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毛利元就と情報戦に関する雑感
いわゆる情報戦で凄いのは、やはり毛利元就だと思う。
戦国時代は通信傍受こそ無いものの、大名の近習に間諜を送り込むのはチャメシインシデント。すなわち日常茶飯事。乱破や素破といった忍び連中も大活躍だ。
海音寺潮五郎の『武将列伝』その他の文献によれば、毛利元就の反間、すなわち敵のスパイに偽情報を握らせるやり口の名手ぶりは際立っている。
陶晴賢を破ったかの厳島の戦いでは反間を中心とする情報誘導が二重三重に張り巡らされほとんど福本伸行の漫画みたい(順序が逆か)。
元就の凄いところは、情報戦の達人なのに周囲の人間に「いい人」な印象を抱かせるのに成功しているところ。いい人キャラとのギャップ萌えが元就の謀略の真骨頂だと思う。
これが松永久秀や織田信長 、武田信玄だと同じ謀略でも毛色が違う。彼らは謀略は好きだし情報戦にももちろん長けているけど、それぞれ印象が悪どい。いい人感など、微塵も感じさせない。
さて現代日本、盗聴はもちろんだけど、ジャーナリズムや職員のSNS利用などで情報統制はほぼ不可能な状態だ。であれば、自分の情報が漏れていることを想定するのは、もはや当たり前なのだろう。
また、かつてビートたけしは、貴乃花に対する「感動した!」との小泉純一郎総理(当時)の発言に対し、「それを感情ではなく計算で言えなきゃだめだ」という趣旨の指摘をしていた。しかし仮に計算があったとしても、小泉氏は自己のイメージ演出上計算とは言わないだろう。
情報戦とは、要はそういうことなのだと思う。
情報戦と言えば、昨今、福島第一原発事故の処理水放出を巡り、北朝鮮の情報機関が日韓関係に亀裂を入れるために情報工作をしていたことが報じられた。「汚染水」を連呼することで、当該情報工作に知らず知らずに乗せられていた日本の政治家や知識人やジャーナリストは、日本で少なくないと思う。
少なくとも「処理水」問題に関して言えば、当時の日本政府が海洋放出を決定し、その後大きな問題も無く放出が続いており、それによる日韓関係に大きな亀裂は生じていないことから、北朝鮮の思惑は外れたことになる。
さて、毛利元就とかを範とすれば、国家間の情報戦を考える上で、その国の 対外的なイメージとのギャップを活用するのは効果的かもしれない。
日本人は国家に対し、「情報戦が苦手」「お人よし」「付け込まれる」「交渉に弱い」などのセルフイメージを持つことが多いが、他国から見たらどうか。
佐藤優氏は、かつて、国家の情報収集力は国力(GDP)にほぼ比例すると指摘したことがあり、曲がりなりにも世界3位のGDPを持つ国に対し他国が見るイメージは、違ったものになる可能性が高い。
などと、興にまかせて書き連ねてきたが、盗聴されていることも含め情報をいかに活用するかについて、結局は、「敵を知り己を知れば」という孫子の簡潔な言葉が脳裏をよぎってしまう。
まあ、諸人なかなかそのとおりに出来ないから、古典であり奥義なんだろうけど。
そんな情報戦に関する雑感。
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