全日程がキャンセルされるという「悲劇」があった。それだけに,ヴィッキー擁するTHE AGONISTのライブをぜひ観てみたいと思う。来年のLOUD PARKに出場してくれたら,こんなに嬉しいことはないのだが。

【収録曲】
01.The Moment
02.The Chain
03.The Anchor and The Sail
04.The Game
05.The Ocean
06.The Hunt
07.The Raven Eyes
08.The Wake
09.The Resurrection
10.The Villan
11.The Pursuit of Emptiness
12.The Man Who Fell to Earth
13.The Trial
14.Take Me to Church
15.The Raven Eyes Acoustic

*アメブロからの転載です。

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