天体望遠鏡の付属品どうする? 〜鏡筒だけ生えてきた時〜
例えば, 初心者の方が星見のイベントのガラクタ市で, 天文オタクおじさんたちから「これいいよ」と勧められて「7cm屈折鏡筒本体のみ, 付属品なし」みたいなのをタダ同然で入手したとして, その後それを使うのに必要な付属品はどうする?という, ありがちなシーンを想定して考えてみました.
天体望遠鏡は天下の回りモノ
「天体望遠鏡が欲しい」となったとき, 入手方法はいろいろある. 信頼できる専門店のアドバイスを受けて自分の使い方にあったものを選び, 新品で購入するのが正当なのだろうけど, 実は中古市場(ヤフオクとかメルカリとか)がマニア向きも初心者向きも豊富で, そっちで探すと安く良いものが入手できることがある. そういうのは品質保証にはあまり期待できないからその辺は自己責任. もしも知人などから品物の状態の分かったものを譲り受けるチャンスがあれば, それがお得で安心かもしれない. (某天文同好会のガラクタ市など)
ところで, 子供たちが星に興味をもち, 「望遠鏡欲しい」と言い出した時, どういう物を購入するかというのは結構だいじで, 安易に安物(ホームセンターの隅っこにある数千円の品とか)を手にすると子の秘められた可能性に蓋をする結果にもなり得るので, あまりおすすめじゃない. (良くない品物は使って喜びを見いだせず興ざめさせるので「ホビー・キラー」と呼ばれる)
そうならないように, 子供向けに最安の価格帯でちゃんとしたものを購入するための情報は, ここら辺が参考になる↓
さて, 話を戻して中古市場には, マニアの高齢化による終活や「機材整理」の出品の他に, 子供向けの良いものが案外多く出回っていることに気づいたりする. やっぱりちょっと使って飽きてしまったとか, 子供が大きくなって不要になり, 売却される物も多いのだろう. 上の記事で紹介されているような機種は, フルセットの中古品が見つかれば良い買い物になるかもしれない. さらに, 付属品が欠けたものが, その故に激安(あるいはタダ)で入手できることもある. 某天文同好会のガラクタ市なんかもそのクチで, どこかの子供のために購入され, それが売却され, 変わり者のマニアが買って一部のパーツを取って残りの部分(鏡筒本体とか!)をまた処分するようなケース. マニアにとっての不要品が, これから望遠鏡が欲しい初心者にとっては掘出し物になったりする. こうして, 「付属品のない鏡筒本体」の掘出し物が発生することがある.
さて, どうする付属品?
やっと本題. 鏡筒本体(対物レンズ, 筒, フォーカス調整機構と接眼部)が激安またはタダで, しかし「付属品なし」で降ってきた(あるいは生えてきた)とき, それを望遠鏡として使うためには何が必要なのか? 最低限はこれだ!
アイピース(接眼レンズ)
三脚・架台
なお, ファインダーはあるに越したことはないが, 小学生が手軽に使える口径5〜7cmくらいの望遠鏡であれば, 無くてもなんとかなる. 例えば, 鏡筒のどこか2点(前の方と後ろの方)に照準になるものを貼り付けて, それを使って狙いをつけるなどの工夫をして解決できるから.
ということで, アイピースと三脚・架台について, 2024年現在, 安くて使えるモノたちはこんなところだろうと思われるものをピックアップしてみる. (私が実際に使ってみたことのあるものだけ) たまたま入手できた鏡筒本体としては, 口径50〜70mm, 焦点距離600〜900mmの屈折望遠鏡を想定している.
アイピース(接眼レンズ)
SVBONYというメーカーがAmazon.co.jpなどで安価で比較的良質の天体望遠鏡関係のパーツを販売していて, そのアイピースの中でも激安でわりとよく見えると評価されているのがこれ↓
このシリーズの23mm(低倍率用)と10mm(中倍率用)がおすすめ. 4mmはあまりおすすめではない. (倍率が高すぎて手動の経緯台では辛くなるのと, 品質のばらつきがあって見え味がイマイチのものがあるかも)
ところで, 望遠鏡の倍率は鏡筒の対物レンズの焦点距離(f=◯◯mmと書いてあるのがこれ. D=〇〇mmは口径.)をアイピースの焦点距離(上の23mmとか10mmとかいうやつ)で割った値になる. だからアイピースを変えることで倍率を変えられて, アイピースの焦点距離が長いほど低倍率になる.
ファインダーなしで目標物を視野に入れるためには, 23mmの低倍率用が必須. 例えば鏡筒の焦点距離が700mmなら30倍, 900mmなら39倍になる. 10mmアイピースだと各々70倍, 90倍となって惑星や二重星の観察ができて, かつ微動装置無しで使える限界というところ.
天頂ミラー
天頂のあたりに望遠鏡を向ける時, 楽に横から覗けるようにするための天頂ミラーも必需品. 同様にSVBONYのもので安価なタイプがこれ↓
三脚または経緯台
望遠鏡を支え, 見たい方向に向けて安定させるための三脚・架台が, 実はコストのかかる部分なのだ. 量販店で購入できる安価なカメラ用三脚でも, 40倍くらいの倍率(土星の輪が何とか見える)までならある程度は使える. 中古だと丈夫な中型三脚(重いカメラや望遠レンズが支えられるくらいのもの)も数千円で入手できる. だが, 100倍になるとさすがに微動ハンドルなしでは無理で, ちゃんとした微動つき経緯台があれば, そちらの方が格段に快適なのは事実.
悩みどころである. 経緯台を新品購入しようとすると, 安価なものでも2万円. 初心者向け天体望遠鏡の新品フルセットを購入するのと変わらない値段になる. タダ同然で鏡筒を入手できてアイピース等を安価にそろえたのが何だったの??ということに…
「新品フルセット」の例↓↓↓
それはそれとして, いくつかのやり方がありそう.
中古の丈夫なカメラ三脚で済ませる → 3000〜5000円コース
中古の経緯台がどこからか出てくるのを待つ → ??円+待ち時間
微動付きの経緯台を買う → 2万円ちょいコース
カメラ三脚に後付けで経緯台をつける → 1番+2万円コース
1番は微動付きの経緯台は考えず, 丈夫なカメラ三脚で済ませる案. これでも月や大きな星雲, 星団なら楽しめそう. 「中古の丈夫な三脚」の例として, Velbon(ベルボン)というメーカーのSuper Ace(スーパーエース)という中型アルミ三脚は既に販売終了しているが, 当時メーカー希望小売価格5万円近かったものが, 現在中古市場で3000円程度で出回っている. 軽いカーボン三脚が主流となった現在では, 重いアルミ三脚は人気が下がり, 中古価格が下がっているのかもしれない.
実は, 夜露に当たる夜の天体観察用としては, カーボンよりもアルミの方が良い. 材質によって結露のしかたが違い, アルミはカーボンよりずっと結露が少ないのである.
そうしている間に, どこからか中古の経緯台が生えてくるかもしれない(笑). そのチャンスを捕まえることができたら… というのが2番.
一方, 惑星などを高倍率でじっくり見たいと思うなら, 思い切って3番の最初から微動つき経緯台の購入, または4番のようにカメラ三脚に後付けする経緯台を追加購入ということになる.
Sky Watcher(スカイウォッチャー) AZ-PRONT(三脚つき)
科学館などにあるビクセン製ポルタ経緯台などと少し形式が違って, 鏡筒を上に載せるタイプ. 上に向けると鏡筒の重みが後側にかかって, 重いと動いてしまうので, 使える鏡筒は軽いものに限られる. しかし軽量でとても使いやすい架台で, 三脚つきでこの値段は魅力である.
SVBONY SV225経緯台(丈夫なカメラ三脚に載せるタイプ)
かなり丈夫で, 6kgくらいの鏡筒まで安定して支えられる. なので将来的に15cmまでの反射望遠鏡を入手して, それで手軽に星を見たいという方には良さそう. 側面の支柱は傾きを垂直と45度に変えられて, 天体用には45度で取り付けるのが良い. 「中型」クラスのカメラ用三脚の「雲台」を外した状態で取り付けて使う.
ちなみに, 下の例で使っている三脚は上述のVelbon Super Ace. これと似たようなサイズのアルミ三脚なら大丈夫そう. (脚が直径25mm以上の丸いパイプのものが良い)
この他, Amazon.co.jpで「経緯台」で検索すると, ビクセンのポルタとそっくりなものが1.2万円程度で出てくるが, ブランド不明で複数の業者から同じものが出品されており, どれもレビューが見当たらないので, 使いやすいものか, 本物のポルタと比べて良いか悪いかは不明. こちらもカメラ用三脚に取り付けるようになっているらしいので, 使い方は上のSV225と似ていると思われる.
まとめ
「鏡筒本体のみ, 付属品なし」のとても安価な天体望遠鏡が手に入ったというとき, 取りあえず「観る」ために必要なアイピース等(アイピース2本, 天頂ミラー1個)は合計6千円程度でそろうが, 三脚・架台は悩みどころになりそう, という結論.
既に丈夫なカメラ用三脚があれば, 取りあえずそれで使ってみることができる. 中古で3000円程度で入手できそう.
経緯台を購入するとなると, 安価で使いやすいSkyWatcher AZ-PRONTO(三脚つき)で 2万円ちょっと. または, 将来もっと大きな鏡筒を購入する可能性を想定してSV225(三脚別途)を購入するとか..…!?
いや, まずはヤフオクやメルカリで「経緯台」で検索? チャンスを見て中古の経緯台が入手できれば…
【了】
※ ここでは最小限の付属品ということで, 赤道儀やら自動経緯台やらには言及していません.
※ 鏡筒の取り付け部分の仕様としては, カメラ三脚用の1/4インチネジやVixen互換のダブテイルバー(アリガタ)が付いていることを想定しています. 初心者向けの鏡筒ではそうでないものもあるかも.