2020年8月の💘映画『ようこそ映画音響の世界へ』『ランブル 音楽界を揺るがしたインディアンたち』『赤い闇 スターリンの冷たい大地で』

2020年8月3日放送かわさきFM「岡村洋一のシネマストリート」“マリバールコーナー”で、8月公開の映画『ようこそ映画音響の世界へ』『ランブル 音楽界を揺るがしたインディアンたち』『赤い闇 スターリンの冷たい大地で』を紹介しました。

noteで非公開メモを販売します（注：現在無料です）。後日公開される動画に先駆け。放送との違い探しも楽しんで下さい。

今月は、音、音楽、そして人々の声や叫びに注目（耳？）した 3本。

『ようこそ映画音響の世界へ』

「音」という視点から映画の歴史を振り返る。『キング・コング・』『市民ケーン』『鳥』『ゴッド・ファーザー』『スター・ウォーズ』などの名だたる映画監督から、音響、音楽担当者が音への拘り、音作りの楽しさ、可能性を語っている。名作を解説してくれる。映画館の音響設備についても説明している。仕事愛映画である。

監督ミッジ・コスティンもベテラン音響デザイナー、音響編集者。女性。『アルマゲドン』でゴールデン・リール賞の音響編集賞を受賞。

映画に音が入ったのは 1927 年。まだ 100 年経っていない。その間にものすごいスピードで進化しているけど、これからどうなっていくのか、楽しみ。

いい話、いい演技なのに音楽がウルサイ、セリフが聞こえない、など残念な作品は結構ある。
「セリフなんてなくてもいいくらい」とか言っちゃう映画人もいるけど、独りよがりの音響になっていか。
好きなように作ればいいとも思うが、より深く味わいたい、理解したい、受け止めたいって気持ちもある。
匙加減、好みは人により違うが、映画における音響はとても大事。いろいろを楽しむ。音を「見て」学ぶ映画でした 。

8月 28 日公開。

『ランブル 音楽界を揺るがしたインディアンたち』

5月公開予定がコロナ禍で 8月 7日公開となった。
試写を見たのは 3月 26 日。あまりないことですが見終わってすぐに岡村さんに「ランブルという音楽ドキュメンタリーが素晴らしいので見て下さい〜。」とラインしました。
岡村さんはミュージシャンだし、フォークミュージックをやる人だから、必見！と思った。

この映画は、ロック、フォーク、ブルーズ、ジャズ、ヘヴィメタル、ヒップホップなどに影響を及ぼしたアメリカ先住民インディアン音楽のドキュメタリー。

音楽に詳しい人はみんな知っている事なのかわからないが、私はロックはエルビス・プレスリーが、ブルーズやジャズはアフリカがルーツなのかと思っていた。アメリカ先住民インディアン音楽が源流にあったとは！という驚き。

『禁じられた歌声』という、2012 年に西アフリカ・マリ共和国の北部が複数のイスラム過激派組織に制圧された事件を題材にした劇映画があります。
音楽、たばこ、サッカー、不要な外出などが次々に禁じられ、不条理な懲罰が繰り返される。
歌を歌った女性は鞭で打たれ、事実婚のカップルに対して公開処刑が行われる。

また、タリバンに音楽を禁じられたパキスタンの伝統音楽の音楽家たちが、ジャズに挑戦する様子を追う音楽ドキュメンタリー映画『ソング・オブ・ラホール』。音楽家の地位はもともと低かったが、豊かな音楽芸術があった。

音楽がタブーとなることもあるイスラム社会だけではなく、森達也『放送禁止歌』や、アメリカのラッパーなど、過激な歌詞が問題になったことは知っていたが、インストゥルメンタル『ランブル』が禁じられるとは。それも「自由の国」アメリカで、というのが衝撃だった。

アメリカが先住民にしてきた事というのは今アメリカで大問題になっている「#Blacklivesmatter」黒人差別問題に勝るとも劣らないタブーなのだと思
った。触れたくない過去。だからこそ音楽として生き残ってきたのかもしれない。

音楽は癒し、抗議、自由を求める叫びである。「音楽に政治を持ち込むな」発言とか、アホアホ過ぎて恥ずかしい。

製作総指揮スティービー・サラスは、世界的に著名なギタリスト兼音楽・映画・テレビプロデューサー。岡村さんと一緒だ。

8 月7 日公開。

『赤い闇 スターリンの冷たい大地で』

1933年、ヒトラーに取材した経験を持つ若き英国人記者ガレス・ジョーンズは、世界恐慌のなか、なぜスターリンが統治するソビエト連邦だけが繁栄しているのか、その謎を解くために単身モスクワを訪れた。外国人記者を監視する目をかいくぐり、やがて凍てつくウクライナの地を踏んだジョーンズが目の当たりにしたのは、想像を絶する悪夢のような光景だった……という実話映画。

小説『1984』で名高いジョージ・オーウェルが1945年に発表した『動物農場』はジョーンズの取材がきっかけとなり誕生した。ジャーナリストと小説家の接点秘話も明かされる。

私は「ホロドモール」という言葉、史実も知らなかった。
映画に登場する、スターリン寄りの報道でピューリッツァー賞取ったウォルター・デュランティは受賞を取り消されてない。

主人公ガレス・ジョーンズをジャーナリストとして理想的、英雄的に描きすぎではないか？とちょっと思った。そういう風に疑う姿勢は結構大事ではないか。意地悪な見方かもしれないけど、社会はもっと悪い人や悪意に満ちている。
映画で描かれた時代や地域の特別な歴史ではなく、現在私たちの社会にも繋がっている問題として捉えたい。
マスコミの腐敗、政府権力の肥大、人々の無関心は本当に恐ろしい。

8 月14 日公開。