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DIY: シャトルスコープ再生(ED化だ!)

「再生」というのは別にこわれたわけじゃなく, つまり, 昔のアクロマート短焦点望遠鏡の越えられない限界が色収差による不快感なわけで, 低倍率では楽しめるのにちょっと倍率を挙げて惑星など見ようものなら幻滅とか妥協とか諦めとかに襲われるのだが, でも鏡筒の造りはとてもよくできてるし, この個性だから手放す気にもならず, オブジェ化の道をたどるのかぁ…という葛藤の傍らで, 同じくらいの焦点距離のEDレンズがあれば…という野望が芽生え, ついに短焦点アクロの宿命を超越して再び生きる道を開くのだ! ということになったという次第.

つまり「アクロマート」の対物レンズを「EDレンズ」に交換したってことです.

シャトルスコープ80sの対物レンズは口径80mm/焦点距離480mm. 今売られている80mmのED対物レンズ(お手頃な2枚玉ED)は短くてもF7の焦点距離560mmのようだ. 焦点位置が8cmも後ろに行くと, 天頂鏡を使っても粗動のドローチューブ(ストローク100mm)を8割がた引き出さなければならず, フォーカス調整の余裕が無くなるし, 後ろが伸びてバランスが悪くなる.

口径も焦点距離もシャトルスコープに近いものを探してみると, オークションなどで見かけるBORGの対物レンズに口径76または77mmで焦点距離500mmというのがある. 対物レンズのセルのあたりどうなっているのか分からないが, まあなんとかなるでしょうということで, 少し古そうだが手頃な価格で出品されていたBORG 76EDの対物レンズを入手してみた.

そして, とりあえずバラしてみて改造計画を.…

シャトルスコープ 80sとBORG 76EDの対物レンズのセルをバラバラにして…
悪だくみまっ最中…的な?(笑)

結果的に, 何とか簡単にキレイにレンズを交換する方法を見つけた!

  • シャトルスコープの対物レンズを抜いたセルに, 76EDのセルが前後逆にしてちょうど入る.

  • 76EDのセルの後ろの方は細くなっていて, これが前に来ると口径ロスが起こるので細い所をちょん切って使う!

  • 76EDのセルの外径に, シャトルスコープの対物レンズの押さえリングの内径がちょうどはまる. はめてアロンアルファで固定すると, このネジを使って76EDのセルをシャトルスコープのセルにはめることができる!

ということで, BORG 76EDのセルに対物レンズを裏返して入れて, これをシャトルスコープのセルにねじ込みで取り付ける, という方法で, 76EDのレンズをシャトルスコープに移植することができた!

BORG 76EDの対物レンズをセルをひっくり返してシャトルスコープの対物セルに入れたところ.
フードつけると, 誰も改造してあることに気づかないかも(笑)

改造後のスペックは

  • 有効径: 76mm

  • 焦点距離: 500mm (F6.6)

  • レンズ形式: ED 2枚玉

となった.

焦点距離が500mmになり2cm伸びたのと, 対物レンズの位置が少し後ろに行ったのでフォーカス位置が4cmくらい後ろになった. 以前は天頂プリズム(天頂鏡よりフォーカス位置が後ろになる)を使っても粗動ドローチューブを一番縮めた辺りでフォーカスしていて, アイピースによってはフォーカスが出ないことがあったが, これでフォーカス調整はしやすくなった.

遠方にフォーカスしたときの位置. 以前より少し後ろになった.

実際にのぞいてみると, なるほど色収差が少ないということは快適だ. 160倍くらいの高倍率にしても遠くの木も星もシャープだし, フォーカス調整もピタッときまる.

個性的(かわいい)なだけじゃなく, 「使える」望遠鏡になったかも♪♫
いや, 眺めてニンマリして使って楽しめる「使える骨董品」的な?

【完】

[用語解説]
アクロマート (Achromatic, 色消し): レンズを通るとプリズムと同じように光が波長による屈折率の違いで色分散して, 色によって焦点の位置がズレてしまい, このため, 像の明暗の境界などに色にじみが目立ってしまいます(色収差). そこで, 材質の違う凸と凹の2枚のレンズを重ねて, 赤と青の2色に対して焦点位置が一致するように調整したものがアクロマートレンズです. ところが, アクロマートレンズでも焦点距離が短いものは屈折が大きく, 色収差の修正がそれほど良くありません. F値(焦点距離/口径)がF10より長ければアクロマートで十分かも. だから昔の天体望遠鏡は長いものが主流です. 今売られている短焦点のアクロマート屈折望遠鏡は, 色収差には少し妥協した安価なお手軽系ラインアップです.
EDレンズ(extra-low dispersion lens, 異常低分散レンズ): 異常低分散とは, 普通のガラスよりも色による屈折率の違いが小さいということです. つまり, 形状的にはアクロマートと同じ2枚玉ですが, 凸レンズに色分散の小さなEDガラスを使うことで色収差がとても少ないレンズになります. 1960年代から実用化され, 今どきのEDレンズはいろいろなガラス材があって, 分散が普通に小さいもの(FPL51相当), もっと小さいもの(FPL53相当, SDとか言う), 温度による変化の具合や柔らかさなどの違いもあり, 値段の幅もかなり開きがあります. 高いものは高いなりの理由があるということです.


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