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土星の環は2度消える(3度かも?)

「2025年には土星の輪が消えるところが見られる」と巷ではずいぶん前から星空案内のネタとかになっています.

「見えない」てぇところを「見る」って!? 何だか禅問答みたいだとか
環のない土星だって? カラのないカタツムリみたいなもんか? とか
(お好みでないイキモノを想像してしまった方ごめんなさい笑)
いろいろツッコミどころもありますが… まぁまぁ.

地球から見た土星の環の傾きは土星の公転による軌道上の位置によって変わる
地球の公転で地球の位置が変わるのも少し影響する

土星の環(自転軸もね)公転面から約27度傾いていて, そのおかげで地球から見事な輪っかが見えているわけですが, その環の面が地球から見て真横になる時, とても薄い環は見えなくなります. 上の図で土星が右側のとき, 環の上(北)の面が見え, 左側に来ると下(南)の面, その中間では環の真横から見る向きになり, 環はとても薄いので見えないということになります.

冒頭の写真のように, 2020年ごろには環が大きく開いてよく見えていましたが, だんだん薄くなってきています. そして, 2025年3月には見えなくなる, と以前調べてみて分かってました.

ところが, ある日, 子たちと観覧したプラネタリウムのお姉さんは, 11月ごろにもう一度環が「消える」と… おっしゃる!?

なんだと? ということで, どんなもんか, プラネタリウムソフトStellarium(ステラリウム)によるシミュレーションで土星の環の傾きの変化をよく見てみました.

上の図では, 土星の公転とともに地球の公転も描いてあります. 土星の公転で, 地球から見た土星の環の傾きが長い周期で大きく変わりますが, その間に地球も公転して1年周期で行ったり来たりしているので, これも地球から見た土星の環の向きに少し影響しています. だから, 土星の輪の傾きは30年周期の大きな動きに, 1年周期の小さな揺らぎが重なったものになるというわけです.

Stellariumで時間を早く進めて動画にしてみると, この大きなゆっくりした変化と小さな揺らぎがわかります. この動画は2024年~2026年半ばの間の土星の見え方です. 2年ちょいなので環の傾きは大きくは変わりませんが, だんだん薄くなって見えなくなり, 環の南側が見えるようになるという変化の間に, 小さくユラユラして大きさも変化しています. このユラユラと大きさの変化は地球の公転で見る向きと地球↔土星の距離が少し変化するためです.

「11月にも見えなくなる」というのは, この小さなユラユラが効いて, 3月に一旦地球が土星の環の北側から「真横」を経て南側に移りますが, また少し戻って11月に再度「ほぼ真横」の位置に来るということです.

国立天文台暦計算室の記事「土星の環の消失: 国立天文台暦計算室」によると, 実は5月にも環が見えにくくなるときがあるとのことです. (Stellariumのシミュレーションでは見えなくはなってませんが)

「消える」3つの瞬間を切り取ってみました.

2025年 土星の輪が「消える」とき(Stellariumによるシミュレーション)
5/7は環が見えてますが太陽の光が環の真横から当たっていて見えにくいらしい.

それぞれの状況をまとめると…

  • 3月24日: 地球から見て環が真横に見える. この頃は土星が太陽に近くて実際には見られない. 太陽は環の少し上(北)側から照らすので, 環の細い影が本体に投影されている.

  • 5月7日: 太陽の光が土星の環の真横からあたるので, 環が見えにくくなるとのこと. 本体に投影される環の影が無い.

  • 11月25日ごろ: 地球から見て環がほぼ真横に見える. この頃は土星は太陽と反対側にあって, 夜中によく見える. 大きさも少し大きく見える. 太陽の光は環の下(南)側から照らしていて, 環の影がわりとハッキリ本体に投影される.

3月24日〜5月7日の間は, 地球からは環の南側が見えて, 太陽の光は環の北側を照らすので, 地球から見える環の南面は暗く, 環は見えにくいらしい.


参考: 土星の環の消失: 国立天文台暦計算室

【了】

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