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相続登記は自分でできるの?

相続登記を自分でやりたいと思う人が多いでしょう。
自分でできることはやって、司法書士報酬を支払わなくてすむように節約したい。そう考えるのは、全く問題ないです。

しかし、相続登記は自分でできるものなのでしょうか?
司法書士のサイトやYouTubeでも「相続登記を自分でする方法」というものが沢山出回っています。

法務省で公開されている登記申請書を見ると、単なる書式にしか見えず、それ故、「誰でもできそう」ですね・・・。
しかも、法務局も、予約制だけど、無料で本人申請手続の方法を教えてくれる・・・。

相続登記とは、2024年4月1日から義務化された不動産の所有者死亡に伴う名義変更の事のこと(2024年4月1日以前に開始した相続も対象)。相続人は、原則相続したことを知った日から3年以内に相続登記を行なわなければならず、相続登記を行なわない場合は、10万円以下の罰金が科される。

(参考)法務省ホームページ「相続登記の申請義務化特設ページ」
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00590.html




結論

結論を先にお伝えしますと、相続登記を自分ですることはできます。ただし、相当の困難を伴うことを覚悟しましょう。
これが答えです。

つまり、「自分でできないこともないが、お勧めしない」です。

もちろん、後述する複雑ではない不動産で相続の場合は簡単に済むこともあります。

これは、裁判は弁護士を付けなくてもできますか?と問われたら、「できます」と答えるのと同じ類の話と思っていただければ、イメージが湧くかもしれません。

法律は裁判も登記の申請も代理人を付けずに行う事を許容しています。そして、法務局も本音では本人申請ではなく司法書士に依頼して欲しいと思っていますが、本人訴訟と同じく本人申請の道を閉ざすことできないすることはできない為、窓口で登記申請手続の方法を伝え、本人申請の道を公開しています。

本人訴訟は弁護士なしで1人で進めるのは難しいというのは多くの人が納得するところと思います。が、相続登記は単なる書類作成だからと思わず、本人訴訟と行うのと同じようなイメージを持っていただく必要が実はあるということをこの記事でお伝えしたい内容です。

どうしてもという場合、以下のような性格や環境のケースでは、相続登記を自分で行うことに向いていると言えるかもしれません。

  • 時間と労力が有り余っている

  • 事務能力が高く、書類作業が好き

  • 解らない所は役所等に問い合わせることができる積極性がある

  • 相続人が配偶者と子供のみ(何れも意思表示に問題が無い)

  • 対象不動産が少なく、全て既登記物件

  • 所有者が死亡した時の住所が対象不動産に登記されている住所と同じ

  • 抹消するべき抵当権等の担保権が存在しない

  • 固定資産評価証明書の登記地積と評価地積の数値が同じ

以上のような状況ではない限りは、一般的には、司法書士へ依頼することを強くお勧めします。

理由

上記の結論に至る主な理由は、以下のとおりです。

  1. 物件毎、相続のケース毎に考慮するべき要素や論点が異なるので、本やネットの情報を見て作成しても、どうしてもヌケモレ、作成間違いが生じ易い。

  2. 不動産登記規則やその他細かい書式のルールに従わなければならず、それらは司法書士業務に従事する者や法務局の職員の間では常識なものが多数ある。そのような細かいルールをネットや本から短期間で的確な情報を得るのは困難(住所は住民票に「1丁目」とあっても「一丁目」と記載する、減税の場合は該当の条文を明記する、収入印紙は印紙用紙に貼付する(印紙用紙というものを用意する)、割印は印紙用紙まで行うが添付書類には割印しない等々)。

  3. 申請書に必要な添付書類を調査し、全て漏れなく収集したうえ申請書に綺麗にセットしなければならない(戸籍等を還付して欲しい場合は相続関係説明図を作成して添付する)。

  4. めでたく申請ができたとしても、法務局からの補正対応に耐えなえればならない。一文字間違えているだけでも呼び出される。時間と労力が半端なくかかる。

ネットやYouTubeで公開されている情報や、法務局の登記手続案内で教えてくれる内容は、ごく一般的な内容です。個々の物件を考慮していないので、自分の申請に必要な情報が十分であるとは限らないことを肝に銘じなければいけません。

具体的にどういう点が難しいか

遺言も遺贈もなく相続人が配偶者と子供のみで、法務省の申請書サイトを見て登記申請の書式を手に入れ、概ね前半パート(登記の目的~権利者、義務者欄)は書き上げた、としましょう。

しかし、申請書を完成させるにはまだまだハードルがあります。
本人申請で登記申請書を作成する際に「難しい」と思われる代表的なポイントを以下のとおり上げてみました。

具体的な内容はリンクの先を参照ください。
ただし、当然ながら個々のケースを考慮していないためごく一般的な情報に留まりますが、それでも困難な点があることがお分かりいただけると思います。

  1. 不動産の表示の作成

  2. 登録免許税の計算

  3. 戸籍の収集

  4. 抹消する抵当権があるとき


コスパが良いのは

以上のことから、相続登記は司法書士に依頼することをお勧めします。
こう言えるのは「私が司法書士だから」です。

筆者は、毎日登記申請書類を作成し、役所とのやり取りをし、個々の案件に対応しています。
役所から出てくる書類には同じ目的の書類であっても、様々な書式があり、情報の読み取りが大変です。
戸籍課等の公務員であったなら慣れているかもしれないですが、そういう背景でもない限り、司法書士でも、公的書類から必要な情報を読み取るには試験に合格しただけでは難しいです。

まして、登記申請に携わったことのない人がネットや書籍で情報収集して申請書を作り上げ、かつ、その後繰り広げられる法務局とのやり取りに耐えるのは、余程のメンタル強者でない限り苦労し疲弊すると思われます。

更に、最近の司法書士事務所は「登記申請業務支援システム」というものを使用しています。そのシステムのおかげで、登記申請書類はほぼ誤りなく速やかに作成することができます。
だから、いくら司法書士であってもそういったシステムに頼ることなく、自力で登記簿謄本から必要情報を抜き出して申請書に転記するのは相当骨が折れます。

以上の事情のとおり、通常、本人申請はお勧めしないです。

司法書士として毎日勤務していて、我々でも悩まし場面に遭遇することが多いのに、相続登記は素人でも簡単にできるといった情報が流布されていることに大いに違和感を感じています。
こんな困難な点がありますよということを教えてあげることも必要だと考えて本記事を書きました。

検索してみてください。お住いの近くに、きっと良い司法書士が見つかるでしょう。

オンラインで必要情報を入力するシステムによる本人申請支援サービスというのがありますが、それは違法行為・非司行為(司法書士出ない者が司法書士の業務をお金をもらって行うこと)ですので、くれぐれもご注意ください。
登記申請は、法律上、司法書士か弁護士しか行うことはできません。

司法書士報酬の相場

相続登記を司法書士へ依頼した場合の報酬の目安は、以下となっています;

  • 相続登記のみの場合、5万円~10万円。相続人の人数や不動産の数、内容の複雑さによって金額が上下する。

  • 遺産分割協議書の作成、相続関係説明図の作成、住所変更、抵当権の抹消等が追加されると、10万円~15万円。


相続登記補助金

相続登記の費用の一部を補助する自治体もあります。詳しくはこちらのリンクをどうぞ。


お仕事のご依頼はこちら

現在、プロフィールに記載のとおり司法書士法人に勤務しております。個人で受任することも可能な事務所となっておりますので、もしお仕事をお任せいただける場合は、以下のお問い合わせフォームからご連絡ください。お見積りさせていただきます(お見積りは無料)。

なお、料金(司法書士報酬)は、以下のとおりです(消費税込み)。これに不動産の固定資産評価額を元に算出される税金(登録免許税)がかかります。

  • 相続登記単体:5万5千円~/1件。相続人の人数や不動産の数、内容の複雑さによって金額が異なります。この他、戸籍謄本・住民票・固定資産評価証明書の取得の実費、郵送費等がプラスになります。

  • 戸籍収集:2万2千円~/1件

  • 遺産分割協議書の作成:2万2千円~/1件

  • 相続関係説明図の作成:1万1千円~/1件

  • 相続登記パック:9万5千円~/1件~。戸籍収集・遺産分割協議書・相続関係説明図の作成は費用に含まれます。相続人の人数や不動産の数、内容の複雑さによって金額が異なります。この他、戸籍謄本・住民票・固定資産評価証明書の取得の実費、郵送費等がプラスになります。

  • 法定相続一覧図の作成:2万7千5百円~/1件

  • 住所変更:2万2千円/1件~。

  • 抵当権の抹消:3万3千円/1件~。

  • 英文翻訳証明書:5千5百円/1ページ。




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