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星空案内人という資格への道
サラリーマンを辞めた
サラリーマンとしていちばん忙しいはずの40代半ばで仕事を辞めたのが2011年. あれから既に干支がひとまわり以上. いろんなことがあった.
徒然なるままに書き留めておく.
東日本大震災・大津波に伴う原子力事故が起こった年に原子力のリスク研究という専門職を離れたのは原子力が嫌になったからだろうと勘ぐる人は多いのかも知れないが, それは違う.
自分の専門分野は軽水炉のシビアアクシデントで東電福島第一(いちえふ)の事故はまさに専門. だが, 事故から半年の間すべての経験を事故対策のサポートに注ぎ, 自分のすべきことは終わったという感覚と, 以前から予定していたように僧侶の資格に必要な修行に行ける家庭環境になった(子が留学に旅立ってとりあえず手を離れた)のが理由だ. 職場の上司から若干の引き止めはあったが, 実際私の得意な仕事は一応やりきって同僚に引き継いだので, 特に問題なく見送られたと思う.
さて, その後の「いろんなこと」はこんな感じ.
永平寺に修行に行った.
洞松寺に修行に行った.
地元の原子力発電所の安全に関係する仕事への再就職を探したが, 誰も雇ってくれなかった.
出雲大社の門前で観光案内のアルバイト(出雲市の臨時職員).
この頃, GoEnという出雲大社の英語ガイドのボランティアサークルにも入っていた.
韓国の大学で研究教授というアルバイト. 博士とりたての若い人ならポスドクというのだろうけど, それと似た少しばかり年取った人のためのポスト. 5年近く韓国のポハン(祖先と崇敬するスサノオノミコトの縁の地らしい)で暮らした. 春と夏にお寺の仕事が忙しい季節には帰国してお坊さんをした.
2018年に韓国の仕事(友人のプロジェクトを手伝っていた)が終わり, 帰国して「ひとり会社」を作った.
それから現在まで, 会社の仕事で生計を立てながら実家の寺を手伝っている. 会社の主な仕事は, 以前の職場の同僚や, 同業者からの委託による, 水蒸気爆発やら溶融炉心やらという, ちょっと物騒な響きもする案件の技術計算をしている. 業界の方であればJASMINEという計算コードの名を聞かれたことがあるかもしれない.
上記の, いろんなことを経験している過程で, 僧侶はさておき, 関心をもった資格がいくつかあった. はじめは地元での原子力の安全に関わる仕事で再就職を考えていたので, 修行から帰った2013年に「第1種放射線取扱主任者」をとった. 在職中に講座を受けたり放射線を扱う実験の実務をやったのが役立った.
外国人向けの観光ガイドもやったので, そっち系の仕事も考えてTOEICを受けた. ちなみに, あの世にいる妻からのアドバイスで2009年に「ハングル能力検定(準2級)」も取っている.
英語ガイドサークルのGoEnにいたとき「通訳案内士」という資格についても知ったが, 取れそうと思った地域限定版の資格については受検のチャンスがなかった. それで資格ブームは一旦ここまで.
普通なら家庭的にも社会的にも責任(しがらみ?)の大きな40代後半にこんなに風来坊をさせてもらったのは, とても贅沢なことかも知れない. 給料の良い安定した職を離れて, 子を大学に行かせてやれるだろうかという不安も無くは無かったが, こんな頼りない父を尻目に子は奨学金で学費の半分を賄ってアメリカに留学してきた. 天命に従おうとするとき, あとの心配事は神様がみてくださるってのは, 実感した(涙).
星に導かれる
ちなみに, 私が最初に星に惹かれたきっかけは, 小さい頃の家族旅行で鳥取砂丘のプラネタリウムを見た後, 出口にあった大きなアンドロメダ銀河のパネルである. 学生時代まで天文のサークルなどで活動していたが, その後疎遠になった.
2018年に帰国してから, 薬師如来の霊場巡りのお手伝いをしているときに, バスで隣に坐った近隣の和尚さんが, 私が星と再会する案内人となった. 彼は某天文同好会の事務局をしているという. その同好会は, 自分が高校生のときに社会人といっしょに活動していたところだった.
ちょうど同じ時期に, 2nd streetというリサイクルショップで, Vixen New Polaris A80M (Newだけど30年前当時のってこと)という天体望遠鏡を見つけた. 天文少年+αだった30年前なら, こういう口径8cmの赤道儀つき望遠鏡はナカナカの品. それが1万円ちょいである. 一晩だけ躊躇して購入した.
こんな感じで某天文同好会に入れてもらい, 30年ぶりに望遠鏡を所有して星を眺め天体写真を撮った. 同好の士たちの話を聞いたり機材を見せてもらったり, SNSに掲げられる写真を見たりして, イマドキの趣味の天文に使われるハイテク機器に, 当分の間圧倒されていた.
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2020年にとある国際会議で韓国に行って帰ってきた頃, 巷では新型コロナウィルス感染症が流行り始めていた. 私は帰国直後に高熱が出て, あわや自分が第1号の帰国感染者になるのか!?と動揺したら, A型インフルエンザと診断されてほっと安心. (インフルエンザに罹って安心したのはこれが最初で最後かも)
この頃まで会社の仕事では関東方面や韓国への出張が多く, 学会にもちょくちょく顔をだして営業していたので経費の中で旅費が大きかったのだが, コロナ禍となって出張による会議がなくなり, 経費に余裕ができた. それから, 50代も半ばに入って疲れ眼とか集中力の低下とか, 根を詰めたプログラミング作業が負担に感じられるようになった. こんな状況の中, 目と頭を酷使する業態を減らして, 経験とワザが活かせる仕事を増やす必要性を感じ, 当初から事業項目に入れていた「一般向け科学解説」のひとつの形として「出前星空ガイド」が浮上! この時の会計状況なら, 経費を星の機材の調達に充てられるし.
50代になると躊躇というものが無くなるらしい. 今やらないともうできないという切迫感が出てくるから.
早速, 星空ガイドを仕事にするにあたって役に立つ資格みたいなものはあるのか?と探して見つかったのが, 「星空案内人」である. 山形大学の公開天文台「やまがた天文台」のガイドツアーのガイド養成・認定のしくみとして2003年にスタートし, 全国へ展開された民間の資格認定制度で, 現在は「特定非営利活動法人 星のソムリエ機構」が運営主体となっている. その下で, 全国各地のいろいろな団体が資格認定機関となっている.
「星空案内人」になろう!
資格認定は2段階になっていて, まずテキスト「星空案内人になろう!」(柴田晋平ほか, 技術評論社, 2007)を使った資格認定講座を受講してレポートを提出すると「準案内人」の認定が受けられる. さらにステップアップ講座でレポートや実技テストにパスして「正案内人」の認定が受けられるようになっている. 最終の実技テストは, 実際に観客のいる星空観察会で星空案内をする.
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まず指定のテキストを購入して読んでみると, この資格は知識の量や技能をもって認定される〇〇検定のようなものとはちょっと違うらしいことに気づく. お客さんといっしょに星空を楽しむ時間を創り出すのには, もちろん基本的な天文の知識は必要だが, それと共に, コミュニケーション力や星を楽しむ文化を愛する心, みたいなものが重視されているようだ. 星を見せて人々を喜ばせるための要件を資格という形に制度化したのは, なかなかの偉業と思う.
近くで認定機関を探すと, 鳥取県(星取県), 岡山のライフパーク倉敷科学センターなどがある. 大学が開いているものはそこの学生さんが対象だったり, 地方自治体の場合はそこに在住の方が対象だったりする. 残念ながら地元の県内には認定団体がなかった. そこで, 星取県さんにアタック!(笑)
2021年度には, 県内在住の方が対象とのことで(定員が埋まったのかな?)断られた. 2022年度に再度問合せたところ, 有料なら受講させてもらえるとのこと(県民は無料). それで受講させてもらった. この年は子が地元転職で同居していて, 話をしたら自分も受講したいということになり, 親子で楽しく受講させていただいた.
2022年11月に講座が終わり, 準案内人の資格認定をいただいた. その後, 2023年度にステップアップ講座を受講し, 追加の実技テストやレポートで単位を取得したが, 星空案内の実技テストは天気が晴れず流れてしまった. それから待つこと半年余り, 2024年6月1日に再度実技テストのチャンスをいただけて, この度ついに「正案内人」の認定をいただけました. m(. .)m
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アラカンの抱負
かくして, 還暦を前にして「星空案内人」の資格認定をいただいたことですし, これから視力と体力の続く限り, 生で星を見る感動を人々と共有したいと思っています.
老眼にはなりましたが, オートフォーカスが近くに合わなくなっただけで無限遠の星へのフォーカスは問題なし! メジャーな天体なら星図とファインダでササッと手動で導入できます. この辺はけっこう職人ワザかも(笑).
今では全自動の電視望遠鏡みたいなモノでスマホでピコピコやるだけでそれなりの天体写真が撮れたりしますが, 眼で望遠鏡をのぞいて生で見える星の光も, 代えがたい感動を呼びます. あまり関心も無さそうな人に「星見てみる?」と声をかけて, アイピースをのぞいてもらったとき, 驚きと感動の声が上がると, 密かにニヤリとします(笑). こういうのが私の「芸風」かも.
お近くの方, お気軽にお問合せください.
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【了】
PS. 星取県の関係者の皆様には大変おせわになりました. 最近の地方振興の界隈では「関係人口」という言葉をよく見ますが, 私も幼少期の星との邂逅から何かしらつながっているようにも思います. 星取県さんの関係人口の+1(子も入れると+2かな?)として今後も何かお役に立てればと思います. m(. .)m
鳥取県の星空関係のWebサイト:
生活環境部 環境立県推進課さん星空環境・保全
CATCH the STAR 星取県 (イベント, コラボ商品, 体験メニューなど) (観光交流局 観光戦略課さん)