夕暮れの街中にて

 橙色と青色、二つの色に染まる空の下。駅の時計の短針は4と6の間を指していた。駅前広場に人はまばらで、車もほんの数台。冷たい風を受けて、お腹、さすりながら歩く。

 コートのポケットに手をつっこんで、きょろきょろと、あちこちに目をやる。家、家、家。たまに閉店中の店や電灯の灯ってない学習塾。

 車が横を通り抜けたかと思うと、ちりんちりーんと自転車のベルが鳴った。通り抜けてゆく自転車に乗ったのはサンバイザーに頭巾姿の小柄な老人。

 老人のあとを追うように横断歩道を渡って、渡って、街路樹の向こうに豆腐のような形の店舗を見た。橙、緑、赤の三本線が特徴的な店を。

「いらっしゃいませー」
「あたためますか?」
「年齢確認の方、お願い致します」
「ありがとうございましたー」

 外に出て、腕にさげた二つのポリ袋の一つからブリトーを取り出す。熱い。切られた袋の口を広げると、むっとチーズの匂い乗せて、蒸気が広がった。指先でそっとつまむように持って、外気に晒したままに、歩きだす。

 その時、にわかに周囲が賑やかになった。振り返ればそこには、制服を着た高校生、高校生、高校生。

「……」

 袋にそっとブリトーを戻し、呼吸も忘れて速歩き。もう一つのポリ袋に入った冷たい缶を持つ。指の痛みを感じながらしっかりと。アスファルトは灰色。その固さを足裏で感じながら、

 ――プシュッ

 一杯あおる。

(了)

いいなと思ったら応援しよう!