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oasisが帰ってくる日

2009年3月、幕張メッセ。

人生で初めてロックコンサートに行った。

大歓声の中でステージに現れた、

そのバンドの名前はoasis。


2008年、高校生の頃。

小学校からの付き合いの友達が、アルバム『Stop The Clocks』のCDを貸してくれた。

それが私とoasisの出会いだった。

あっという間に夢中になった。
他のアルバムも聴き、ライブのDVDを憑りつかれたように観た。

その年の秋、ニューアルバム『Dig Out Your Soul』の発売日には、学校帰りに大急ぎで自転車を漕いで、CDショップへ駆けつけた。

2009年、そのoasisが来日すると知った。

なんとかライブを観られないものだろうか。
初めてそんな風に突き動かされて、チケットを手に入れるべく動いた。

ライブやチケット情報へのアクセスは、今ほどスムーズではなかった時代。
深夜にフジテレビのチケット情報を見ながら、繋がらない電話を必死でかけ続けたのを覚えている。


諭吉さんまではいかないが、一葉さんでは足りない。

今から考えたら、ワンマンライブとしては信じられないほどお手頃なチケット代。
けれども当時の自分にとっては、とてつもない贅沢だった。

手が届かなくはない、それがゆえに生々しい。
絶妙な高級感をまとったチケット代を支払ったあとは、海外旅行にでも行くような気分になった。

さぞかしいい眺めの座席なんだろうな―――

なぜかそう信じてやまない世間知らずを待っていたのは、ステージから遥か彼方の後方ブロック、スタンディングゾーンの裾。

屈強なセキュリティ・スタッフが並び立った国境線で、前方のエリアからは遠く隔たれていた。

世の中の厳しさに打ちひしがれつつも、
「憧れのバンドと同じ空間を過ごせる」
そのたしかな未来だけで嬉しかった。


ライブが始まった、その後のことはあんまり覚えていない。

『Fuckin' In The Bushes』が流れ始める。

リアムが、ノエルが、アンディが、ゲムが、クリスがステージに現れる。

『Rock ‘n Roll Star』のイントロが響く。

フロアが歓声で揺れる。

坊主頭になったリアムが歌い始める―――


縦揺れとモッシュの渦に飲み込まれて、背伸びをしても、メンバーの頭はチョコボールくらいにしか見えなかった。

それでも、
「この瞬間を眼球に焼き付けて持って帰るんだ」
という一心は譲らず、ステージとオーロラビジョンに必死に食らいついた。


真冬の夜とは思えない暑さの中で、あっという間にライブは終わった。

喉はカラカラ、全身は汗でずぶ濡れ。
身体の内側と外側、正反対の湿度に挟まれて、すっかりぼろ雑巾のように立ち呆けた。

そんな有様で一気に飲み干した、500mlペットボトルのコカ・コーラの味は、今のところ「人生で一番うまいコーラ」の座を譲っていない。


oasisというスーパーソニックへの暴露。

無防備な10代の私にもたらされた衝撃は、かわいそうなほど致命的だった。

次の日にはバリカンを手に取って、丸坊主にしていた。

これからもoasisを追いかけ続けるんだと、ひとり昂っていた。


そしてその半年後、oasisはあっけなく解散してしまった。


あれからもう、15年が経った。

変わらないものの方が少なくなるくらい、十分すぎる時間が流れた。

oasisは解散した、二度と観られないバンド。
諦めたことすら、もう忘れていた。


その時計の針が、また動く時が来た。
それだけでこの数日間、もう充分すぎるくらいに嬉しい。


待っている間、いいことも悪いことも、いろんなことがあった。
けれど、oasisのおかげで繋がり続けている縁もある。

はじめてoasisのCDを貸してくれた友人とは、2009年のライブにも一緒に行った。

その9年後、2018年。
リアムがソロツアーで来日したときの武道館公演にも、一緒に行った。
ライブのあと、高校生の頃には叶わなかった、ジントニックで乾杯をした。

そして去年から、彼と一緒にバンドをやっている。

今もまだ、あの頃と同じ気持ちでずっとギターを弾き続けられているのは、紛れもなくoasisのおかげだ。

今回の再始動で、きっと新しい世代の人たちにも彼らの音楽が届くだろう。

かつて自分たちが体験したような、わけのわからない衝動で叫びだしたくなる、あの電撃をたくさんの人が浴びてくれたら嬉しい。

最後に、ツアーだけでももちろん最高なんだけれど、新しいアルバムが聴けたらどんなに嬉しいだろうか。

リアム、ノエル、生きる喜びをありがとう。
きっと日本にも来てくれると信じて、楽しみに待ってるぜ。

LIVE FOREVER !!

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まさむぼむ
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