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ASDと失恋。切り替えのできない発達障害人。「忘れたいのに、忘れられない」切り替えができない特性は、恋愛でも。

ASDは恋愛ができない、人と関係が築けない…なんて書かれていると、「またか」とため息が出る。

日本で公開されているASDを初めとする発達障害の情報は、古いものや、信ぴょう性の低いものも多い。

欧米では覆されている類のものが当然のように発信され続けていたりする。

(しかも、出所不明の情報が多くて、素人が書いたんだろうとしか思えない使いまわしのような文章が多くてがっかりする。

さらに質の悪いことに、情報商材がくっついていたり、占いに誘導されていたりして、「発達障害を安っぽい商売にしやがって」と思う。口が悪くなってごめんなさい。)

発達障害人には恋愛ができないとか、人と関係築けないとか、上から目線で何様だと思っているんだか。

大前提として、発達障害だろうが、定型発達だろうが、声を大にして言いたい。
感情は同じようにあります。』
と。

あえてこの点を述べるのは、信じられないかもしれないけれど、未だに、発達障害の人は感情が欠落してると思っている人がいるからだ。

特に、愛情。
これは、向けられる対象が実に色々だったりはするけれど、自閉症スペクトラムの人も、色々なものに愛着を持ち、愛を向ける。

恋愛感情、というのは、人の感情の中でも特に複雑なものなので、個々によっての線引きや定義は難しいことがある。

でも、はっきり言えるのは、愛情が存在する、ということ。

アメリカのウェブサイトには、自閉症傾向のある発達障害についての情報が多くあり、数々の「古くの常識」が覆されている。

それは、ASDの恋愛についてもしかり、だ。

ASDというと、孤立型の傾向が強い人は、他人に関心を持たないとか、一般的に共感性が低いとか、積極奇異型は逆に惚れっぽい、とか、色々と書かれている。

しかし、大きな誤解は、ASDをはじめとする発達障害人にとっても、どんな形であれ人々とのつながりを持つことは、定型発達の人たち同様、とても重要だということ。

そして、それを結果的に避けなければいけなくなるほどに困難な数々の経験が、他人と深い関係を築くことから ASDの人たちを遠ざけている ということ。

別の記事でも書いているが、多くの研究で明らかになっている事実は、自閉傾向がある発達障害人、ASD、ADHDの人間も、人と親密な関係を築きたいという欲求を持っているということだ。

一見、子どものころから一人遊びが好きで、他人と交わろうとせず、大人になっても集団が苦手で、家に閉じこもっているようなところを見ると、
「ああ、この人は、他人に興味が無いのだな」
と思われていたりする人が多いことは事実だ。

しかし、孤独でいる時間(刺激を避けて一人で過ごす時間)が必要なASDであっても、気持ちを共有したり、心を開いて話をしたい、あるいは、何かを「愛したい」という欲求を持っていることが明らかになっている。

さて、今日は、タイトルに書いた、失恋についてを特にフォーカスしたかったので、そろそろ書いていこうと思う。

感情の調整不全

発達障害の人は、特に、恋愛に関して驚くほど不器用です。(突然のデスマス調を許してください。笑)

なぜだと思いますか?

それは、まず第一に、感情の調整が発達障害人には難しいということ。
感情を相手に伝えるときに、そのスキルが不足しているので、
思っていることを全く伝えなかったり、あるいは伝えすぎたりしてしまう。

  • 何を言っていいのかわからない。そもそも伝える必要があると思っていない。

  • どこまで言って良いのか、言わないでおくべきなのかという境界がわからないので、話し過ぎてしまう。

こんなことはよくあります。

私の場合だと、普段は他人に対して、自分の私的な感情は出すべからず、と信じているようなところがあるので、
「人々はお客様」のような感じで、ホテルの受付スタッフになったかのように接してしまいます。

おもてなし+接客 という感じで、「こういう場では、こういう振る舞いをするべき」というテンプレートの仮面を装着し、
「感じがいい人」を装うのです。

無意識でこれが発動しているので、意図はありません。身を守るための処世術として身に着けてきたスキル、擬態です。

一方で、心を自然に開けるような人に出会うと、これがまたとてもレアな経験となるので、一気に親密さを感じ、今まで閉じていた心のガードを一瞬で全部外して すべてを晒すような態度になってしまいます。

ゼロか100か、のような、心を完全に閉ざすか、全開にするのか、
という極端さなのです。(笑)

なので、一度心を開いた相手には、尽くしすぎてしまったり、疲れ切っていることにも気づかずに 自分のエネルギーのすべてを使ってしまったりします。

あるいは、相手に合わせようと必死になったり、とにかく全力になってしまうので、相手とのペースや距離感がちぐはぐになりがちです。

そうかと思うと、ほかのことに集中したい場合や興味が移ってしまった場合には、恐ろしく冷たく、一気に関係を断ち切ってその場からいなくなるというような暴挙に出てしまったり。

恋愛という場での社会的スキルが未熟なので、間を取るということができずに、ジェットコースターのような感情の浮き沈みに自分でも戸惑います。

自分ではその衝動的な行動は止められず、数か月後や数年後になってようやく自分の行動の反省すべきポイントの答えが判明したりすることもあります。(苦笑)

また、過敏性と真面目さがあるので、相手からの言葉を必要以上に重く受け止めすぎてしまって、喧嘩の時などに相手に何かを言われた場合、絶望しすぎたりしてしまいます。
(素直すぎるあまり、冗談が通じないのは恋愛でも。)

本人は、とにかく一生懸命なので、なぜこんなにも恋愛が上手くいかないのか、思うことが相手に伝わらないのか、葛藤します。

そしてよくあるのは、自分が惹かれる相手には同じようにASD傾向があるということ。

似た者同士だから、共感したり、居心地が良かったりするので、不器用どうし、かみ合わなくなったりぶつかったときは大変です。

気が合う時の心地よさは、ほかの他人との関係では体験したことのないものになるので、それがまたトリッキーなのですが・・・。(依存の原因になる)

恋愛関係において、自閉症スペクトラムのある人が考えていることには、以下のようなものがあると紹介されているので参考にしてください。

オーストラリアのNetflixリアリティシリーズ「ラブ・オン・ザ・スペクトラム」では、参加者はデートと人間関係において、次の側面が難しいと感じています。 Autism & Romantic Relationships: What to Expect | Exceptional Individuals より参照。

  • 社会的コミュニケーションスキルに困難さを感じている

  • 定型発達の人々が自分たち発達障害人とデートしたり、関係を持ったりしたくないと思っていると思い込んで、過剰に心配してしまう

  • 会話で間隔が空いてしまう

  • 形式ばりすぎてしまう

  • デートやパートナーに尋ねる質問が行き過ぎているように感じる

  • 自分にはまだ深い関係を築く準備ができていないと感じている

  • 恋愛相手というより誰かと友達になりたいと思ってしまう

  • 物事がうまくいかない、あるいは発作的に突然逃げ出したくなってしまう

  • これまで愛と呼べるように深く愛したパートナーがいなかった

  • 他の人が自分たちに興味を持っていないのではないかと恐れる

  • 今まで恋をしたことがない

  • 兄弟、別の親戚、またはパートナーがいる友人に嫉妬している

  • まだ両親と同居しており、誰かと結婚することを恥ずかしく思っている

  • 親密な愛が何であるかをまだ知らない

  • 関係の一方の人が他方に依存的にしがみついている(共依存のような)関係性になってしまっている

  • 拒絶の恐れが強くある

  • デート中にパニック発作を経験する

  • お互いを愛するような深い関係よりも、そのとき気が向いた相手と会いたいという思いがある

  • デート中にアイコンタクトをしない

  • 過去の異性関係や恋愛についてあまり話したくない

  • デートや人間関係は、ただただ混乱のもとだと思い込んでしまう

失恋したときのダメージと、忘れることができない辛さが強調される。

ASDで、心を開かないままに、恋愛関係になり、愛着障害の逃避タイプの特性を持っている場合は、ドライに関係が終わり、切り替えも はやい場合もあります。

しかし、ASDが一度深く愛情をもつ状態にまでなった場合に、そこから切り替えることや、立ち直るということが極度に難しい状態になることがあります。

もしも自分の意志で離れることを決めた場合は、興味の対象がほかの物ごとや人に移っているので、一ミリの罪悪感も持たないまま、その場を去るという行動が見られても全く不思議ではありません。

問題となるのは、予期せぬ別れや、突然に恋愛が終わることになった場合です。

もともとASDは、予期せぬ事態が起きるとパニックに陥ったり、混乱のあまり感情のコントロールが難しくなります。

パニックのままに相手に心情のすべてをぶつけてしまったり、どうしたらわからずに絶望で何も食べられなくなってしまったりします。

体の感覚に敏感な人も多いので、頭痛や胃痛、めまいや吐き気などのひどい体調不良に襲われて、本当に寝込んでしまったり、うつ状態になって動けなくなってしまったりもします。

ADHDも併せ持っている場合も多いので、怒りが爆発して、通常では考えられないような行動を取ってしまったり、すべてを相手のせいにして(発達障害人は傾向として、ガラスのハートをもっており、自分が攻撃を受けることに対してとても敏感であることが多いです。)自分の身を守ろうとしたりもします。

自分のコントロールを超えた、感情の波に圧倒され、どうすればいいのか途方に暮れることになります。

そして、関係が終わったとしても、待っているのがフラッシュバックによる再体験だったりが起きます。異常な記憶力の良さで、言われたことや送られたメッセージなどをすべて鮮やかに記憶しているのです。

脳の一部の機能がアンバランスなので、その記憶が、突然ぶり返してきたりします。(フラッシュバック)そして、反芻といって、何度も何度もその経験を頭の中で繰り返してしまい、苦しみます。

こうした感情を「切り替える」という機能がとても未熟なため、気持ちを切り替えられずに長い間、苦しむのです。

自分でも、苦しく、忘れたいのに、全く忘れられない。考えることを止められない・・・こんな現象が起きてしまいます。

相手は、感情に任せて、言わなくてもいいレベルのことを、勢いで言ってしまっただけなのかもしれないのです。それでも、それをすべて真面目に受け止めているので、結果的に自分を責めたりします。

また、生きてくる中で自己肯定感が低くなってしまうことの多い発達障害人は、失恋によってさらに生きる自信を失います。

こうして、失恋から立ち直るには、愛着を持っていた場合で、別れが突然であった場合、そして相手から別れを切り出された場合には、回復までにとても長い時間が必要だということになります。

一般的に、失恋の回復にかかる時間は4か月ほどとされていますが、私個人は、2年以上は必要です。

気を付けなければならないのは、回復までの不安定な時期に、異性とデートしたり、関係を築くような行動を試みることです。

この時期に早すぎる行動を取ってしまうと、低くなった自尊心に付け込まれて、自分を都合よく扱うような悪い人のターゲットになってしまったり、素直に相手の言うことを聞きすぎてしまうなど、悪循環に陥ってしまうことになります。

発達障害人の恋愛。失恋は、命がけです。

もちろん、定型発達の人にとっても、失恋は辛いものだと思います。

しかし、切り替えの上手さや、コミュニケーションにおける処理の仕方や問題解決の仕方は、発達障害人はTDの人には 全くかないません。

そして、自分を責め、嫌な経験を反芻し続けるために、トラウマ化します。
PTSDは、発達障害者が抱えやすい問題の一つですが、失恋はこのトリガーになります。

発達障害の人が失恋をしたな場合には、積極的な支援が必要です。

ただ、人間関係に困難さをもち、親密に相談できる人がいない場合もあるので、
そんな時はせめて、睡眠がとれる内服薬を処方してもらうとか、インターネット上でもいいので、気持ちを聴いてもらえるような場所が必要です。

(ただし、セラピストが海外のように充実していないので、変なビジネス、専門性の低いような信用度が怪しいカウンセラーに引っかからないでくださいね)

厚労省がやっている心の耳、などのサイトや、自治体の相談サービスを利用するのも手です。
主治医になんでも相談できる間柄でしたら、勇気をもって話してみて、院内のカウンセラーなどとつなげてもらってもいいかもしれません。

今回も長くなってしまいましたが、発達障害で恋愛が上手くいかなかったり、何らかの問題や悩みを抱えている人が多いと感じていますので、記事を書いてみました。

最後に、恋愛でただ一人の相手とうまくいかなかったとしても、自分と合う相手というのはこの広い世界でゼロという可能性の方がずっと低いです。

つまり、うまくいかなかったとしても、自分の個性を知り、それを好ましく思ってくれる人も必ずいるはずです。

あるいは、人でなくてもいいです。私の場合は、無条件に自分に愛情を示してくれる、猫の存在がかなり救いになってくれています。

くれぐれも、ご自愛ください。

追記:
わたしに直接相談したい、というリクエストを受けて、私とマンツーマンで「交換日記」ができるメンバーシップを開設しました。
・1ヶ月に3回私と交換日記のやり取りができます。
・メンバー限定の掲示板の利用ができます。

人数はお一人様限定で、かつ3月までの3ヶ月間限定となります。先着1名さまだけとさせていただきます。
もしも、心の整理に交換日記を使いたい、という方はご連絡ください。ASD当事者で心理士の自分だからわかることもあるかもしれません。
〈詳細は下のリンクから〉


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Mina Sato IQ130 ASDの心理士/脳外科ナース/Nativecamp日本語講師
本当にありがとうございます!応援してくださる気持ちが本当に嬉しいです。「サポートをいただきました」の通知が、わたしの人生のうちの今日一日という日を幸せにしてくださいました。色々ありますが、あなたの一日も素敵なものになりますように。