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僕らはハイパープロダクティビティワーカーの第一世代

要約
リモートワークによってオフィスや働き方の制約が大きく減り、その結果、潤沢な情報処理環境によるハイパープロダクティビティワーカーが誕生しつつあるという話です。

制約のない優れた環境の構築と、儀礼コストの支払いを止めることによって、仕事の質が大きく異なる働き方が可能になってきています。

オフィスの制約、仕事の制約

会社が用意した仕事の空間は、机の幅と椅子を引く120x120cm程度の空間しかありませんでした。

会社から与えられた机を無自覚に使っていますし、仕事に役立てるための本をすぐに手に取れるようにしたくても置き場は机の120x120の空間に収めなければなりません。ミーティングに持ち込むためにPCはモバイルノートPCでなければならず、性能も画面の広さも妥協しています。ネットワークは100Mbpsもでません。

オフィスで働く人たちが最大限のパフォーマンスを発揮できるように環境を整えるオフィスデザインやオフィスファシリティも仕事にしていました。今起きている変化は、その時よりもコックピット化は個人のパフォーマンスへのインパクトが極めて大きいです。


オフィス空間の制約と開放
オフィスの個人の空間にはさまざまな制約がありました。

 ・机の広さ
 ・本の置き場
 ・温度
 ・外音
  などなど

現在、リモートになり、環境に投資した結果は次の通りです。

・仕事の空間は360x240で、120x120の6倍の広さ
・本棚は幅120高さ210が3列。約1000冊がすぐに手に取れる状態。
・PCはデスクトップで12コア24スレッド、メモリ32GB、GeforceRT2060、Dellの4Kディスプレイのデュアル
※一度も性能で悩んだことはない。しかもモバイルノートPCより安い。
・ネットワークは800Mbps。
・椅子は定価10万、中古2万のヘイワース。
※高くて良い椅子が中古で簡単に手に入る
・快適に感じる室温は20~22度。28度の灼熱地獄に我慢する必要がない。

仕事のパフォーマンスを発揮させるために我慢をする必要がありません。これがなによりも最高です。自分でハンデキャップをつけて走る必要がないのは、とにかく気持ちがよいです。

職場でいろいろなことに我慢しながら働いていると、つい環境のせいにしたくなりますが、いまでは全てが自分の責任です。自分がパフォーマンスを発揮するための責任は全て自分にあるのは本当に素晴らしいです。でも、本当は当たり前のことでしょう。

人の能力を活かすことが企業倫理として不可欠となってきています。その点で、10万円の低性能のモバイルPCに我慢させるのは虐待です。

※私が仕事で初めて支給されたPCは7万円のthinkpadで、起動してからHDDのアクセスが落ち着くまで16分必要でした。

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モバイル4コアCPUの値段で購入できるデスクトップ12コアCPU
(ばか高い投資ではないという例です)

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測ってみた回線速度。ちなみにマンションでも1-2Fはホームタイプの回線を引き込むことができる可能性があります。


良い仕事の定義が変わった

貧困な打ち合わせ環境に我慢していたことに気づいた
打ち合わせは特に大きく変わりつつあります。以前は自力だけで勝負していました。頭の中に覚えていることに加えて、数枚の紙の資料や、たまにPCをちらみするような打ち合わせをしていました。

相手の意見にすぐに反応できるような地頭の良さを印象づけるための準備に時間をかけていました。実体はリアルタイムに打ち合わせしているのではなく、記者会見のような劇場型プレゼンをしていただけでした。

相手に失礼にならないように、PCを注視するのは厳禁でした。他にも、会議室に入って、どこに座るかという上座下座など、打ち合わせのための様々な儀礼を行っていました。これらは直接的なパフォーマンスとは関係のない取引コストでした。

良い仕事の定義が変わったのです。

これまでの良い仕事の少なくない部分が「いかに信頼されるか」に費やされてきました。上座下座に配慮できるか、相手の目を見ながら話をできるかといった様々な過去の儀礼は「こちらに十分に関心を抱いているか」「取引コストを支払えるだけの状況にいるか」「信頼できるか」を評価するために役に立ってはいました。


信頼できるかを評価するためのコストが著しく下がっている
今では相手の信頼性を確認する方法が増えています。

たとえば分かりやすいのは結婚指輪です。薬指の指輪は既婚、未婚を一目で見分けるシグナルでした。(SNSへの信頼にもよりますが)今ではSNSを見れば簡単に分かります。使い込まれたSNSはその人の信頼性を表すようになってきています。

良いスーツ、良い革靴、積の座り方、打ち合わせの対応などの方法で評価せずとも、SNSに表示される共通の友人に評判を聞けばよいのです(SNS上に社会関係資本を評価できるネットワーク資産を築いている場合に限る)。

同様に名刺よりも、SNSのほうがその人を的確に表します。お金を払えば立派な名刺は作れますが、SNSでの評価はそうはなりません。ある種の専門家であれば、専門家コミュニティでどの程度信頼されているかで評価できます。これは研究者が論文の引用数で評価されるのとも共通しています。

信頼も計算可能になりつつあります。つまり、信頼してもらうためのコストを減らせられるということです。


貧困な打ち合わせ環境から、潤沢な打ち合わせ環境へ
以前は貧困な打ち合わせ環境でもなんとかがんばってきました。それでも、全てを頭にたたき込むにも限界がありますし、膨大な時間コストが必要になります。相手の心象のために当然だと思い、我慢していましたが、単位時間当たりのパフォーマンス最大化の観点からは浪費でした。

良い仕事とは「いかに信頼されるか」から「パフォーマンスを発揮する」に定義が変わりました。

今では計算資源と記憶資源を活用しながら堂々と打ち合わせする機会が増えていています。ただし自分だけの変化では実現できませんでした。今の環境だからこそ実現できる働き方です。

過去 頭で覚えている僅かなこと+紙の資料+PCに保存された情報
現在 膨大な計算資源と記憶資源

今から見れば過去の働き方は仕事ごっこと思えるくらいに変わりつつあります。扱える情報の幅が大きく広がったことで、意思決定の質もスピードも大きく変わりました。

でも、まだはじまりでしかない予感もあります。

気づいていなかった余分なコストが可視化され、思い込みに気づき、より高いパフォーマンスのための一歩を踏み出しつつあります。そういう2020年代が始まったのだと思うと、子供の頃に思い描いていた21世紀がようやく始まったのだと勇気づけられます。


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2019年までの仕事のイメージと、今構築しつつある仕事のイメージ
(右:高度に電子化されたF35のコックピット)


まとめ

リモートワークをきっかけに、パフォーマンスを発揮するためのコックピット化が果たされつつあります。

個人が最大限にパフォーマンスを発揮するために整えられたコックピット
 職場環境で頻発する仕事の制約が取り除かれる
  机の広さ、本の置き場所、ディスプレイの大きさの有無、自分の体格に合った椅子、仕事のリズムなど

削減が進む儀礼コスト
 相手に信頼されるために行っていた様々なふるまいを止める
  上座や下座
  PCはなるべく見ずに相手の顔を見ながら話す

潤沢な情報処理環境によるハイパープロダクティビティワーカーの例
潤沢な計算資源
 意思決定支援ツール
  情報展開ツール muralなどのオンラインホワイトボード
  slackやdiscordなどの非揮発性テキストコミュニケーションメディア
  メッセンジャーなど必要なコミュニケーションをとるための揮発性の高いコミュニケーション方法

潤沢な外部記憶装置
 scrapboxやNationなど情報をいくらでも放り込めるプラットフォーム
 数千冊あるkindleや書籍へのアクセス
 その他、自社や他社の提供するナレッジデータベースへの無制限のアクセス


過去の環境整備記事

環境を整え始めた初期の事例ですが、環境整備に参考にどうぞ。要望があれば現在の環境も記事にしていこうと思います。


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