建築は竣工してからがスタート / ダイロクキッチンを改修して運営することになった経緯
去年2月から配信している建築ラジオ「FMアーキチャット」の収録で、今回は大学の同期の荒武氏にゲスト出演いただきました!
学部時代は一緒にコンペに勤しみ、大学院時代には一緒に空き家改修プロジェクトを立ち上げ、2棟のリノベーションを共に実施。卒業してからはNPO法人ローカルデザインネットワークとして活動を共にしてきました。
1時間の収録でしたが、荒武氏、なかむラテさんとのやりとりの中でいいキーワードがでてきたので、少しまとめてみようと思います!
改修しても地元で使われない、苦い思い出
大学院に入って東伊豆ではじめた空き家改修は、まちの使われていない空き家を提供してもらう話からはじまりました。資金は学内の助成金プログラムに応募して採択してもらい捻出した50万円。後輩を引き連れ、夏休みに地元の子供と一緒に施工をしました。
まちの中で若者が活動していると、(役場の方の多大なサポートのお力も受け)ケーブルテレビや新聞などの取材を受けたりと、まちのためになるものを作れたと自分たちでも思ってました。が、結果としてこの建物はその後、使われることがありませんでした。。。
学校の課題では成り立ちそうなストーリーをつくれても、リアルの世界ではそう簡単にはいかない。建築の設計の力だけではうまく立ち行かない壁にぶつかりました。
"まち"と一緒につくりあげたダイロクキッチン
課題は残るものの、役場の方には僕たちの取り組みを買っていただき、「次年度は、物件と予算を出すから一緒に改修しよう」との声をかけていただきました。そうしてはじまったのが、旧第六分団器具置き場の改修。のちに「ダイロクキッチン」として運用する物件の改修でした。
前回の反省を踏まえ、2軒目の改修では、事前にまちのニーズを拾うこと、まちのプレイヤーとの連携を深めこと、運用をまちのひとが主体になって回せるようなプロセスをつくることに注力しました。具体的には
・月に一回の地元空き家対策の協議会に出席
→ニーズ調査と設計プロセスの共有。運用方法のディスカッション。
・まちのプレイヤーとの関係づくり
→地場産材の提供をお願いにあたり自ら山にいくことも。
町民大会に出場させてもらうなどプロジェクト以外の交流をつくる
施工ワークショップにより想いとプロセスの共有
・運用方法をイメージできるオープニングイベントの開催
→①食堂②市場③酒場④劇場といった4パターンでの利用モデルを
オープニングイベントとして実施。運用イメージを共有
・その様子を地元回覧板で東伊豆町全世帯に発信
→SNSではリーチしない地元のひと向けローカルメディアとして月一配信
こんなことをしていました。
こうして完成したダイロクキッチン。いよいよオープニング!
先にも記述した4つの運用パターンを、2日間のイベントの中で、運用方法のロールモデルとして開催しました。
竣工してからがスタート
ダイロクキッチンが竣工し、僕たちは大学院を修了しました。社会人になるにあたり、このダイロクキッチンを運用するためのNPO法人ローカルデザインネットワークを設立することにしました。
経緯としては、地元側に急に運用をお願いすることはできず、このままだと1軒目と同様、また空き家に戻ってしまう。それならば、自分たちで運用をしよう!ということでNPOを設立し、まちから物件を賃貸し、自分たちで運用することにしました。その過程の中で、同期の荒武氏が「地域おこし協力隊」として東伊豆に移住し、このダイロクキッチンの運用を現地で担い、他のメンバーは遠隔+現地訪問するかたちで運用がはじまりました。
いま振り返ると、改修するまでの1年間よりも、竣工してからこの建物に向き合うことが増えたように思います。
「どうしたら使ってもらえるのか?」
「地元のひとは何を求めているのか?」
「東京のひとがわざわざ来ているれるためにはどうしたらいいのか?」
「まちの魅力ってなんだろう?」
こんなことを考える日々でした。
動画を収録している中で自然とでてきた「建築は竣工してからがスタート」という言葉が "まさに" なキーワードだったように思いました。
「建築学生は場所の力を信じすぎている」
建築を学んだ6年間でぼくたちは「場所の力を信じすぎていた」のかもしれないです。大学の課題では場所性を引き出し、それを生かした建築の形を考えていました。
しかし、現実は建築の力だけではなく、その後にその場所を運用していく「人の力」が必ず必要だと実感しました。
そのふたつが合間って、"いい建築"ができるのだ、と。
地方にある「余白」
話が一巡して、なぜ東伊豆で活動をはじめたのか、という話題になりました。ここは当時も実感したことでしたが、地方にもいいフィールドがある!そう感じていました。
ひとも情報も多くあつまる東京だけでなく、地方でも、むしろ地方だからできることも多くありました。地元内での情報スピードは都会よりも早く人伝いに広まりますし、関係者がみんな近しいので、すぐにキーマンにたどり着ける。知らない土地で入り込んでいくことはかなり勇気もいることですが、外からの視点が入ることで、まちの中にある、これまで知られてこなかった魅力が発見できる。まちに対してもそんな相乗効果もあると思っています。
ダイロクキッチンは運営者が見つからないという課題から、結果として自分たちで運営することになりました。しかし、それがきっかけで、今も東伊豆と継続的に関わらせてもらうことで、都市と地方のまちの付き合い方を横断的に考えることができている気がします。
▼この記事の内容が収録されたYouTubeはこちらで公開予定!
ぜひご覧ください!
https://www.youtube.com/channel/UC46WB4-e8iRhmbdkwOE9olQ
▼今回取材に協力してくれた荒武氏の新しい取り組みはこちらから!
https://www.so-an.co.jp/