タイトルなし
戦争でも起こらないかなぁ なんて思う日が続いている。
危険な思想な気もするが、個人的にいささか平和な理由ではある。
戦争といえど人を殺したいだとか、こんな世界への鬱憤、そういう理由ではない。
先日 過去一番だなと思う1冊に出会った。
それは、これまでの読書体験を覆すようなものだった。
正直なところ今まで「本読んで少しでも知識をつけよう」みたいな
下心を持ちながら本に触れていた。
その本を読むきっかけも「そろそろ何か読まないと」と思っていた時に
「おもしろい」と紹介されていたので「どんなところが?」と手に取ってみたのだ。
読み進めていくうちに、どこが面白いのかを探す旅に出た筈が、
目的を忘れてページをめくり散らかした。
まさかこの本が正解を提示してしまうとは思わなかった。
ロアルド・ダールの「単独飛行」
ロアルド・ダール青年期の自伝だ。
学校を卒業したら社会に出て、遠く素敵な場所に行きたいと願う彼が、
石油会社に入社後 アフリカへ赴任して体験した出来事や、第二次世界大戦が始まってパイロットになったエピソードなどが綴られている。
そこで書かれている、1つ1つの情景や人物、空気感が美しく刺さりに刺さった。
アフリカへ赴任した際に現地のボーイ(召使い)を雇うのだが、
ボーイとの関係みたいなものが綺麗すぎて、涙が出そうになった。
元々、地理や歴史(資料集を見る感覚で)、外国文化が好きな自分にとって
最高の分野が散りばめられた1冊だったのだ。
ワクワクしながら本を読むことは多々あったが、
「この風景好きだわー」みたいな、心が安らかになるというか、じわーっとする
感じは初めてだった。
「俺もこんな風に暮らしたいな」と頭にちらついた。
だけど どんなに願っても、時代が違うので
彼と同じように過ごすことはできないし、
全く同じ景色を見ることはできない。
とても悔しかった。
昔に生まれたかったと思った。
だけど今、戦争が起こったなら
どこか外の国へ出てたくさんの街を見ることができる。
市街地じゃなかったら、野宿したりして自然を堪能できる。
クリスマスになったら敵兵とサッカーするなんて聞いたこともある。
同じではないけど、少し似たような経験ができるなと思った。
しかもタダで。
「無料でそれができるって考えたら、めっちゃ良くないか???」
と思ったけど、
よく考えたら、生き延びた人が書いてる本だったことに気づいてなかった。
著者は生きてるから、これが書けてるわけで死んでたら美しいも何もないのか。
不運にも犠牲になった人の事を考えたら、戦争なんてして良いわけない。
なんて言ってはみるものの、
心の奥ではそこまで納得していない様子である。
ってか、
そもそも「すげぇ」みたいに嘆息することって意味あるのかなと問われたら、
何にも答えられない気がしてきた。
ただただ美しいものに触れること自体にはあんまり意味がないなって思ったら、
すごく空虚で悲しい。
ま、意味とかないけど、心の素養としては必要なのかもしれない。
にゃーん