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球状星団たち

「星雲」や「星団」たちの多くは, 写真に撮ったり, イマドキの「電視観望」をやると「おおっ」と言わせる姿を現してくれるが, それなり(15cmとか?)の望遠鏡でも眼で見てもらうと「見えてます?」とか「うーん, 見えない」とか, 良くて「あー, このぼぅっとしたやつ?」というイマイチな反応になってしまいがち. そういう中で, いくつかの明るい「球状星団」たちは, 眼視で「わっ」と言わせてくれる(星空ガイドにとっては)頼もしい方々だったりする. (毎度おせわになってます笑).

15cmくらいの望遠鏡でも, モワッとした綿の塊みたいなモノに小さな星たちが散りばめられたツブツブ感が楽しめる. 春から夏の季節の星空観察会などでは球状星団をリクエストしてみるのもおすすめかも.

弊社星空案内ネタ帳から, 明るくて見やすい球状星団をリストアップしておきます.

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\begin{array}{lccl}
\hline
名前・星座  & 明るさ & 距離 & 特徴\\
 & (等級) & (万光年) & \\
\hline
M3(うしかい座) & 6.3 & 3.4 & 視直径18'\\
ω星団(ケンタウルス座) & 5.3 & 1.6 & 視直径約1°, 銀河系最大, 南の低空\\
M13(ヘルクレス座) & 5.8 & 2.2 & 視直径20'\\
M4(さそり座) & 5.4 & 0.6 & 視直径26',一番近い\\
M5(へび座) & 5.7 & 2.4 & 視直径23', ローズ星団\\
M22(いて座) & 5.2 & 1.0 & 視直径32', 天の川の中, 大きい!\\
M2(みずがめ座) & 6.6 & 3.9 & 視直径16' \\
M15(ペガスス座) & 6.3 & 3.3 & 視直径18' \\
\hline
\end{array}
$$

こうして並べてみると, 明るい球状星団で5〜6等級, 肉眼では見えにくいが双眼鏡で見えるくらい, 距離は2〜3万光年くらいということが分かる. 銀河系の直径は10万光年あって, 地球はその中心から2〜3万光年離れた所にある. 球状星団たちは銀河の中心を取り巻くように球状に分布しているから, だいたいそんな距離感になるのだろう. 見かけの大きさ(視直径)は15〜30'くらいで月の半分から月くらい. なので50〜100倍でかなりの見応えになる. 破格のω星団(日本の多くの地域では南の空低くにちょこっと出てくるだけで見えるチャンスは少ないが)は月の2倍もあって視野からはみ出すくらい.

さて, 天体写真を撮る立場からいうと, 小粒な星たちがびっしりと集まった彼らは天候条件(シーイング)やら技術の甘さやらを如実に露呈させてしまう手強い相手でもある. シーイングが悪かったり, ちょっとしたフォーカスの甘さ, ガイド(追尾)の誤差で星像がボテボテになったり細長く伸びたりして, たちまち見苦しい写真になってしまうから…

この春〜夏は, 今まで惑星用に使っていた15cmカセグレンに0.6xレデューサを組み合わせると結構明るくてフラットなイメージが撮れることが分かって(焦点距離1100mm, F7.2), それで球状星団たちを撮ってみた.

ヘルクレス座球状星団M13: GS150CC+0.6xレデューサ (1100mm, F7.2), IR/UVカットフィルタ, ASI533MC, ASICapで撮影 (gain 300), 47x180s (141min) (dark 9, bias 20, flat 20), AstroPixelProcessorでスタック, Gimpで調整.
みずがめ座球状星団M2: GS150CC+0.6xレデューサ (1100mm, F7.2), IR/UVカットフィルタ, ASI533MC, ASICapで撮影 (gain 300), 37x120s (74min) (dark 14, bias 10, flat 20), AstroPixelProcessorでスタック, RawTherapeeで調整.
ペガスス座球状星団M15: GS150CC+0.6xレデューサ (1100mm, F7.2), IR/UVカットフィルタ, ASI533MC, ASICapで撮影 (gain 300), 39x120s (78min) (dark 14, bias 10, flat 20), AstroPixelProcessorでスタック, RawTherapeeで調整.

さて, ここに集まった球状星団たちは比較的明るく大きく見やすい方々. 個性があるかと言えば, 星の集まり具合も似ているし, 中心核の具合も明るくはっきりしていて, いわば優等生タイプ(?). 優等生の憂鬱というのか(?), 個性が目立たないのかも知れない. 写真を並べてどれが何?とクイズにしたら, 周りの目立つ星の並び方でしか見分けられなかったりする.

そのうち個性的な球状星団を並べてみるというのもやってみましょう.

それにしても, 球状星団というのは各種天体の中でも惹きつける魅力をもつ面々と言えるんじゃなかろうか? 例えば…

  • マリモみたいに丸っこくて可愛い

  • 少し倍率を上げるとツブツブ感がたまらない

  • 写真をうまく撮ろうと思うとなかなかうまく行かないから何度もトライしてハマる

  • 実は, 地球が銀河系のどの辺にあるかを教えてくれた賢人たち(球状星団が銀河中心の周りに球状に分布しているってのが他の銀河を見て分かったから, 見る方向による球状星団の数密度の違いから, 銀河中心からどのくらい離れているかが推定できるそうです)

  • 古い世代の星たちが集まっているという何だかミステリアスな仙人みたいな存在感

などなど, その魅力を挙げると切りがない.

どうやって形成されたのか? 彼らは宇宙のどんな姿を見てきたのか? これからどんな道をたどるのか? 疑問はつきない.

球状星団たちを眺めて, いっしょにザワザワしませんか? (笑)

球状星団撮影中〜

【了】


ところで… 冒頭の球状星団が4つ並んだ写真, それぞれ何だか分かります? 分かった方はコメントで. そのうち正解を明かします(笑) 今回の3つよりは個性的なのもありますね.

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