電気代高騰などの突然のコスト増をプロダクトマネジメントとして、何を考えればいい?
電気代、燃料費、材料費などが高騰し、プロダクトのコストが増えています。もしコスト増を価格に反映できなければ、利益は簡単に消えてしまいます。
様々な企業の値上げ
佐川急便、宅配便8%値上げ 運転手の待遇改善狙う
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC24CJT0U3A120C2000000/
ゲーマーのお供「ブラックサンダー」も値上げに。https://game.watch.impress.co.jp/docs/news/1470922.html
家庭電気代、広がる地域差 東電値上げで関電の7割高も
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC259HB0V20C23A1000000/
ハーゲンダッツが最大10%の値上げを発表 実施は2023年4月1日から
https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/2212/09/news163.html
企業の今後1年の値上げに関する動向アンケート(2022年8月)10月~12月に「値上げラッシュ」懸念
https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/p220808.html
コスト増のマネジメント
コスト増をどれくらいマネジメントできているでしょう。いくら価格に反映できているでしょう。ここでは、このコスト増の価格への反映を考えてみましょう。
電気代や材料費などのコスト増を価格に反映することを価格転嫁といいます。また、この転嫁した割合を価格転嫁率といいます。
例
コストが増えて利益がなくなってしまった。
売価1000円 コスト800円 利益200円
↓
売価1000円 コスト1000円 利益0円
もしコストが増えた分だけそのまま価格に転嫁したら、1200円になります。
売価1200円 コスト1000円 利益200円
ところが20%の値上げを顧客は許してくれないかもしれません。
しかし、利益無しではこのままではやっていけません。
価格転嫁に段階を設けて、いくつかパターンを考えるかもしれません。
1200円 100%転嫁 利益200円
1150円 75%転嫁 利益150円
1100円 50%転嫁 利益100円
1050円 25%転嫁 利益50円
1000円 転嫁無し 利益0円
この価格転嫁の割合は、多くの場合、顧客との力関係によって決まります。たとえば相手が値上げを受け入れざるを得ないときは価格転嫁に応じますが、他の製品に簡単に乗り換えることができれば価格転嫁を拒否したり、競合に乗り換えることができます。
顧客との継続的な取引をするために、いざとなったら値上げを受け入れてもらえるように日頃から関係作りをしていく必要があります。
自社のプロダクトは、下記の4つのエリアのどこに該当するでしょう。右上を維持できるようにしましょう。
実際の企業はどのくらい価格転嫁しているの?
帝国データバンクの2022年の1万1,680社へのアンケートでは、約7割の企業が価格転嫁を実施し、価格転嫁率は約4割との回答でした。
100円のコスト増が起きたとき、価格に反映できたのは10社に7社、価格への転嫁も40円で、60円が自社負担となったわけです。多くの企業が価格転嫁できずに苦しんでいることになります。
価格転嫁と低い転嫁率は、利益率の低い業界や、電気代や燃料費のコスト割合が大きい企業では命とりになります。
価格転嫁に強いプロダクトと、弱いプロダクト
そもそも価格転嫁に強いプロダクトと、弱いプロダクトがあります。価格転嫁が容易に可能であれば、電気代や材料費の高騰といった変化にも強いプロダクトと言えます。
たとえばゲームセンターは価格転嫁に非常に弱いサービス業です。1コイン100円といったコイン単位でサービスしており、+10円+20円が非常に困難だからです。
以下は価格転嫁に関するプロダクトの性質の一例です。
価格転嫁に強いプロダクト
売り手が独占している
価格が不確定(たとえば時価が受け入れられている)
顧客は価格に鈍感
提供する内容を変えることで調整できる
価格転嫁に弱いプロダクト
コモディティであり、顧客は簡単に乗り換えられる
価格が固定
顧客は価格に敏感
価格が法律で決まっている
プロダクトマネジメントから考える価格転嫁
プロダクトマネジメントの観点から価格転嫁を考えると、いかに転嫁を早く行い、転嫁率を高くするかが鍵となります。自社の利益に対する影響力は多大なものです。
一週間で価格転嫁ができ、価格転嫁率が75%
→コスト増の影響はあったが、その直撃は1週間であり、また25%の自社負担で済んだ
半年かかって価格転嫁ができ、価格転嫁率が25%
→コスト増の影響は甚大で、半年間は100%の自社負担、価格転嫁後も75%も自社負担が続いた
自社のプロダクトは、下記の4つのエリアのどこに該当するでしょう。コストが増えてから慌てて対応していてはなかなか難しいです。いざとなったらすぐに反応できるようにしていきましょう。
簡単ですが、コスト増における価格転嫁と転嫁率について解説し、転嫁タイミングを早め、高い転嫁率を目指すことを紹介しました。社会の変化につよいプロダクト作りをしていきましょう。
本記事は『プロダクトマネジメント大全 上巻』に加筆修正したうえで、無料アップデート予定です。
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