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【エッセイ】平家の里でひと休み

東京から圏央道を通って東北自動車道へ走らせる。
前日のTVニュースの「10年に一度の大寒波がくるため予定変更も視野に」との警告にややビビりながら、せっかくの休暇を無駄にすまいと予定を強行した。
子供たちはひとりはオーストラリア留学、もう一人は学校のスキー教室で不在。
こんなチャンスはめったにないと夫婦で温泉旅館に一泊しようかということになった。
行先は栃木県の奥日光よりもさらに山奥。湯西川温泉の村落にお邪魔した。
10年前になろうか、奥日光の戦場ヶ原で秋の紅葉を撮ろうと家族で出かけたついでに日帰り温泉に寄り道して帰ろうということで、
偶然、この湯西川温泉の日帰り温泉にお邪魔した。
その時、これも偶然だったのだが、かまくら祭りが開催していた。
河川敷に無数のかまくらが作られており、ろうそくの火が灯されていた。その幻想的な風景に息をのんだことを覚えている。


今回もそれを目的として旅館"揚羽"さんにお邪魔した。じつはここ、湯西川温泉の村落には別名があり、"平家落人の村"とも呼ばれるらしい。
旅館"揚羽"さんは"桓武平氏の流れをくむ大類家の末裔"で、1718年創業の老舗の旅館だった。
歴史の香り漂う門構えから一歩中へ踏み入れると、そこは江戸中期にタイムスリップしたような感覚に襲われる。
そして、墨で書かれた古めかしい和綴じの宿帳が様々なところでぶら下げられ、チークの古い色合いと濃いワインレッドで品のよい和を演出し、フロントには香がたかれていて細かい心配りに思わず笑みがこぼれる。

旅館"揚羽"廊下


そして巨大な天狗の面が目に留まる。
一見するとアトラクション的なチープな宿と勘違いされるがそうではない。むかしながらの気配りが行き届いている素晴らしい宿でした。
今回は一番価格の安い部屋を予約したが、平日の火曜日、水曜日という日程から特別室の予約が空いていたらしく、無料でグレードアップして頂きました。
その部屋は畳の香りに、窓の上部には品の良いすだれがつけられ、そこから雪景色がみえる。まるで公家にでもなった気分である。
また部屋には鶴模様の着物が飾られており、旅館兼美術館のようで歴史好きな方、古民家のような雰囲気を味わいたい方には抜群の宿だ。
また外国人のウケもいいはず。楽天トラベルのランキングでは栃木県でナンバーワンだと後で知って、まぁ、当然かと納得のサービスでした。
大浴場の壁には、平家物語の冒頭部分が筆で書かれたものが飾られており、滅びゆく平家の無念に思いを馳せながらゆっくりと湯を楽しむのは最高に贅沢な時間でした。


日が暮れて宿から5分ほど歩いたところに"平家の里"というところがある。いくつかのわらぶき屋根の古民家が数件立ち並び、小さなかまくらに
ろうそくの火が灯される。身を切り裂くような冷たい風のなか、ほっこりさせる綺麗な空間におもわず頬が緩んだ。
今回旅した平家落人の村こと、湯西川の温泉に旅しました。ゆっくりと湯につかり、おいしい料理を楽しみ、古きよき歴史を楽しみました。
いろいろと観光しまわるには向かない場所かもしれないが、名のある文豪が通っていたように俗世間から離れ、温泉で身体を労わりつつ、
ゆったりと時間を過ごすには絶好の隠れ家かもしれない。


最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

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