ぬくぬくシバイヌせいかつ
鳥がさえずる穏やかな朝。鋭い太陽光線が地面を、空気を、体を焼き始める。空は明瞭な青色へと変化する。シバイヌは椅子の近くで伏せている。ソファに座ってスマートフォンでザッピングを行うわたしと目が合うシバイヌ。シバイヌはわたしをしばらく見つめながらゆっくり、ゆっくりと体を傾けはじめる。ある傾きに達したとき、糸がきれたようにストンと地面に倒れ横たわった。と、同時にフーーーッと息を吐く。わたしはスマートフォンをソファに置きシバイヌににじり寄る。シバイヌはすでに目をつむり眠りの世界へ入ろうとしている。そんなシバイヌの横っ腹を鷲掴みする。ハッ!!となって頭を起こしてこちらを見るシバイヌ。フゥーー、と息を吐き頭を戻す。伏し目がちなシバイヌをなでる。シバイヌはけだるけに足をあげ腹をなでる許可を出した。あまのじゃくなわたしはシバイヌの頭を掻き始める。まあそれならそれで……とシバイヌは目を細める。シバイヌとわたしの顔が近くなる。シバイヌの臭い匂いが広がる。プゥー!スィーヨロー!ンフゥーーー!シバイヌの吐息がきこえる。シバイヌを眺めていたら後ろからバタン!バタン!キィーキィー、と何かをひっかく音がきこえる。クサガメだ。水槽の隅からこちらに向かって進もうとしている。クサガメはプラ箱に砂利を詰めた断崖絶壁の陸地を前足だけで登るムキムキマッチョタートルだが水槽は動かせない。クサガメに栄養を与えようと水槽に向かうとシバイヌもおこぼれをもらうためについてくる。シバイヌは無視する。あきらめたシバイヌは椅子の近くでふたたび横たわる。窓から入ってきた風がシバイヌを優しくなで、反射拡散した太陽光線がシバイヌを暖かく包む。これが、ぬくぬくシバイヌせいかつ。